第5話 楽しい休日と相談

 洋服選びは、すごく楽しかった。自分じゃ選ばないのを選んでもらって試着する。その中で予算内の一着を買う。

 スカートにするかトップスにするか悩んだけど、選んでもらったスカートに合わせるトップスを持っていないからトップスにした。

 そのあと、ハンバーガーを食べに行った。

 友達との買い物、ランチ、そしてこれから行くカラオケ。全部が初めてのこと。

 まだ、みんなのことをよく知らないから、会話に入りにくいこともある。でも、束本さんは置いてけぼりにしない。そんな感じだから、空気が穏やかで居心地が良い。

 見た目が派手だから話が合わないかも、なんて、ほんの少し不安だった。

 同い年だから、それを気にするのがおかしいのかもって、束本さんを見ていたらそう思う。

「ハルミは、カラオケ行ったら、どんなの歌う?」

「アイドルの曲とか、アニメの主題歌かな?」

「声がかわいいから、合ってそうだね。ツカっちは、けっこうハードな歌選ぶよね」

「そうだね。カッコイイ歌が好きだから、歌うのもそうなるよ」

 みんな、カラオケに行き慣れてるんだなあ。

 ゆかりたちと遊ぶとき、コンビニでお菓子を買って、ゆかりか絵美の家で食べながら喋るだけだった。

 都会と田舎の遊び方の違いがあるんだ。これからは、お小遣いの使い方がかわっていきそうだと思った。


 カラオケに場所をうつす。

 フリードリンクで、それぞれが好きな飲み物を選んでいたら、

「バスのとき、何か言いたげな雰囲気だったじゃない? カラオケ終わってから、ハルミの都合が良ければ、ウチに来る? 帰りはお父さんかお母さんが送ってくれると思うんだよね」

 束本さんが、小声で言ってきた。

「うん、聞いてもらいたいことがあるよ」

 私がそう言うと、束本さんは頷きながら「わかった」と応えた。


 カラオケを二時間楽しんだあと、束本さん以外、

「GWでお金がいるから今日はこれ以上使えないよ」

と言って、その場で解散した。


 束本さんが、「こうなると思ってたんだよ」と笑っている。

 バスに乗る前に、束本さんのスマホを借りて、お母さんに連絡した。

 友達の家に行くから遅くなるかもしれないこと、帰りは友達のご両親が送ってくれるということを伝えたら、特に何も言われなかった。

 友達ができたことで安心したのかもしれない。

 バスを待っている間、束本さんはカラオケで撮っていた写真を見せてくれた。

 笑顔の写真がたくさんある。

 こんな顔して笑ってるんだ。照れくさいくらい、口を大きく開けている。

「ハルミが楽しそうで良かった。無理してるんじゃないかなって、少し、心配してたんだ」

「無理してないよ。こんなに笑ってるのが証拠だよね」

「そうだね。ハルミが、こんなに大きな口開けて笑うとは思ってなくて、びっくりした。もうすこし控えめというか、おとなしい子なのかと思ってたんだよ」

 束本さんは、ふふっと笑う。

「あ、あのね。話って、前に住んでた町のことなんだけどね。そこでの友達とのことでもあって」

「うん。それ、私が聞いても良い話なの?」

 そこでバスが到着した。

 私は「束本さんの意見を聞きたい」と言いながらバスの座席に座る。

 どこから話したらいいのかな。

「さっき、歴史のある町の話をしていたから、束本さんは歴史の話、苦手じゃないんだよね」

「そうだね。家族の影響もあるけど、好きだよ。歴史の勉強するのは楽しいからね」

「歴史がないと思われていた町が、実はいろいろ隠されてたとわかることって、そういうことは珍しい話なのかな?」

 抽象的な話で何が言いたいのかわかりにくい話だと、自分で話しながら思っていた。

 これは、キューピッド樣のことやおじさんの話もしないといけない。

 今は、発掘作業も始まってるようだし、問題ないよね。

「いわくつきの場所なら、いろいろ隠されたままのことはあるかもしれないかなあ。史跡がなかったり、出土品が出ていない場合だったとしても、手紙――当時の朝廷や公家どのやりとり、なにかの形でその土地に関するものは、どこかに必ずあると思うんだよね」

「隠さなきゃいけない理由がある場合、手紙があっても誰も表に出さないって、あり得るのかな? 呪いがあるから出さないとか、そんな理由があったとしたなら……」

 束本さんは、私の言葉を真剣に聞いてくれているようだった。

「呪い……かぁ。それならあるかもしれないよね。昔の人は信じていただろうから」 

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いつかきっと、わたしたちは。 香坂 壱霧 @kohsaka_ichimu

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