金の斧と銀の斧を作るための旅に出よう

 魔王を駆除することはできない。


 聖なる泉の女神がくれる金の武器と銀の武器による致命傷以外では。




「そういえば、お兄ちゃんたちは金銀武器って持っているんですか?」


 魔王駆除の話し合いをするために俺たちの家に入れたアンドロが魔王を倒す上にすごくまっとうな質問をしてくる。


 金銀武器とは泉の女神がくれる金の武器と銀の武器の通称である。


 とはいえ、この単語を使うのは俺やベガのような魔物駆除に携わる人くらいだが。


「残念ながら持っていない」


「あっ、私は師匠からもらった金のシャベルなら…」


「そういうアンドロはどうなんだ?」


「いちおう持っています!」


そう言ってアンドロは先端部分のみになっている上に自前の持ち手がついている金の三又槍トライデントを見せてきた。


「トライデントの金の武器とは珍しい……」


「でも、この長さと見た目だと実質片手剣だな」

 

 俺はトライデントを見たときの胸のざわつきをツッコミのような発言でごまかす。


 ベガの言う通り、トライデントの金銀武器はトライデントを扱う人の少なさもあってかなり珍しい。


 色んな武器を見てきた俺でも父親の形見である銀のトライデントしか実物は見たことがない。


 だからこそ、アンドロが持つ金のトライデントが父親のものであった可能性を考えてしまうのだ。


 父親は金と銀のトライデントを持って魔王に挑んだにもかかわらず、父の遺体と共に発見されたのは粉々になった魔王の遺体と銀のトライデントのみであった。


 この自称妹、あまりにも謎が多すぎる。




「でも、アル君が金銀武器持ってないと魔王の討伐は難しそうだね……」


「もしよければお兄ちゃんが私の武器を使うというのは」


「俺は斧以外の武器はあんまり得意じゃない」


「アル君、斧以外でちゃんと使える武器ハルバートくらいしかないもんね……」


「確かに。だったら今すぐにでもベガと一緒に斧の金銀武器を作るために聖なる泉に向かう旅に出ようかな」

 

「行動早すぎませんか⁉」


「アル君は昔からこうだからね……でも、それがいいんだよね」

 

 ベガの言う通り、俺は人よりも行動がやたら早いらしく、デネブさんからはよく『オマエはもう少し遅く行動しなさい』と言われていた。


「あ、そうそう。アンドロは俺たちが聖なる泉に向かっている間どうする?」


「魔王が怖いからお兄ちゃんたちの旅に同行してもいいでしょうか。私、オーク程度なら単独で倒せますので!」


「キミけっこう強いね……」


 ベガの言う通り、オークはわりかし強い魔物で一般人で自力駆除できる人はあまりいない。


 オークが倒せるのなら旅の途中で魔物に襲われても足手まといには絶対にならないだろう。


 それに、何より旅に同行させた方がアンドロの安全を確保できる。

 

「いいよ。同行しても」


「お兄ちゃんありがとう!」


 


 そんな感じの会話をしてから数時間後、俺たち3人は聖なる泉に向かうべく家を出た。

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