第3話 毒も効かない聖女

 先輩が内部から腕を伸ばし、スライムを貫通したかと思うとそのまま引きちぎっている。そして傷が大きくなったところで、一気に手刀の形にして両断した。


「そ、そんなことしたら毒が……」

「はい、いきますよお。癒やしの女神なんとやら、洞にたちこめし息を焦がす邪なるものを払え、聖なる風よ吹け! テラ・ストーム!!」


 先輩が叫ぶなり、さっきと同じ水色の光が、風の轟音とともに洞窟内を駆け巡った。小柄なシャーロットは飛ばされそうになってとっさに身を伏せ、奥の方からも悲鳴が聞こえてくる。


〝きたきたー!! 派手な魔法!〟

〝シャルたんにサポートいれといて、結局自分で倒しちゃういつものやつ〟

〝痺れるねえ~〟


「いえーい! 毒がなんぼのもんじゃーい!!」


 先輩が拳を天に突き上げる。そして犬が水滴を払うように、ぶるぶるっと身震いして、スライムの残骸をはじきとばした。


「さすが聖女様、スライムの毒など寄せ付けないのですね」

「シャーロット様、もっと褒めてくれてもいいんですよ? あ、コメントと投げ銭もありがとう。質問にも答えるから、どしどし書き込んでね!」


 コメント欄は質問で溢れ、後に歓声や投げ銭が飛び交う。先輩がその対応をしているうちに、一時間の配信は終わった。


「…………なにこれ?」


 僕は結局最後まで見たのだが、詳しいことはなにも分からなかった。どうして、先輩があんな格好をして洞窟の中にいるのか。あのシャーロットという少女や、リアルなモンスターはどこから出てきたのか。


 頭の中をとりあえずすっきりさせるために、僕は風呂を入れる準備をし始めた。





※今回のお話は楽しんでいただけましたでしょうか?

「シャルたん可愛い」

「なんで人間なのに毒効かないの?」

「もはやモンスターがかわいそなレベル」

など、思うところが少しでもあれば★やフォローで応援いただけると幸いです。

作者はとてもそれを楽しみにしています!

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