第13話 クエスト生活〜スライム狩り編その2〜
1節 苦労の車の山登り
「んで
「どうしようねぇ。こんなデカイと持って帰るのも一苦労だし」
今僕らはとても迷っている。
このでっかいファイアスライムを、倒したはいいけど持ち帰りをどうするかということに。
車まで持ち帰るにはめちゃくちゃ重いし。
「とりま車持ってくるか」
「そだね〜」
ということで車に戻る。
10分後
「着いたぁ〜」
「んじゃ持ってくから邪魔な草とかあったら切ってくれ」
『りょ〜かい』
ミラー下の重いクランクハンドルを回す。この操作にももう慣れたものだ。次第に回転数が上がって、エンジンが起動する。
パッパッパッ!ガラガラガラガラ
しかし燃料計が一向に減らないのはなぜだろうか……
速度は山だし人がついていくので1速のままで。ゆっくり山道を登っていく。
曲がりくねった山道に、木々の隙間から光が刺さる。その光に、宙に舞う塵がくっきりと境を作る。
そんな上の方ばっか見ていたら危ないので真正面を見る。
接触しないように気を付けながら、二人が道にはみ出している草を切っていく。
そしてしばらくするといきなり何を思ったか山に垂直になるように進むものすごい急坂がある。
めちゃくちゃゆっくりだが思いの外デカい車な割にすんなり登れていた……いた……?
「止まってー」(睦月
「どうすっかねえ」(朝凪
真正面には道を挟むように太い木が生えている。進もうとしたら多分塗装が傷ついいてサイドミラーとクランクがもげる。
「横から回り込めない?」(如月
「いやここ結構な坂だぞ?勾配35度くらいあるだろここ」(朝凪
「なんでそんな正確にわかるわけ?」(睦月
「運転席の端っこに傾斜計ついてた」(朝凪
「すげーなその車」(睦月
「まあだいじょーぶっしょ。確かディーゼルってトルク?とかいうのがでかいんで
しょ?ならいけるいける」(如月
「んなこと言ったってな・・・頼りすぎはダメじゃん?こいつバカでかいし」(朝凪
「そういやこれ普通のやつと比べたら超デカイんだったわね」(睦月
「んー……あっそうだ」(朝凪
「どしたん?」(如月
「昨日だか一昨日だかにローギアなるボタンを見つけたんよ。普通のギアレバーより速度を遅くできるボタン」(朝凪
「遅くなるとどうなるの?」(睦月
「パワーが上がる」(朝凪
「んじゃ使お」(睦月
「おけ」(朝凪
ローギアのスイッチを入れる。
「んじゃ行ってみよー」
クラッチをつなげて小道を外れ、ただの草しかない所を登る。
ガタガタと揺れる上視界が斜めっている。超怖い。
ついでにエンジン音が小さくなりだんだん遅くなっていく。
…………
「あれ?エンジン止まった?」(睦月
「そだね。エンストした」(朝凪
「どーしよ……」(睦月
「まずさ、この状況が問題だよね」(朝凪
どうなっているかというと、30度超えの傾斜に対して平行に、要するに横に這うような向きに停車している。
まずい。何がっていうといろいろまずい。
「ローギアより遅くできないの?」
「流石にできない……」
如月が運転室に乗り込んでくる。
「ん?この危なそうなボタンなに?」
「あーそれは……あそれ使えばいいじゃん」
「これ、エンジンの出力上限を解放できるんよ」
「なにそれすごそう」(語彙力死亡)
「じゃあとりま使ってみるわ」
運転室に入り、クラッチを外してからもう一度エンジンを起動する。
ガラガラガラガラ
起動自体はする。
そして、ローギアボタンを押してゆっくり慎重にクラッチを繋ぐ。
すると、普通よりかなりゆっくり動き出した。
そうしたら、ハンドルを登る方へ向ける。
するとそれでもエンジンの音がだんだん低くなっていく。
カバーを外し、押す。
グォァァァァアアン!!
ものすごい音を上げて
ミラーから後ろを見るとものすごい煙が上がっている。
流石に機関車ほどではないが、車から出ている煙だと考えるとだいぶ濃い。
オーバーヒートでおかしくなる前に登るため、すかさずクラッチを奥まで繋げる。
流石に少し下がるもののそれでも止まることなく、ぐんぐん坂を登り出した。木が出てきたら避け、ある程度進んだら木を掻い潜り道へ戻る。
戻ったら
冷却水温度計を見ると、100度を超えるくらいまで上がっていた。あと2分くらい回していればオーバーヒートしていただろう。
水温が下がるまでは出力を下げて、水温が下がったら出力を上げ坂の1番上まで登りきる。
ちなみに30分くらいかかった。
2節 スライムの積み込み
「よっしゃー抜けたー!」(如月
「やー疲れたね」(睦月
「だなー」(朝凪
「それじゃあスライムのとこまで持ってこ」(睦月
「おけ」(朝凪
後ろの座席に姉妹を乗せ、スライムの所まで持っていく。
「これなんか入れ物とかあんの?」(如月
「あー……」(朝凪
「そいえばないねー」(睦月
「あでも灰色のシートなかったっけ?」(睦月
「じゃあそれでいっか」(朝凪
スライムのところまで着いたら一度止めて、馬鹿でかい貨物室の空きスペースをいい感じにシートを広げて防水空間を作り、そこにスライムを入れることにする。
「よーし入ったー」
「んじゃあ適当に笛で矢矧と時雨呼ぶかー」
「だねー」
3人で全力で笛を吹く。
ピィィィィィィイ!!
山に大きな甲高い笛の音が響き渡る。反響はすぐに止まり、10分とかそれくらいした後、矢矧と時雨がいくつかスライムを持って帰ってきていた。
3節 ビレノートへ
「うわこんなの狩ったのか?」(矢矧
「すごいですね……」(時雨
「とりあえず多分大丈夫だと思う」(朝凪
「んじゃトランク閉めるよー」(朝凪
運転席へ入りエンジンを起動する。
「一応如月スライムの監視しといて〜」(朝凪
「りょーかーい」(如月
「あ、これまたあの急な道下らないとかなあ……」(朝凪
「?道ならさっき広めの道ありましたよ?」(時雨
『え?』(睦月・如月・朝凪
「ちょうどこの車の真正面に山と森に挟まれた木が生えてない場所あるだろ?あそこが坂道になってるんだよ」(矢矧
『…………』(同3人
「なんのためにわざわざあんな道通ったんだろ……」(朝凪
「それなぁ〜……」(如月
「まさか、あの狭くて急な方の道でこれ持ってきたんですか?」(時雨
「うん」(朝凪
「30分くらいかかった」(睦月
「あ〜・・・お疲れさん」(矢矧
「ちくしょう」(朝凪
僕はめっちゃ通りやすい方の道を下ってビレノートへ車を走らせた。
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