第16話 クエスト生活〜薬草採取編ラスト〜

 1節 時雨の昼飯作り



 時間は昼の11時半。



 お昼ご飯にはちょうどいい時間です。私は、宿屋や店などで昼飯が食べられない時、調理担当をしています。



 今日は、みんなで採取をしたお陰で、結構な量の食材が集まりました。そのほとんどを水と風の宝石と一緒にクーラーボックスへ入れます。その中から、お昼で使う食材を選びます。



 あるもののレパートリーや栄養的に、魚料理とサラダか野菜の炒め物が一緒になっていることが多いです。



 主食は悩みどころで、パンの缶詰をふやかすくらいしかできません。今日は、パンと魚の串焼きと山菜のサラダに、スープです。



 まず、車のルーフキャリアから水の入った一斗缶いっとかんを矢矧に取ってもらいます。



 これはどうやっても私にはできないのでいつも坂田くんか矢矧に頼んでいます。その二人ですら苦労しているので、今度脚立か何かを買おうかなと思っています。



 パンは缶詰から取り出し、桶みたいなボウルみたいな入れ物の中に水と一緒に入れて柔らかくします。パンはこれで放っておけば大丈夫。



 次に魚の串焼きです。



 図鑑を見てもらった感じだと、ポクケーブという種類のようです。やはり異世界なだけあって変わった名前です。



 焚き火を全員で準備して、火を着ける……予定だったのですが、炎の宝石が手に入ったので、細長い炎の宝石を地面に突き立てておくだけになりました。とても楽なので便利です。魚は、今回は秋刀魚サンマのような細長い魚です。



 お腹の部分に包丁を当てて切り、中の内臓やえらを取り出したら、40センチくらいある長い串に、魚を刺していきます。5本できたら、それを宝石の周りに突き刺していきます。火加減の調節は全くわからないので、とりあえずなんとなくの感覚と間隔で。



 次は山菜です。



 山菜は、サラダにするだけなので簡単です。炒め物に限らず、熱が必要な調理の、炒める、煮る、茹でる、焼くなどほぼ全ての調理法が、非常に不便な焚き火から魔宝石になったというのは進歩ではありますが、如何いかんせんコンロのように置いて放置できるようなものではないので、腕が疲れます。



 今度ビレノートに帰ったら、それらしい調理器具があったら即決買いしようと思います。値段にもよりますが。



 山菜を細かく切って、お皿に盛り付けたら終わりです。



 この山菜たち、《山菜》とは呼んでいますが、これは山菜なのでしょうか……?



「ねー矢矧ー」


「ん?どうした?」


「山で取れる食べれる草って山菜だけどさ、ここ平原の森じゃん?山菜扱いなのかなあ?」


「んなことわからん。朝凪にでも聞け」


「はーい」



「坂田くーん」


「どした?」


「山で取れる食べられる草って山菜じゃないですか」


「そっすね」


「ここ森じゃないですか」


「そっすね」


「ここで取れる食べられる薬草じゃない草って山菜なんですかね?」


「どうだろなぁ。山で取れるから山菜って入ってるわけだし、別の単語なような気もするけどな。でも代わりの言葉は思いつかないしなぁ……自生する野菜ってのは変わんないし自生する食べられる野菜はは山菜でいいんじゃないか?」


「なるほど。ありがとうございます」



 なんとなく坂田くんの知識なので不安ではありますがそういうことでいいでしょう……



 その次は薬草のスープです。



 出汁は、適当になんかすごくちっちゃい魚を使って取ります。



 今日はずっと体を動かしていて全員疲れているので疲労回復の薬草を少し入れて、それとそれだけじゃ物足りないので他にも1種類山菜を入れます。それと、砕いてもらっていた回復の宝石を入れます。



 人参にんじんのような根菜があればいいのですが、それはありません。食材のレパートリーが欲しいです。ないものねだりもしょうがないので今あるもので作りますが。



 取った出汁の中から魚を抜いて、切った薬草と山菜を入れます。そして、ある程度色とかがそれっぽくなったら、魔宝石から離して、お椀に入れます。



 最後に、ふやかしていたパンを取り出して、ある程度乾いたらそれぞれ並べて、焼いていた串焼きも取って長いお皿に入れて塩を軽くまぶしたら、完成です。




 2節 時雨の料理は絶品!



「わぁ〜美味しそう!」


「ぜひ召し上がってください」


「じゃあ早速!」


『いただきます!』


「ん〜!美味しい!」


「さすがだな」


「やっぱ宿のも美味しいけど時雨の料理の方が美味しいわ」


「それな」


「ありがとうございます」



 僕は早速時雨の作った料理を食べ始めた。



 魚の串焼きが、すごく香ばしい匂いを出している。ちょうどいい焼き加減で塩も塩辛すぎなくて美味しい。また食べたくなるような美味しさが口の中に広がって無くならない。



 その他のスープもサラダも、どこか懐かしいような味わいで、また食べたくなった。



 30分くらいでみんな食べ終わった。休憩を挟んだら13時からまた1時間くらい採取して、適当に15時くらいまで時間を潰したら帰ろうと思う。




 3節 午後のいろいろ



「んじゃー13時あたりからまた1時間くらい採取したら15時くらいに帰ろー」


「おけー」




 その後は残念だが特に何事も起きず、13時ごろ2度目の積み込みをした。




「やー陽の光ってあったかいねー」(睦月


「だなー」(矢矧



 僕らは今5人で平原に横になっている。いわゆる日向ぼっこだ。雲のほとんど無い、晴天の青空だ。



「ねーこの後どうするー?」(如月


「んーどうしよっかねー」(朝凪


「とりあえずビレノートに帰ったら宿に泊まって・・・」(睦月


「そろそろ別の街に移動します?」(時雨


「だね。んじゃあ、宿に泊まって、夕方ぐらいに次の街に行こう」(朝凪


「つってもなんかここら辺に街ってあるのか?」(矢矧


「どうだろね。線路が伸びてるってことはあるだろうけど」(如月


「いや、そりゃそうだろ。その後がすごく遠いかもしれんぞ?」(朝凪


「まあ、そのあたりはクラーマーさんにけばいいんじゃないですかね」(時雨


「あ、そろそろ行くか」(矢矧


「あそうだね」(睦月


「じゃあ運転よろー」(如月


「お願いします」(時雨


「あいよー」(朝凪




 帰りも特に何かあるわけではなかった。残念だ。かといって行きのようなバトルもあったらめんどくさいのだが。強いて言うなら途中で短い小雨が降ったくらいだ。ワイパーが思いの外よく動いてくれたので安心した。



 時間は16時だ。僕らは特に何もすることがなくなったので、適当に商店街を回って暇を潰したら、宿で泊まり、一日を終えた。











 あとがき


 自然の中で自生する野菜はまとめて「山菜」と表すそうです。


 山でも林でも、食用のものは全てそれに当てはまるとのこと。


 春先から初夏にかけてがシーズンとされているらしい。


ちなみにたけのこ、ワラビ、フキ、ゼンマイ、ウドなどが代表的なものらしいです。


美味しそうですね。


 それではまた。

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