そこにある怪談

 夜、前方に女性がいると申し訳ない気分になる。

 後ろから私のようなのが歩いていたらさぞかし不安だろう。

 かといって足早にしたら、より怖がらせてしまうだろうし、付かず離れずはさらに気味悪いに違いない。

 夜に後ろから足音が聞こえたら、私だって多少不安になる。 

 妙なもの(といっても霊的でない)を引き寄せやすいタイプなので不安になってしまうのだ。


 そう、最近は頻度が減ったのだが私はよくからまれる。

 カツアゲされたり物理的暴力を振るわれたりしたことはないのだが、突然怒鳴られたり、かと思えば知人と間違えて、あるいは間違えでなくとも知人に接するかのように話しかけられたりという経験が結構あるのだ。

 だから、一人で大声を出しながら歩いている方を見かけるとどうしても身構えてしまう。


 最近は必要以上に身構えてしまう。

 いやぁ、ブルートゥース怖い。エアポッド怖い。

 お願い、深夜に自分の武勇伝を電話(の類)で自慢しながら歩くのやめて。

 「だからよぉー、俺が声かけたらさぁ、結構すぐついてくるのよぉー」

 ぱっと見、一人で叫んでいるようにしか見えないから。

 男の私でも怖いんです。

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