始まりの街との別れ

第17話 ビレノートとの別れ

 1節 この街最後の朝



「みんなおはよー」


「おはよー」


「おはー」


「おはようございます」


「おはよう」



 今日でビレノートを離れ、次の街へ行くことにした。



 なので、夕方になるまでは昨日商店街で見つけたいい感じの商品を買っていく。



 使う上限は4000ヘレト。



 着替えたり朝食を食べたりしたら街を周り始める。




 2節 買い足し


 まず、絶対必要なのが缶詰のパン。これがないと主食が欠けるので体がもたない。これはかなり安いし保存が効くので沢山買っておく。



 次に、炎の宝石で簡単に調理ができるようになるカセットコンロみたいな形の調理

器具1つ。



 あと採取に使った道具たちが超安物だった。だからもうボロボロになったんで、ちゃんとしたやつに買い換える。まあ宣伝に使われていたその道具のキャッチコピーが、『すぐ壊れてもいいからとりあえず今すぐ道具が欲しい人へ』だったので妥当だとうと言えば妥当だが。



 これでもう買うものは無くなったので、車へ積み込む。



 すると今度はやることがなくなる。まあ暇なのでボロボロになった剣を研ぐことにする。この前ツヴァイヘンダーでやったように研いでいく。



 他の4人はものすごく暇そうな様子で、懐かしい遊びを色々やっている。



 ずいずいずっころばしとか、わりばしとか、指スマとか、そういうの。しりとりには研いでいる途中だが強制で参加させられた。すごい勢いで負け続けたのでマニアックな楽器の名前や元素記号の名前を使いまくって耐えしのいだ。



 ちなみに暇を持て余しているのに夕方に出発する理由は、みんなで決めたくっそしょうもない理由で、



『夕方に次の街に行くとか雰囲気良くてかっこよくね?』



 という理由だ。別にそれに反発する理由もないので従うが。



 そして、昼食を食べた後の午後も時間が流れていき、最後にクラーマーさんに挨拶しに行くことにした。



 3節 ビレノートとの別れ



『ありがとうございました!』(全員


「こちらこそ。また寄る機会があればぜひビレノートへぜひ来てくれ」(クラーマー


「はい!」(朝凪


「ああ、君たちは旅をしているんだったよな?」(クラーマー


「そうですね」(朝凪


「なら、ビレノート駅の混合列車でペルニジムという街に行くといい。そこはエルフの街で、魔法が栄えている」(クラーマー


「ありがとうございます!」(朝凪


「それじゃあ、今度こそまたな」(クラーマー


「ありがとうございました!」(朝凪





「ねーあさっちー混合列車ってなに?」(如月


「混合列車は貨物車と客車が混ざってる列車だよ」(朝凪


「あぁ、私たちは車で移動してるからですか」(時雨


「なるほどな」(矢矧


「えっと、次来る混合列車は何時?」(朝凪


「今が18時で、次来る混合列車は18時30分だね」(睦月


「じゃあ今駅で余裕あるし、ちょっと休んでるか」(矢矧


「だね」(睦月



 そんなこんなで車の中で待っている。



 正直めちゃくちゃ疲れたので寝たいが、それで運転手である僕が寝たら列車に積み込み出来ないので起きたままでいる。



 車を降りて駅のホームへ行き、駅員にペル二ジムへ車を積んで行く旨を伝え、料金を払い貨物用プラットフォームへ。みんなが起きないように出力を抑えてゆっくり動かして持っていく。



 そしてその5分後、大きな汽笛を鳴らしながら前見たものとは違う機関車がやってきた。




 もうビレノートを離れると考えると、少し寂しくなった。




 4節 夕方、蒸機に乗って鉄道旅



「おーい起きろー」


「言われんでも汽笛で起きたわ」


「貨車に載せるからあんたら降りて客車乗っといて〜」


「あいよー」



 前方に連結されている貨車へ車を積み込み、降りる。時間はすっかり夕方で、貨車の扉の隙間から差し込む夕日が綺麗だった。



 列車の先頭へ行ってみる。運転台の窓の下には、CSD-6400と書いてあった。



 見た目はシンプルで、日本我が国の機関車に似ている部分がある。前に見た機関車よりは小柄で、製造所の名前が書いてある所には、“日ノ本重工業”の字が刻まれている。



「おーい朝凪こっちだー」


「ほーい」



 僕たちは客車へ乗り込む。夕方なので室内のライトが点いていて、明るい。



「あ、出発するみたい」



 窓から外を見ると、駅員らしき人が緑の手旗を振っていた。そして、汽笛を吹き上げ、僕らと車を乗せた機関車は新しい街へと進み出した。



 しばらくすると、一定の蒸気の音と列車の揺れ、そして暗くなっていく空に乗せられて、僕はどんどん眠りへ落ちていった。





「朝凪と如月は寝たみたいだな」(矢矧


「朝凪は列車を待ってる時も寝ないで起きててくれてたし、如月はずっと騒いでたしね」(睦月


「まあ、ペルニジムとやらに着いたら起こしてやろう」(矢矧


「ですね。なんだかほのぼのとしてて可愛らしいですね」(時雨


「朝凪からは全くそう感じないけどね」(睦月


「同感だ」(矢矧


「ふふ…ふっw」(時雨



 1時間ほど汽車に揺られた俺たちは、陽がほとんど落ちて星が見えるようになった頃、19時35分、定刻通り到着した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る