第十五話「ながされて奴隷島」

目を開けると、粗削りの岩の天井が広がっていた。


「知らない天井だ」


思わず『人生で一度は言ってみたいアニメのセリフランキング ベスト100!』あたりに入っていそうな言葉を吐いてしまう。

(そんなランキング本当にあるのかは知らないが)


まぁ、こんな時くらいしか言う機会がないからな。言わせてくれよ。


(それにしてもここはどこだ?)


俺は身を起こして、辺りを見渡した。


天井と同じく壁は荒い岩肌で出来ている。どうやら大きな岩山か何かをくり抜いて作られた部屋らしい。


確か、俺はエーアの街の船上パーティーでノラと一緒に悪魔と死闘を生き抜いてそれで……。

色々あってクラーケン(デカいイカのような見た目の怪物)の一撃で海に投げ出されてしまったんだった。


あの時、俺と一緒に投げ出されてしまった僕っ娘ドラゴニュートの姫騎士様や、飛び込んで来たダークエルフの女(確かアレッシアとか呼ばれていたっけ)は無事だろうか?


それに船に取り残されていたノラも……


俺がボンヤリとあの時の事を思い出していると、部屋のドアがノックされた。

どうやらここの岩石住居の住民の1人らしい。


彼によると俺は大海原を漂流していたところを救い出されて、今はここの岩石住居の主人の一存でお世話してもらっている、とのことだった。


彼は「体調が問題ないようならぜひ、自分の主人に会って欲しい」と言ってきた。

命の恩人だ。もちろん会おう。


(こういう時はどういう風なお礼をすれば良いのかな)と考えを巡らせながら彼の後をついていくことにした。


〜〜〜

「グフフフ、美しい男子おのこじゃのぉ」


(申し訳ないが猛烈に帰りたい)


俺は眼の前のデカいナメクジのような姿の女に内心ウンザリしてしまう。

(某SF映画に出てくる奴隷や拷問を好む悪役、ジャバ・ザ・◯ットのような見た目と言えば伝わるだろうか)


まぁ、俺も人にとやかく言えるようなイケメンじゃない……いやこの世界では俺のこの地味な芋顔も美男子なのか。ややこしいな。

とりあえず、俺が言いたいのはまぁ人は見た目じゃないってことで。


「頭が高いぞ!男!こちらにおわす方は、連合王国イチの奴隷商人、ブリジータ様だ!奴隷であるお前のご主人様になる方だぞ!」

「まぁまぁよいではないか。こういう世間知らずな美男子が壊れていくさまを見るのが私は一番好きなんだよ」

「ははぁ!さすがはブリジータ様!また"例の拷問ごうもん"をやるのですな!」


(見た目通りのヤバい女じゃねぇか!)


俺は警戒感を一気に高める。

こいつ、奴隷商人で拷問も好きってまさに見た目通りの正統派悪役じゃねぇか。


「先日連れてきた気の強そうなエルフの男も、ブリジーダ様にかかればすぐに壊れてしまいましたな!あれには驚きました!」

「よせよせ、褒めるでない」


(そこは照れるところなのか?)


眼の前で繰り広げられるやり取りがあまりにもぶっ飛んでいるので、一周回って冷静になってきた。

丸腰の俺は奴の顔に全力のこぶしを叩き込んでやろうと、手の甲に魔力を集中させる。


「ブリジーダ様。"例の拷問"の準備、整いましたぞ」

「うむ、では連れてこい。あの身の毛もよだつような醜い女を」


"醜い女"という言葉を聞いて思わず「え?」と驚きの声を出してしまう。

そんな俺にブリジーダは粘ついた笑顔を向けてくる。


「お前には毎晩、夜が明けるまで私の用意した醜い女とまぐわってもらう」

「は??」(まぐわうって要はセック◯するってことか??)

「グフフ。恐ろしいだろぉ。今から毎日犯されてやつれていくお前を見るのが堪らなく楽しみだよ。グフフ」

「ヒエッ……(歓喜)」


この世界基準でのブス、つまり俺の元の世界(地球)基準での美人ってことだ。

最高かよ!俺も今度からブリジーダ様って呼んじゃおうかなぁ!!


「そのうち心の折れたお前は自らの意思で『美しいブリジーダ様の性奴隷にして欲しい』と懇願するのさ」

(いやそれはない。)


まぁ、ブリジーダの最後の妄言もうげんは忘れるとして。


これから毎晩、美女を抱きまくれるのだ!

この異世界に来てから帝国から指名手配されたり、悪魔に殺されそうになったりと散々だったがようやく俺にも運が向いてきた!


父さん、母さん。俺、こっちの世界でようやく童貞卒業が出来るよ……。


俺が笑顔が漏れないように必死でうつむきながら心の中で歓喜かんきのタップダンスを踊っていると、なぜか悲しげなノラの顔が心に浮かんで少し罪悪感が湧いてくる。


いや、こっちの世界は一夫多妻制と聞くし気に病むことは何もないはず!それに俺はノラと付き合っているわけでもないし……。


後ろの扉が開く音が聞こえて、俺はいったん謎の罪悪感を忘れて振り向いた。


「お前は!!破邪の剣の盗人!クロダ!!」

「あの時の姫騎士様?!」


奴隷商人の仲間が連れてきたのは、エーアの近海で俺と一緒に海に投げ出されたドラゴニュートの姫騎士の少女だった。


〜〜〜

「ブリジーダ様から許可が出るまでここにいろ」

「はいはい」


俺は鉱山の牢屋に閉じ込められることになった。

ここの牢屋も岩山をくり抜いたつくりになっていて、ゴツゴツとした壁が中々に見ごたえがある。


「いくらブスな女とは言え、顔見知りに犯されたところでそこまでのショックはないだろう」と判断したブリジーダは、新しくブサイクな女の奴隷が

手に入るまで俺を閉じ込めておくつもりらしかった。

(いや、場合によっては知り合いに犯される方がよりショックなのでは?と俺は思ったが流石にそこは口をつぐんだ。)


考えてみれば"この世界"に転移した最初も地下牢だったな。つくづく牢屋に縁があるようで。


そんなどうでもいいことを考えていると横からはシクシクと泣きじゃくる声が聞こえてくる。


ドラゴニュートの姫騎士様だ。


初めて彼女と対面した時は、すごい迫力だったんだがな。

今じゃこんなにしおれている。


俺は横でおめおめと泣いている彼女の顔を眺める。今の彼女は初めて会った時に付けていた銀色のマスクを外していた。

それにしてもとんでもない美少女っぷりだ。


宝石のようなブルーの瞳は、泣きじゃくっていたためか結構、れているが、かえってそれがエロく感じる。

こういうのを背徳感はいとくかんがあるというのだろうか。


白っぽい金髪の髪は手入れをされていないためか少しバサバサとしているものの、やはり息を飲むほど美しい。


何よりあの重力逆らう胸!股間がムズムズしてきた俺は、2つのふくらみから視線を外そうとするが、どうしても目が話せない。


「えーと。その、とりあえず、無事だったんだな。それでどうしてここに?」

「……僕、仕事が出来なさすぎて……鞭で叩かれて、それでいつもみたいに……懲罰房に入れられているんです」


俺は、ここの奴隷にされてしまった経緯を聞きたかったんだが。

彼女はその後もシクシクと「いかに自分が奴隷として仕事が出来ず、イジメられているか」を漏らしてきた。


俺はそれを聞いて不覚にも同情してしまった。仕事が出来ないと嘆く彼女の姿に過去の自分が重なって見えた。


俺も学生時代にしていた居酒屋のバイトで注文もまともに取れなくてよく怒られてたっけ。

まぁ流石に今の彼女のように鞭で打たれることはなかったが。


「姫騎士様」

「……なんですか」

「ここ、脱出しましょう!二人で!」

「帝室の宝をやつらに盗られていて……」

「それも取り返してやりましょう!姫騎士様!」


彼女を元気づけようと無理に明るい声をかけ続けていると、ようやく彼女は涙をふいてこちらを見てくれた。


「……シャルロット」

「え?」

「名前、姫騎士じゃない。僕の名前はシャルロット」


シャルロットは顔を真っ赤にして震えながら、俺の顔を見つめていた。


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逆転の勇者様!〜人生で脇役ばかりしてた俺だけど「コンプレックスまみれの美少女たち」の異種族ハーレムで重すぎる愛と淫らなご奉仕を受けつつ成長チートで世界を救ってます〜 じょぶおんりー @Uohamachi2gou

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