第45話 『ヤンキープリンセス』/助手席の異世界転生

「もしも異世界転生するなら、どの時代の誰になりたい?」

「そうねぇ、ビクトリア朝のプリンセスかしら」

「令和の今も、君は僕だけのプリンセスさ」

「うれしいわ」


 キャッキャうふふのうれし恥ずかし初ドライブデート。

助手席に君が座っているだけで、いつもの景色も輝いて見える。


 そこに不届き者が現れた。

ウィンカーを出さずに強引な車線変更で前方に割り込んできたんだ。

ビーーーーー!

耳をつんざくようなクラクション。


「おんどりゃあ、なめとんかワレ!」

「え?」


 北関東出身のプリンセスが、なぜか関西弁で捲し立てる。

ブルブルと震えが止まらなくなる僕。

辛うじて声を絞り出す。


「ト、トラブルになるといけないから……や、やめよう……」

「あ゛!?」

「す、すいませんっ!」


 きっと、この助手席は異世界への扉なんだ。

僕の彼女はビクトリア朝へワープしてしまったんだ。

そして、なぜか入れ替わりで昭和から令和に転生した浪速のヤンキーが座っている。

そうだ、そうに違いない。

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410字のショートショート集/世にも奇妙なお題で創作 想田翠/140字小説・短編小説 @shitatamerusoda

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