その③

一直線に家へと向かい、

息を弾ませた彼女は、

力強くドアを開け、転がり込む様に

自室へと向かった。

早く例のものの正体を暴きたい、

という衝動に駆られていた。

階段を駆け上がった。


扉が開いた。

白を基調とした小部屋が現れた。

綺麗に整えられたシーツ。

風にたなびくレースのカーテン。

窓辺の鉢に咲く小さな花。

彼女の性格を物語っているかのような

落ち着いた雰囲気。

彼女は安堵した。

さて、早速 という時に

母親に呼ばれた。

彼女は一つ返事をし、階段を駆け下りると、

庭の花々に水をやり始めた。

それほど広いわけでもないが、

決して狭くは無い庭のほとんどを、

柔らかくも力強い色彩が支配していた。

彼女の自室から見下ろすと、

その光景がよく見える。

彼女はその景色を、とても好んでいた。


水やりが終わると

真っ先に自室へ走った。

水やりは習慣だった。

最近は春のくせして夏のような

暑さの日もあるのだ。

快晴の青空に輝く眩い宝石から

放たれる光線は、

これでもかという程に地上に

照りつけた。

毎日でも水をやらねば

枯れてしまうほどに、

からっとした暑さだった。

ただ、彼女はまだ、この暑さを好んだ。

これが梅雨頃になると、

やっていられない。


自室についた彼女は

例の手紙を取り出すと、悩んだ。

彼女は思った。この手紙を開けることで

始まる物語があるはずだ。

果たしてそれでいいのか。

このままの日々をただ過ごすのも、

悪くは無いだろう。

私を思い悩ますような物事が

起こってしまう。自らそれを選ぶのか。

しばらく悩んだ末(といっても

時間的に言えば5分もない、

ごく短時間なのだが、

これが彼女には無限にあるかのように、

答えなどないかのように思えた)、

カッターナイフを取り出した彼女は、

一思いにその袋の上部を切り、開けた。

というのも、せっかく私が

貰ったのだから、

開けて中身を見なくては、

送り主にも失礼だ。

そうして何より

送り主の正体が書いてあるだろう

と思った故の行動だった。

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