第9話 農村の宿

 1節 宿探しと快適ふかふかなオフトゥン



 日も暮れてきたので宿を探している。



 夜も夜でこの街、なかなかおしゃれだ。夜でも活気があるし。



 道行く人はまだ楽しそうに喋りながら歩いていて、2階の窓からは光が漏れている。煙突からは煙が上り、街灯には魔宝石の明かりが灯る。



 そんなオシャレな街で宿を探していると、いい感じの宿があったので泊まる。



「おお〜おしゃれ!」


「本当に異世界なんだな……」



 入るとそこはゲームで出てきそうな、すごいオシャレなロビーだった。床は板張りで、壁は石。電気が通っているらしく、天井からは電球がぶら下がっており、火はついていないが暖炉もある。



「お泊まりになられるのは5名様ですか?」


「あ、はい。そうです」


「それなら、一人100ヘレトをお支払いください」



 さっきクラーマーに渡された大銅貨5枚を渡す。



「では、部屋を案内します」



 スタッフさんに案内されて、5・6人くらいの団体が泊まるらしい部屋に来た。



「夕食の時間になったらお呼びします」


 そう言ってスタッフさんは去っていった。


「すごい部屋……!」(時雨


「だねー!ベットもすごいふかふか!」(睦月


「あっずるい!私もベットに飛び込む!」(如月


「えっふかふかなの!?」(朝凪


「あんま騒ぐなよ?」(矢矧


 布団へダイブする。


「うわーひっさしぶりのふかふかの布団!」(朝凪


「久しぶりって言っても1週間どころか3日も経ってないですが、やはりいいもので

 すねぇ」(時雨


「もうここから動きたくない」(朝凪


『わかる』(吾妻姉妹 「わかります」(時雨


「そうは言っても動かないとだろ」(矢矧


「え、やだ」(朝凪


「お前が運転しないとあの車は動かないだろーが!」(矢矧


「じゃあお前が運転すりゃいいじゃん」(如月


「えやだよめんどくさいしわからんし」(矢矧


『なんだこいつ』(朝凪・如月


「適当に棒くるくるしたらレバーガチャガチャして変なとこ行かないようにハンドル持ってりゃいいんだよ」(朝凪


「クソ雑な運転を今日初めて動かしたやつが語るな」(矢矧


「へいへーい」(朝凪



 それはさすがに冗談として、このベットが快適なのは間違いない。ふかふかで、掛け布団があって、枕もある。これぞ、まさに、最&高。まさかこれだけで布団から動けなくなるとは。



 これは……もう……………




 10分後




 コンコンコン


「お客様、もう少しでお夕飯が……」


「……」(一同スヤァ


「ゆっくりお休みなさいませ」



 20分後



「……ハッ」(矢矧(一人だけ早く起きた)


「おい、起きろ如月」


「ぬぅ〜ん……あと5分……」


「睦月起きろ」


「ちょっとぉ……むずかしいかも……」


「時雨は起きて」


「今回ばかりは無理ですぅ……」


「朝凪起きろよ?」


「えぇ〜?やだよ……あと5分……」


「吾妻姉妹と朝凪はいつも通りだが時雨まで起きないとは」


「……」(朝凪の前へ)


「せいっ!」


「うぎゃぁ!?」


『!?』


「よし。みんな起きたな」



「僕を犠牲にすな!!!」(目一杯めいっぱいの叫び)



 ガチャ



「あ、お客様起きたのですね。冷めないうちにお食べください」(スタッフ


『スタッフさん!?』(一同


「机の上に今日のお夕飯を置いておこうと思いまして」(スタッフ


 見ると、料理の乗ったカートを手で押していた。すごくいい匂いがする。


「それでは料理を並べていきますね」


「あ、ここで食べるんですね」


「そのために持ってきましたので」



 2節 お夕飯



 数分後



「うわぁ〜美味しそう!」


「すごいな……こんな料理久しぶりだ」


「だね」



 メニューはパン、サラダにスープ、それにハンバーグ。



 めっちゃくちゃ美味しそうである。



 3日も経っていないはずだが、それでも懐かしく感じる。不思議なものだ。



 早速、ハンバーグを一口。



「おいし〜い!」



 すごい。めちゃくちゃ美味しい。噛むたびに肉汁が溢れ出てきて、味も濃すぎず薄すぎずでめちゃくちゃ美味しい。(大事なことなので 以下略)



「…………」(時雨


「どしたの?」(如月


「なんでもないです」(時雨



 そんなこんなで夜ご飯が終わり、僕たちは寝ることにした。残念だがお風呂はないらしい。まああったらあったで色々問題が起きるので良かったような気もする。ただベットがあるだけで満足だ。


 時間は9時頃。こんなに早く寝るなんて前の世界にいた頃から数えて何ヶ月ぶりかわからない。


 この世界にはネットなんてものはないし、パソコンもなければスマホもないので健康的な睡眠が取れる。とてもいい。


「それじゃーみんなおやすみー」

『おやすみ(なさい)』




 3節 眠れない夜



 今は深夜の11時。みんなからはすでに寝息が聞こえている。



 そう。



 眠れないのである。



 全く眠気が来ないのである。



 さあてどうしたものか。



 この世界には眠れるようになるような音源はないし、まだまだ眠れそうにない。



「……あ」


「! ……時雨か」


「はい。坂田くんも起きていたんですね」


「眠気が来なくてねー」


「隣、ちょっといいですか?」



 そう言って時雨は僕の寝ているベットの右側に来る。



「時雨はなんで寝てないの?」


「いえ、さっき起きてしまいまして」


「それは残念だ」


「なんかちょっと安心しますね、ここ」


「そう?」


「はい。あったかくて」



 天井を見上げながら落ち着いた声で言う。



「そうだ、子守唄を歌いましょうか?」


「そんな、子供じゃないしなあ」


「そうでもないかもしれませんよ?」


「というと?」


「坂田くん、すでにちょっと眠そうですし」


「いやー、あくびはしても眠気は来ないんだよ」


「そういうものなんですか?」


「いや、もしかしたら僕だけかも」


「まあ、歌いますね」


「……うん」


「〜〜〜〜♪」


 時雨の子守唄は、なぜか不思議と安心するような感じがする。優しく包み込むような、まるで今までのしいたげられた痛みを知っているような。あるわけでもないのにピアノの伴奏が聞こえてくるよう…な………


「〜〜♪……あ、寝てしまいました」


「本当は眠かったんでしょうね」


「なんだか、自分でも眠気が……おやすみなさい」

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