第12話 森の中

 「ミヨ——!」

 五日後ぐらい、ちょうど私が庭の後ろの森に入ろうとした時、後ろから声かけられた。


 「おー林太郎とアカサか!どうしたの?」


 「暇だから」林太郎がその定番笑顔にピースサインをして、アカサはわかりみ深そうな表情で頷いた。


 「へえーじゃ一緒に行こうか?」私もちょうど連日の練習に疲れ切ったから、気晴らしに違うことをしてみたい


 「どこ?」


 「そこ」私は森を指した、「探険してみようと思う」


 今ミヨになる前によくここでうろついたが、奥までは行ったことがない。当時はまた充電式な体で、どっかでうっかり体力が尽きたら大変だからとイヴァンに警告された。

 

 でも今じゃ存分に探険ができる。


 「魔法は?戻ったの?」


 「しばらく考えたくない……」


 私は少し目を逸らした。


 魔法という言葉を聞いて眉を寄せるなんて自分らしくないことをするのが非常に不本意だが、どんなに好きなことでもいわゆる倦怠期けんたいきがあるかもしれないね。


 「考えたくないんだと……!?」林太郎が目を大きく開いて、ビックリした顔をした。

 やはりみんなにとって、私イコール魔法という式がすでに成立した。私が魔法に対するうんざりした顔を出したことはつまり一足す一の結果は二じゃないことのように人をビックリさせる。


 「何かありました?」アカサは心配そうな顔で尋ねた。


 ——それはね。


 私はこの前にイヴァンとの会話やその後イヴァンが課した諸々の課題について話した。


 「だから、ミヨは絶対立派なアンドロイドになると心で誓ったの?」


 「うん」


 「いや、目的違うんじゃねぇ?魔法はどうしたのよ?」


 「アンドロイドの上達に集中しすぎて、逆に魔法の練習を怠った。結局両方とも進歩なし」


 「それはそうだろ。本末転倒ほんまつてんとうだよ!」林太郎は呆れた顔でこっちを見てる。


 「だよなあ。くそっ、まんまとはめられましたね」私はさりげなく罪をなすりつけようとした。


 「いや、それは……」たぶんツッコミしたいんだろうが、心優しい林太郎は結局キツイことを言わなかった。


 私たち三人は話しながら、一緒に森に入った。2、3百年ぐらいの森で、樹木がたくましくそこそこ盛んに生えている。晴れの日のわりには、葉っぱの間から透かした光はやや弱いので、今ミヨとアカサの目が自動的に光った。


 ネコのように——可愛い印象をつけるため——と言いたいが、実際のところ、たぶん歩くフラッシュライトのほうに近い。


 森の入口からおおよそ1キロメートルのところまで伸びる小道があるが、残りはほとんど獣道だ。私は適当に一つを選んでもっと奥の方へ行くつまりだ。


 「それで、どんな課題が課されたの?」林太郎が聞いた。


 「まずはスピードクイズだ」


 このクイズ形式のゲームは、とにかくスピードが大切だ。その目的は考えを抜きことだ。思考をやめて、直感で答える。ほとんどの問題は簡単だ。例えば、一番好きな食べ物とか、黄色いと青いどっちがいいとか。一連の問題に答えた後、急に魔法に関する問題が来る。


 ——魔力を使う時理性と感性どっちが重要?


 ——魔力の源はどこにある?


 ——魔力は熱いか冷たいか?


 「何その人を油断させて、情報を引き出すような尋問テクニック?」


 「ぽいっしょ。よくわからん。答えはしたけど、正解かどうかは不明。魔法を使う時そんなこと全然考えないもんね」


 「正解かどうかわからないと意味ないじゃん?」


 「あります」アカサが言った。


 「一般的に、すでに答えのある問題に対するテクニックだが、当人でも知らないことを聞き出すにも有効的です。簡単な一問一答いちもんいっとうに慣れた脳は無意識的にそのような思考回路を形成して、意識の代わりに正解を導き出します」


 「だそうです!さすが本物のアンドロイド」

 すでにイヴァンにも似たようなことに言われたから、知っているけど、イヴァンが言わなければ、なぜそんな訓練をするのがわからなかった。


 「ミヨもアンドロイドだろ」林太郎は少し苦笑した。


 「わしはただのポンコツだけだ」


 わざと自嘲したが、実際にそれは本心でもある。今の私は、人間でも、アンドロイドでも、魔法使いでもない。何者にもなれない状態だ。


 「君は今、自分の脳をパソコンのように使っています」

 イヴァンの口調を真似して、私が続けて言った。

 

 それは間違いました。今の君はパソコンそのものだから。とイヴァンがそう言ってた。


 私が魔法を本能の一部として捉えるように、イヴァンも頭脳の使い方を本能の一部としてあたりまえのように使うから、どうやってアンドロイドのように思考すると聞かれても、言葉によって説明するのが難しいらしい。


 後天的なアンドロイドとして、完全なアンドロイドになることはテクニックの補助が必要かもしれないので、このようなおこなった。


 「この訓練は、強制的に私の思考中枢のスピードを上がるとイヴァン先生が言った。もちろん、直感の訓練にもなるんけど」


 話ながら、いつの間にか道の行き当たりに着いた。ここからいくつかの選択肢がある。右に行けば、フラッシュライトモードに離脱できそうだから、その方向にした。

そこで、私とアカサはさらにそれぞれ右方向の二つの獣道を代表してどっち行くのをジャンケンで決める。

 

 アカサはこんな決め方がはじめてみたいで、目がちょっとだけキラキラしていて、可愛くてたまらない。


 「他に何かあったんっすか?訓練」


 アンドロイドになってから動体視力がめちゃくちゃいいのが知ったから、周りで見ている林太郎人間が気づかないかもしれないが、私とアカサともお互いに何を出すのかを見抜いてまた見抜いて、一秒以内でグー・パー・チョキを無数回変わって、最終的に私がグーでアカサがパーを出した。


 マジ激戦だった。いい勝負だ。


 アカサが勝ったから、彼女の代表する道にした。


 「他には、想像力訓練とか、魔法に関する記憶の分析レポートを出すとか」


 あと、魔法と関係ないが、やっとアンドロイドの頭脳だけでメッセージのやり取りができた。自分の頭をLI○Eのような通信アプリとして使うのは言葉で表せない奇妙な感じがすると同時に、すごく便利。


 「レポート力に至ってはもはや関係なくない?」


 「私はもう意味を考えるのがやめた」私は肩を竦めた。


 「なぜ想像力を?」今回はアカサにもその意味がわからないようだ。


 でもそれは無理もない。イヴァンが私の与えた情報から考えたことだから。


 「魔法はね、わりとなんでもできるから、問題なのは、自分は何がしたいの。例えば、もし魔法があったら、何かしたいという問題に対して、自分の髪色を変えるのと、全世界の人の髪色を変えることの規模きぼはかなり違うでしょ。後者の必要な魔力と前者に比べたらはるかに上回るし、想像力も比較的に前者より限られていないことがわかる。つまり想像力の豊かな魔法使いは一般的に強いほうだ」


 そして、私がそれをイヴァンに教えたら、想像力訓練にやらされた。


 「想像力を訓練すると同時に魔力も強めるはず、とイヴァン先生が言った」


 理論上の話だけどね。


 驚いたことは、確かイヴァンは空想の能力がないけど、膨大ぼうだいなデータベースとアルゴリズムを利用して、彼の考えられることは私の想像より大幅に越えた。誰にも考えなかったアイディアをそのまま生成するのだ。


 私も同じようにいろんなアイディアを生成させられた。以前AIに要求したことが自分に返したので、少し微妙な気分だ。これこそAIの反逆はんぎゃく。恐るべし。


 「へぇー本当に張り切ってるね」


 「私はもともと張り切ってるよ」


 「ああ、ミヨのことじゃない。イヴァンの方だ」


 「まさかイヴァンと何かあったの?あのコンサート以来、急に協力してくれるって、何か原因なのかずっと考えたの」私が林太郎に聞いたら、彼はただ満足しているように微笑んだ。


 「それはナ、イ、ショ」


 「何それ、キモッ」私はわざと引くような顔をした。でも、まさかイヴァンを説得したのは林太郎なんて、少し驚いた。


 やはり、林太郎は何か肝心な情報を知っているようだ。根拠があるというわけではない。ただの勘。


 「あそこ」と、アカサが急に私と林太郎を制した。


 「何?」遠すぎて、林太郎が何も見えないようだが、私は見た。


 「子ども?」


 「みたいですね」


 「なぜそこに……」気になるのは実は子どもが一人ぼっちの状況だけではない、あの子は地面に伏せていて、じっとも動かない。


 「二人ともじっとしている場合じゃないから!」林太郎は相手が子どもだと聞いて、かなり動揺しているようで、子どもの方向に走ったが、私とアカサは何の反応もないのは理由があった。


 お互いに答え合わせはしないが、たぶん同じことに気付いたと思う。


 それは、子どもの全身は土や埃によって覆われて、周りの葉っぱの間で蜘蛛の巣さえできたから。

 

 それはつまり、状況はともあれ、あの子は恐らくだいぶ前からずっとあそこにいるのだ。


 もしくは、あそこには

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