再会と初めまして
『……巫女。私の可愛い巫女』
声に気付いて睡蓮は寝かせていた瞼を開けた。
辺りは霧が立ち込めていたが不思議と見通しは良かった。
だから振り返ってすぐに気が付いた。睡蓮はそこに佇んでいた神々しい女性を見てはっとする。
『また逢えましたね巫女。私は
睡蓮は恐縮した。
静かに首を横に振って、そしてふと訊ねた。自分は幼馴染みの昂や使わしめたちと一緒に八尋殿で眠っていたはずだと。
『巫女、ここはそなたの夢の中。私と陽の巫女は夢を介して繋がるのです』
そういえば太秦が眠る前に話をしてくれていたと、睡蓮は思い出して納得する。
それから睡蓮は必死に願い求めた。皆が大御神を待っていると。皆にも姿を見せて欲しいと。
『慌てないで巫女。私はただ皆と隠れん坊をして遊んでいるわけではないのです。私が再び目を覚ますには、まず倭の穢れを祓ってもらわないといけません。そのためには』
睡蓮は頷き、固唾を呑んで待つ。
大御神はそんな睡蓮に目を細めると、これまで通りゆっくりとした口調で言うのだった。
『巫女、十三の使わしめとの融合を果たすのです。まず向かうのは――』
***
「……ん、朝でしょうか?」
翌日。やはり太陽は昇っていないようだが、窓から射しこむ光と
睡蓮は外の景色を確認しようと身体を起こそうとしたが、異変に気付いて
「何かが……身体の上を這って……へ?」
「ひゃああ!」と睡蓮が悲鳴を上げると、バタバタと激しい駆け音がこちらへと一目散に向かってきた。
その騒がしい足音が辿り着く前に、タンッと扉が素早く開く。
「どうした美月!?」
扉を最初に開けたのは、一番近くで護衛をしていた狛だった。
「大丈夫か睡蓮! って、な!?」
足音を立てていた張本人である昂がすぐに割って入って来たが、時が止まったように動けなくなった。
それもそのはず、睡蓮の襟元から顔を出していた
蛇に睨まれた蛙というよりかは単に面を喰らっていた様子の昂は、すでに取り押さえようとしていた狛よりも先に睡蓮を助けたかったのだろう。必死な形相で駆け出した。しかし――。
ぽんっ☆ ぽんっ☆
煙がもくもく。
昨夜のような光景に、昂は顔を青ざめさせた。
「My princess!」
狛の腕を払い退け、昂の気持ちをよそに、そう嬉しそうに叫びながら長身の美青年が睡蓮へと抱き付いたのだった。
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