第2話 なんで私が 1/2

 待った待った待った。


 意味不明。


「なんで私なんですか」


 畑違いだ。


「歌もダンスもやったことないですよ」


 それに、今の仕事で十分満足している。


 歌手デビューなんて望んじゃいない。


「その点は気にしなくていい。これからどうにでもなるから」


「いや社長、簡単に言いますけど」


 どうにもならないだろ。


 根本的に、私はアイドルってがらじゃない。


 プラチナブロンドに、前髪なしのショートヘア。


 ボーイッシュを売りにしているんだから。


 アイドルにボーイッシュがいらないってわけじゃないだろうけど、多くの人が求めているのは『可愛いアイドル』だろ。


「メンバーが教えてくれるから、安心してくれ」


「……待ってください。メンバー?」


 ソロじゃなくて、は? グループに所属?


「2019年にデビューしたグループ『HANA-AKARI』。知ってるね?」


「はい、一応」


 誰が所属してるとか、どんな曲を出してるとかは全然知らない。


 売れてないんだから。


「君にはね、このグループに加入してほしいんだ」


「はあ……はい!?」


 え、嘘だろ。


 新しいグループをつくるんじゃなくて、途中加入なんですか。


 マジですか。


「大丈夫。メンバー全員、君が加入することを受け入れている」


 漸く口を開いたプロデューサーに視線を向ければ、胡散臭い笑みを浮かべていた。


「なにが大丈夫なんですか」


 なにひとつ大丈夫な要素が見当たらないんですけど。


 この人たち、なにを考えてるんだか。


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