お金稼ぎと街での生活

第12話 クエスト生活〜スライム狩り編その1〜

 1節 金欠転生者のクエスト探し



「うーん」


「何かいいものはありますかね……」


「どれもまだ難しそうなのばっか」


「あ!これいいんじゃない?」


「これならいいかもな」



 僕たちは今掲示板でクエストを探している。


 大体のクエストの難易度は高いやつだ。だがなんかめっちゃゲームでよく見かけるようなクエストもいくつかあるので、そういう僕らでもできるようなクエストをやっていくことにした。



「みなさんは駆け出し冒険者の方ですか?」


「ええまあ、そうですね」



 突然案内所のような場所にいる人に声をかけられた。



「それなら、250へレトほどで5人分、お互いに危険を知らせられる笛を買えるのですが、買っていきませんか?」


「うーん……ねぇどうする?」


「危険を知らせられるってのは大事だろうし、買っておいた方がいいんじゃないか?」


「私も同意見です」

「私も」「アタシも」


「じゃあ、お願いします」


「ご購入ありがとうございます」



 なんか強引なセールスに遭って金を払わされた気がするが、ちゃんと物は渡されたので怪しいものじゃないだろう。



 それじゃあまずは、『スライム狩り』のクエストからだ。



 2節 気分は冒険者、実態はただの自由人フリーダム



「割と遠くね?」


「それな」



 最初はスライムを倒すクエスト。



 量に応じて報酬の量が変わるらしいので、適当にたくさん取って貨物室に積み込むことにする。でも割と距離が遠い。出発地からここに来るまでの途中で見た岩山の所まで行く必要がある。



 とりあえず適当に武器を積み込んで、いつものようにエンジンをかけて向かう。



 適当にフォークミュージックをかけながら、雑談しながら。



 やっぱりこういうのは楽しい。無限に草しかないから近場の景色は微妙だが。



 それでも遠くを見れば、巨大山脈とか蒸気都市とかが見える。



 友達と話しながら、そんな世界に思いを馳せる。




 あの山脈はどれだけ標高が高いんだろう?




 あの都市はどれだけの大きさなんだろう?




 この世界にはどんなものがあるんだろう?




 まだ何も知らないことばかりで、しばらくは退屈しないだろう。



「あーあれじゃない?」


「……あーあれっぽいね」


「それじゃあ適当なとこに車停めて行くかあ」


「だねー」



 3節 岩山の中の小会議(?)



「それじゃー行くかー」(矢矧


「あ、でもなんかスライムにもいくつか種類があるみたいですよ」(時雨


「ゲームかよ」(矢矧


「えっと、順番に読み上げますね」(時雨


「ほーい」(朝凪


「最初に、スライム族は大きくなるほど強くなるらしいです。それではそれぞれ解説します。

 まずブルースライム。このスライムは1番よく見かける一般的なスライムで、あまり強くないそうです。

 次に、ファイアスライム。炎属性のスライムで、火炎を飛ばして攻撃してくることもあるそうです。着弾した箇所はそこから燃え広がり大火災になる、ということはなくその場でしばらく燃えたら消えるそうです。

 次に、サンダースライム。雷属性のスライムで、感電させてしばらく動けなくさせたりすることができるようです。

 最後に、ウォータースライム。ブルースライムに比べて濃い青色が特徴で、様々な効果をもたらす水を飛ばして攻撃してくるそうです。木にも傷をつけることができる鋭い水や、周囲を泥化して相手を動きにくくさせる水など、多種多様なようです。

 主に出てくるのはこの4種類で、他にも各属性の色に応じたスライムがあるそうですが、これら4種以外は特定の地域にしかいなかったり、レアだったりするそうです」(時雨


「長く解説ありがとう。じゃあ、それを参考に探してみるか」


「だな。すでに、ブルースライムとか見えてるけどな」


「それじゃあ、それぞれ倒してくかー」


「ほーい」「了解」「わかりました」「オッケー」



 4節 思いの外楽しいスライム倒し



 適当に5人それぞれ散らばって倒していく。



 僕はなんとなく小道が整備されたような岩山へ登ってみる。山といってもそこまで大きいものではなく、多分デカくて高さ20mとか30mとかくらいだと思う。



 もし敵がいても大丈夫なように、片手に剣を持って登っていく。



「お、いた」



 早速ブルースライムっぽいのを見つけた。思ったより小さくてなんか可愛い。サッカーボールくらいだ。



 ブルースライムは特に攻撃方法は言ってなかったからどうやって攻撃するのかと思ったら体当たりのようで、定期的に足にぶつかってくる。



 でも、巨大ならまだしもサッカーボールくらいなので痛くも痒くもなく、本当にただぶつかってきているだけだ。



 でも敵なので剣で真ん中にあるコアらしきものを切る。すると動かなくなった。



 頭の中で『うわこいつサイテー』とかいうクラスメートの声が聞こえてきた気がするが放置する。適当に道に沿って登っていくと、今度は直径1メートルくらいのでっかいファイアスライムが出てきた。



 これは割と面倒そうだ。



 スライムなので特に喋ったり吠えたりとかはしないらしく、無言でこっちへ近づいてくる。その間5メートル。



「っ!?」



 さっそく火炎が飛んできた。割と回避できるくらいの速度だ。でもその代わりたくさん飛んでくる。



「ひぇぇ怖っ!」



 頬の近くを掠めてとてつもない熱気を感じた。早めにやらんとこれ体力が終わる。見たところ5発撃つと3秒か4秒くらい間があるようだ。その隙を見て近づき攻撃する。



 だが、剣を刺しても今の状態じゃギリギリ剣身の長さが足りなくてコアを傷つけられない。



「さぁてどうするかね」



 今持ってる剣の重さは大体1キロくらい。それなら。



 距離を取って、片手に構えて。大きく振りかぶって、



「そいやぁっ!!」



 全力で投げる。すると、



「あああぁぁぁぁ!」



 思いっきり避けられて地面に刺さった。



 楽器運びをしていたとはいえ所詮はハンドボール投げ14メートルの雑魚。



 そう簡単に成功するはずもない。



 そして頭にドヤ顔で煽ってくる如月が浮かんできた。



 すぐにその虚像をぶん殴ると、とりあえず考える。



「剣は刺さってるし、回収しても投げる前からボロボロだし……」



 んーこれは困った。非常に困った。どれくらい困ったかというと吹奏楽コンクール本番当日にドラムの大事な部品がぶっ壊れたのと同じレベルで困った。



「あっそうじゃんなんのための笛だよ」



 全力でホイッスルを吹く。



 ピーーーー!!!



 細く甲高い高音が山に響き渡る。そして誰かが来るまで、近くの大木の陰で身を潜

 めることにする。





 5節 無計画な朝凪アホの救出作戦



 ピーーーー!!



「お?なんだろ?」


「なんだろね?」



 アタシたち吾妻姉妹は岩山近くの平原で適当に小さなブルースライムとかを狩っていた。ら、なんかすごいでかい笛の音がした。



「どーする?」


「いや行くしかないでしょ」


「だね」



 アタシたちは笛の鳴る方へ走る。道中の敵はめんどくさいから全部睦月ねーちゃんに任せて先へ先へ走る。




 4分後



「おお!如月じゃん!」


「全くアンタは何してんの?なんか剣ないし」


「あー剣はな、あっちにある」



 指をさされた方を見ると、なんかでっかいファイアスライムと突き刺さったブロードソードが見えた。



「要するにぶん投げて外したってこと?」


「そゆこと」


「アホか」


「サーセン」


「んー……じゃあこれ使って!」



 アタシは背中の鞘に仕舞っているツヴァイヘンダーを引き抜いてあさっちへ渡す。



「いやなんでやねんあんたが使えや」


「やだよ」


「洞窟のあれはなんだったん?」


「んなもん知らんわ」


「ええぇぇー……」




「ええぇぇー……」



 とりあえず救援が来るや否や両手持ち大剣ツーハンデットソードを渡され た。



「マジで僕がやんの?」


「そーだよあんたこの5人のリーダーでしょ」


「いつの間にリーダーになったんだよ……」



 んでまあずっとこうしてる訳にもいかないので立ち上がる。



「んじゃ頑張ってねー」


「投げやりだなあ」


「あんたが蒔いた種なんだからあんたが摘みなさいよ」


「いきなり辛辣っすね睦月姉さん」


「私はあんたの姉じゃないです」


「へいへい」



 大木の陰から出て敵を見る。



 敵がこっちに気付き、10メートルとか15メートルくらい先からゆっくりやってくる。



 僕は柄を両手で持ち、後ろに持ってきた状態で走る。



 近づくと、火球がスレスレを飛んだり地面に当たったりで体がブレる。



 剣身の長さと重さを利用して、足を軸に回転し、スライムを攻撃する。ゲームでよく見るような必殺技的なやつ。



 そして、視界はグルグル回っているのでわからないが、パキッというおそらくコア

 が割れた音がしたので、多分倒した。



 自分でもできるかわからなかった技を決めたはいいが、止まり方が……ぁぁ……



「もうどうにでもなれぇ!」



 膝を曲げ体を下に、剣を上にするように思いっきり体を地面につけた。



 まだ回る力が残っていて回っていた方向に体が倒れ込む。



 全身がめっちゃ痛い。特に背中と後頭部。真横の視界に、駆け寄ってくる吾妻姉妹が見える。



「大丈夫?」


「だいじょぶそー?」


「多分大丈夫だと思いたい」


「実のところは?」


「多分平気」


「ならいいか」



 そう言い剣だけ回収して狩りに戻ろうとする睦月と如月。



「すいませんやっぱ体痛いんで助けてくださいおねがします」


「全く男のクセに情けないなあ」



 両手を上げると二人で引っ張り上げてくれた。



「うわ案の定背中めっちゃ汚れてる」


「ですよねー」


「払う?」


「お願いしたい」



 そう言うと背中を全力で引っ叩かれる。



「あちょまっていたいだいぃぁぃ!」


「だってお願いしたのアンタじゃん」


「そんな強いとは思わんじゃん!」


「文句言うなし」


「すいませんでした」



 なんでこういう所だけは似てるのかとても気になる。



 いつもは真反対って言えるくらい違うのに。ちくしょう。

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