後編




「ん、、。?」


気付いたら。知らない場所に居た。


「、、ここは。」



そこには沢山のホタルが居た。


綺麗な、世界だった。



まるで昔話に出て来そうな世界だった。



「ここが、黄泉の世界。」



『サア、、。


ホントウニ、セカイニ。


"アイ"ガアルトイウナラバ。



シンジツノアイヲ。


モチカエルガ、ヨイ。』



何処からか響いて来る女の人の声がした。


それが頭から来るのを理解したその瞬間。


「コッチダヨ?」


「ココヨ!」


「ワタシヨ。」


沢山の違う女の人の声が、周りで響いた。



この中に、彼女が居る、、。?


「どこだ、、」



「ワタシ。」


「アタシ。」


「ミツケテ。」



見た目は、少し違う。


煜きも、全部違う。



「どれだ、、」


分からない、、。



「本当に居るのか、?。」


頭に響く女の人の声『イルゾ。


ドコカニ、イル。』



彼女を。


「もし。


間違えたら、??」


頭に響く女の人の声『マチガエルワケガナカロウニ、



マア、モシ。


カリニ、アヤマッタバアイ。



オマエノイノチヲ、イタダク。』


「そうか。。


じゃあ。もし、本当に。


真実の愛、を見付けられたら?」


頭に響く女の人の声『ココカラダシテヤル』


「本当に?


ここから出られるんだな?」


頭に響く女の人の声『アァ。


ウソハツカナイ。』


「よしっ!」


目を瞑れ。


「コチラヘ」


耳を傾けろ。


「ワタシダヨ」



ひとつの声だけを聞くんだ。


「アハハハ」



思い出せ。!


「チガウヨ」


あの子の声を。!


「セイカイハ、イズコヘ」


顔を。!


「コチラヘ」


表情を。!


「アッチヨ」



「ココニイルヨ」



差し出した手に触れた感触。


まるで、あの時みたいに、、



「、彼女だ。」



頭に響く女の人の声『ホウ、。


ホントニ、ソレデイインダナ、。?』


「あぁ。


惚れた女を。



間違える訳が無い。」


頭に響く女の人の声『フン、


オモシロイ。



サア、スガタヲカエルガイイ!!』



そこに居たのは、彼女だった。



「久しぶり、」


声よりも早く。


俺の身体には、彼女の温もりがあった。


彼女「逢いたかった、。」


「ごめんな。


遅くなって、」


彼女「ずっと。


待ってたんだから、」


「ただいま。」


彼女「お帰りなさい。」



沢山の生命を代償に"ナニカ"を得ようとするならば。


替わりに。それは、大きな何かを生み出すのだろう。。



儀式というものはそういうものだ。


そう、自分の中でなんとなく。


分かっていた。


その大きな何か。


が、『黄泉の国』だった。



俺は頑固だった。


意地っ張りで、人の意見なんて一切聞かなかった。



それが。俺だった。



母さんは、そんな俺でも付いて来てくれた。



あの日。


たった一人の息子(アイツ)と喧嘩した。



よくある事だった。


けど、喧嘩はエスカレートして行った。



止めようが無かった。



別に追い出したかった訳じゃなかった。


つい、カッとなってしまったんだ。



母さんは、アイツが出て行ってしばらくて。


居なくなってしまった。



最初は、すぐ帰って来るもんだと思った。



だが。いくら待てど。


一向に、帰って来る気配が無かった。



俺は、探した。


「母さん?」



バカな男だ。


「母さん!!」



俺は、居なくなってから。


「母さん。」



失ってから初めて。


「母さん?!!」



母さんの大切さを知った。



ウツケを通り越して。


大馬鹿野郎、だ。



俺は時間を忘れるくらいに。


ひたすら、調べ物をした。



何か情報が無いか。


手懸りは、無いか、、



すると。度々行方不明になっている事件を知り。


必死になって、探した。



聞き込みをして。


「あの、、」


変人がられ。



「あの人よ、、」


俺を見る目すらも変わって行った。


「奥さんに逃げられたらしいわよ、」



もしかしたら。


何かの事件に、巻き込まれたのかも知れない。



そんな考えが頭の中を過り。


俺は周りの目なんかどうでも良かった。



「すいません。」


誰も、何も教えてはくれなかった。


今まで誰とも上手く付き合って来なかったんだ。



自分が辛い時にだけ。



"助けて下さい"



なんて、虫が良すぎる。



最悪の場合。


この世に、居ないのかもしれない、、



『神隠し』



そう、捉え。


探す事すら諦めた人々。



分からなくも無かった。


結局は他人事。



自分の番になるまで。


自分がその時になるまで、、



こんな辛い思いは、しないのだから。



いつか帰って来る様に。!



きっと帰って来る。!



どうか、無事で居てくれ、、!



そうやって。


ひたすら願っていた。



『サァ、?


ドノコダロウ??』


若い男の声が、頭に響く。



「どの子、、?」


若い男の声『オマエノ、"ツガイ"ハ、ドレダ?』


「つがい、、。


母さんの事。か、?



やっぱり。!


母さんが。ここに、。


居る、のか!??」


若い男の声『アァ。


オマエトイッショニ。


マタ、サンニンデクラセルヨウニ。


ッテ、ナァ。



"イノリ"トヒキカエニ。


ジブンノ"イノチ"ヲカケテ。ナ、



「馬鹿野郎、、」


俺は、自分の脚を叩いた。


若い男の声『ヒトノイノリヲ、


バカヤロウ。


ヨバワリスルトハ、、ネエ。?』


「、、違う。


俺に。


俺自身に、言ってやったんだ。」


握った拳に、爪が食い込む。



『フフフフ、、


オモシロイジャナイカ。


サア!


エラベ。』


「確実に、。


この中に居るんだ。な?」


この場所が何処であれ。


今話してる相手が誰様でも、良かった。



『モチロンダトモ。


ナガネンツレソッタ、ナカ。ダロウ、?』


「ぁあ。」


母さんが居るなら。


例え地獄でも良かった。



「コッチ」


ずっと会いたかった。


「ワタシヨ?」


ずっと謝りたかった。


「ハヤク、ミツケテ?」


ずっと探してたんだ。


「ホラ、」


母さん、、!



まるでその声は。惑わすかの様に、


俺の近くを飛びながら、語り掛けて来た。



真っ暗な闇。


見えないのか。目が開いていないのか。


そのくらいの暗さだった。


ポチャン、


ポチャン、、。



水の落ちる音。



私は、音のする方へと。


ゆっくりと歩いた。



ポチャン、。


ポチャン、、



しばらくすると目が慣れた。



暗がりの中に。


ナニカが居た。



「誰だ、、。」


『ダレダ。?


ケッケッケッケ。』


「何者なんだ、」



その返答は、耳の直ぐ近くから返って来た。


『ナニモノ、デモナイヨ。?


オマエサンハ、ダレナンダイ??』


その声はおぞましく。


私の身体が震え出した。



彼女は、元々身体が強くは無かった。



医者に掛かるにも、莫大な金が掛かった。



もう少し、若い時に沢山働いて居れば良かったと。


後になってから、過去の自分を責めた。



私が出来たのは、"維持する事"だけだった。


「あなた、、?」


寝たきりの彼女は今日も変わらずに。


病院のベッドで、横たわって居た。


「あぁ。ここに居るよっ、?


何か。欲しい物。は、あるか?」


細々しい身体。


彼女は、ものを食べられないんだ。


寝たきりの彼女「そうねぇえ。。


また。花火が、見たいわ。」


機械から伝う管。


痛いだろうに、、


「花火か、。」



行きたいと願う彼女を。


私は、連れては行かなかった。



"働かなくては、生きていけなかったからだ"



本当は、ずっと側に居てやりたかった。



いつ終わるか分からない時間を。



止まってしまうかもしれない心臓に。



寄り添って、やりたかった。



寝たきりの彼女「あなたと。花火を見に、。」


「、、そうだな。」



殆どを、病院のベッドで寝て過ごす。



痛みを訴え。涙を流し。


それでも、生きなければいけない。



"生きたい"と、願う。



「どうして、、。


どうしてだっ!



どうしてなんだよ、、!」



死ぬ間際まで。


私は、手術を受けさせてやる事すら。


出来なかった。



金があれば。


金さえ、あれば。



彼女を助けられたかもしれない、。



自分を追い詰める中で。


ある時。


こんな考えが生まれた。



本当に。


そうだろうか、、?



時が経つに連れて。


自分の考えに。疑いを持ち始めた。



手術をすれば。


彼女は苦しまなかったのか、、?



手術をすれば。


彼女は死ななかったのか、、?



「いや。違う。!



この事実は。



避けられなかった。」



ならば。



『結果を変えるしかない。』



結果を変える事なら。


私にも、出来るかも知れない。



彼女の死と向き合う事をせず。


私は沢山の文献を読み漁った。



そして。


ホタルが黄泉を開く"鍵"だということを知った。



「いいぞぉ。!!」


結果を変える。


と、言う事は。



彼女を、こっちの世界に連れ戻す事だった。



「黄泉の扉を開くには、、


ホタルの煜きが、必要。」 



その為にはホタルが必要だった。


それも、一匹や二匹ではない。


沢山のホタルが、必要だった。



何の運命か。


神が私に味方したのか、。



この街は、ホタルが有名だった。


何という奇跡なのだろうか、



私は、彼女が居れば良かった。


後はどうでも良かった。



その為に、手段は選ばなかった。



都合の良い言葉を並べるだけ並べ。


自ら契約をさせる事。


そうして、次々とホタルに変えて行った。



愛する人を。


大切な人を助けられれば。



それで良かった。



おぞましい声『ヨクキタヨゥ、』


身体が震え。


喉が乾いた。



ナニカが。私の身体に触った。


おぞましい声『ナニヲ、サガシテイル。



オマエハ、カワリニ。 


ナニヲ。


クレルンダイ、??』


「私の。命を、。」


『ケッケッケッケ、。


ソレハイイネェ!。


ジャア、オマエサンハ、


ナニヲ、。


モチカエル。』


「愛する。人を。



大切な人を。」



ナニカの息が。


直ぐ近くにあった。


『ソンナニ、スクイタイノカイ。』


「はい。」


私は、その為に来たんだ。


『イノチニハ、カギリガアル。


ソレヲカエルコトハ。デキナインダヨォ?』


「はぃ。」


分かっている。


もう、あの世界に。


彼女の肉体は無い。


『ソレデモ、イインダネェ?。』



見た目が変わろうと。


声が変わろうと。


「はい。」


私は。彼女であれば、良かった。



若い男の声『ドウシタ。?


ワカラナイノカ?』


「いや。


見付からん、だけだ。」



黄泉という場所は、こういう所なのか、?



そもそもここは、本当に。黄泉の国なのか。



もしかしたら、これは。


俺の妄想なのかも知れない。



この世界はとても、綺麗過ぎる。


とても心地が良い。



「ワタシ、」


「コッチ。」


「ソッチジャア、ナイ。」


「ワタシヨ。」


「アタシ、」



沢山の声がする中。


その中で。一匹だけ。


話さないのが居た。


「、、母さん。?」


震える手で。


ゆっくりと、伸ばす。



指先にへとホタルが移ると。


弱々しく、光を放った。



「、、ゴメンナサイ。」


そのホタルを優しく包み。


抱き締める様に胸へと近付ける。



若い男の声『ソレデ、イイノカ?』


「あぁ。


俺は、、。



母さんじゃなきゃ。


駄目なんだ、」 


ホタルは姿を変えた。


そこには、俺が会いたかった人が居た。


母さん「あなた、。」


身体が。じーんっとした。


じわじわと、生暖かい寒気の様な嬉しさが。


身体を覆い尽くした。


若い男の声『イヤァ、ア。


オモシロイモノガミレタヨー!。



コノセカイニハ。


メッタニ、ヒトナンテコナイカラサァア?


ネエネェ?


キミタチノセカイジャア、。


ソレヲ、"アイッ"テイウンダヨネェ?』



何だか急に恥ずかしくなった。


母さん「あなたは、?」


離れない様に。


離さない様に。


俺は、母さんの手を強く握った。



若い男の声『ンー、、。


"カミサマ"?ナノカナア、?』


「ここは。


黄泉の国、、なのか?」


若い男の声『モー。


フタリシテ、ソックリー。


クリソツー。』


何だか今までのとは別の奴に思えた。



若い男の声『、ムズカシイネエー。


アノヨ。デハナイカナァ?


デモ、スクナクトモ。


キミタチノセカイジャア、ナイヨ。


ダカラ"ヨミ"トイウニュアンスハ、


マチガッテハナイ。カナ、?』


母さん「そうなんですね。」


母さんの握った手に。力が入る。



若い男の声『サテ、。


キミノネガイハカナッタガー。ァ?


オモシロイモノヲミセテモラッタシ。

 


ダカラ、ナーニィーカッ。


ホカノ、ネガーイッモッ。



カナエテシンゼヨウ。?』


母さん「ここに。


連れて来てくれた人は、


どうなるんですか??」


若い男の声『ソノヒトハ、


ココニハイナイカナラァ。



モットフカーイ。クラーイ。


バショニイルヨ。』


「そうなのか。」


若い男の声『タダ、


ナンラカノ"ダイショウ"ハ、ハラウダロウネ。


ソレナリノ。ムクイヲウケルヨ。』


母さん「じゃあ。もう、


戻れないって事。なのっ、?」


若い男の声『ソレハソウサ。


キミタチダッテ。"シメサナケレバ"、


カエレナカッタヨ。?』


急に俺は怖くなった。


母さん「じゃぁ、、。」


若い男の声『ゥンゥン!』



彼女にもう一度。


あの、世界を。


彼女の。最後の。


願いくらいは、、



おぞましい声『ソウカイ。


ジャア。!』


腕を力強く掴まれると。


その場所に、激しい痛みが走った。



「うわぁああああ!!」


『ケーッケッケッケ。!


コレデケイヤクハセイリツシタ。



オマエサンハ、モウ。モドレナイ。



ココデ、ズットクラスンダ。


ケッケッケッケ、』


「彼女は。」


おぞましい声『メノマエニ、イルヨ。』


彼女「あなた、。


何でこんな事を、。」


そこには、懐かしい声がした。


彼女「どうして、、。」


震える様な声で、彼女は話す。


「惚れた女には、


命を。掛けるもんなんだ。



そのチャンスを。


貰ったに過ぎないんだよ、」


彼女の身体が私に触れる。



おぞましい声『ケッケッケッケェ!


オモシロイコトヲ、ヌカスジャナイカ。



ダガ。モウ、ジカンダヨ。』



目の前に灯りが見え。


ようやくその時、彼女の顔が見えた。


彼女「あなた、、!」


彼女は吸い寄せられるかの様にして。


光の方へと、引き寄せられてゆく。


彼女「んぅっ、!!」


彼女はそれに抗う様に。


私に手を伸ばしていた。


「、、愛していたよ。」


彼女「あなたぁ!!!」



私に。


彼女の手を取る資格は無い。


「、、今までのぶんも。


幸せになるんだ。」


彼女「私は、っ!」


彼女が何かを言い掛けた時。


突如。眩い光が現れた。


おぞましい声『ウギャァアアアア!!!』


耳を塞ぎたくなる様な大きな悲鳴。


目の前には、ひとがたのシルエットが見えた。



「さぁ、!


早く手を伸ばせっ!!」


そこには、あの男が居た。


「、、どうして。」


若い男の声『ハヤクシナイト、


アンマリ、モタナイカモ。マモ。』


男「早く手を。伸ばすんだ!」


おぞましい声『マァアアア!!テェエエエエ!!!』


低く。恐ろしい声がこだます。


女の人「さぁああ!!」


おぞましい声『ニゲルナァアアア!!


オイテユケェエエー!!!』



手を取るか迷った。


自分がした事を。


代償を。



自分で。きちんと償わなければいけないと。


そう、覚悟していた。



後悔していた。


伸ばされた彼女の手を握れなかった事。



彼女に、沢山のしてあげたかった事があった。



彼女の温もりを。匂いを。


笑顔を。仕草を。。



トン、、。



誰かに。


背中を押された。



私は吸い込まれる様にして。


光の方へと、向かった。



身体を掴む男の手。


優しく支える女の人の手。



身体には。


優しい、光を感じた。



振り返った深い闇の中には。


そこには、幾つかの手があり。


私に手を振っていた。



「イケー!」


「イッテコーイ!!」


「マタナー!」



おぞましい声『コラァアアアア!!


ナニヲヤッテルー!!!』


若い男の声『ホンジャー。


シッツレー。


マタ。


レンラクシマッスー。』



そうして、掴んだ手の先には。


元の世界があった。



彼女「、、あなた。?」


顔に落ちる雫。



それは。待ち望んだ光景だった。



母さん「じゃぁ、、。」


若い男の声『ゥンゥン!』


母さん「あの人に。もう一度。



チャンスを、、」


若い男の声『、、ェ。


ソレデ。イイノ?』


「まったく。


お節介過ぎる、、


けど。母さん、らしいな。」


俺は、こういう所に。


引かれたんだった。



母さん「だって。私達もこうやって。


チャンスを貰ったのだから。」


若い男の声『キミハ、、"タマシイ"ガ、


キレイナンダネ。』


かと思えば。この得体の知れないナニカと。


こうやって、平然と会話する肝も据わっている。


母さん「可能。かしら、?」


若い男の声『ウーン、


マア、ナントカ。ナルカモ、ダケド。


スコーシ。


チカラヲカシテモラウコトニ、ナルカモ。』


母さん「良い、?」


母さんは、俺の顔を覗き込んだ。


「あぁ。


母さんが、そうしたいなら。」


『キマリダネ、、。』



頭に響く女の人の声『フン、ツマラン。』


「約束通り。


皆を返してくれ。」


頭に響く女の人の声『ナンダッテ、?』


「約束しただろう。


"ココカラダシテヤル"って言ったじゃないか。」


頭に響く女の人の声『ソレハ、オマエタチダケダ。』


「なんだ。


嘘付くのか??」


賭けだった。


少しでも俺に出来る事はしておきたかった。


親父に、また。説教されるのは嫌だからな。



頭に響く女の人の声『ンヌヌヌヌヌァアアア!!


コザカシイ!コレダカラニンゲンハ!!』


「ふふふ。」


彼女は笑った。



その笑顔は、懐かしかった。


今すぐにでも、彼女を抱き締めたかった。


でも、握っていた手を離さない事が。


俺には精一杯だった。



頭に響く女の人の声『ヤクソクハ、ヤクソクダ。


ダガ。


モウ、ソチラデハイキラレナイモノモイル。』


「どういう事だ」


頭に響く女の人の声『ジュミョウ。ダ、』


「、、。」


彼女を見れば、分かった。



年数が経った分。


彼女は同じく成長していたんだ。


頭に響く女の人の声『ソレニ、


ココガイイトイウモノモ。イル』


「、、分かった。」


頭に響く女の人の声『サア、サレ。』 



目を開くと神社だった。


「眩しい、、」


が。


そこには、親父の姿は無かった。



他にも、沢山の人が居た。



「親父、、。」



「ここは、?」


「、、帰らないと。」


「何してたんだっけ。」


皆は項垂れる様に、膝を着いていた。



彼女「私も。


一度、帰るよ。」


「うん、」


彼女「ありがとう。」


また離れてしまう様な気がしたが。


彼女の温もりは、確かにそこにあった。



彼女「また。直ぐに会おう、?」


「うん。」


その言葉で、どうにか名残惜しさを拭いきれた。



皆どうやら向こうでの記憶は無いらしい。


頭がハッキリし始めると。


次々と帰って行った。



俺は皆が居なくなるまでそこに居た。



親父と母さんを待った。



それが正しかったのかも知れない。


しかし、あの言葉が浮かんだ。



『サア、サレ。』 



俺は、家へと向かった。



「、、ただいま。」


恐る恐る玄関の扉に手を掛ける。



ガラガラガラガラ、


『アハハハ!』



俺は、駆け上がった。


「母さん、?」


そこには、親父と母さんが居た。


親父「帰って来れたか。」


「おぉ。」


親父の顔には、気持ち悪いくらいの。


優しい。満面の笑みがあった。


母さん「、おっきくなったわね、、?」


「母さん、、」


抱き締められたその場所には、懐かしい匂いがした。


「お帰り。」


母さん「お帰りなさい、、」



あの男の人は。どうなったんだ、?


久しぶりの母さんの手作りの夕飯を食べながら。


家族で仲良く、談話する。


母さん「あの人なら、」



あの男の人「良かったよ、。


また、会えて。」


彼女「駄目でしょう、?


皆に。迷惑を掛けちゃ、、」


あの男の人「どうしても。


君に。会いたかったんだ、、」


彼女「人はね、


いずれ。"死んじゃうの"



それは仕方ない事なのよっ、


でも。


また、時間をくれて。



『ありがとう、、』



今度は、花火。


一緒に見に行きましょうね、?」


あの男の人「あぁ。


勿論だとも。」



俺達は、この件の事を黙っていた。


皆記憶が無いんだ。


だから尚更。


それが、良い。


って事になった。



親父は神隠しから皆を救った事になってて。


皆との溝が埋まった。



俺はというと。



彼女「ねえ、?どう、、。?」


「、可愛い。」


彼女とデートをしていた。

 


あの時。去り際に。


こんな話をした。



彼女「今日は、何月何日?」


「えっと、、確か。。」


彼女「、、良かった。


何年前に行けなかったお祭り。



今回は一緒に行けそうね、?」



こうして、俺は、彼女と再び逢うことが出来た。



『たーまやーぁあ!!』



ホタルに、こんなお話があった事は。


こんな出来事があったことは。


ここだけの秘密だ。



ホタルの様に。


俺達は、綺麗に。


煜く事は出来ない。



けれど。



長い年月を掛けて。


愛しい人を見付ける事は出来る。



そうなった時。


愛する人と、大切な時間を過ごしている時。



俺達は煜いて、見えるのかもしれない。


























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ホタルに願いを、 影神 @kagegami

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