その夢は泡の飛沫で出来ていた。


 中年のおじさんが、自分の存在を周りに知らしめるためにVTuberに挑戦する。

 これだけ聞くと「昨今じゃよくある話じゃん」となるわけですが、
 この作者様の手にかかると、一気にスモークされた燻製になるから不思議です。
 
 よく「おじさんはこんな(幼稚な)ことしない」という指摘があったりしますが、この作品に関してはむしろ、
 良くも悪くも年齢を重ねたことによるエグみが出ていると言えます。

 童謡「シャボンだま」を思わせる儚いというか、無常を思わせる展開。
 その中で確かにあった人の感情。

 読んでいて悲壮ではありますが、おじさんが落ち着いているのでそこまで気落ちはしませんでした。
 大人が童心に帰ろうとした結果、とでも言えばいいのか……