第5話 まさかの再会

「ひ、久しぶりだね」

 今俺の目の前には、小学生の頃は腰まで届くサラサラな髪の毛だったのが、肩までのショートになっていて、あの時にはなかった女性的な魅力があって、やっぱり目はぱっちりしていて、笑顔が可愛い。なんか、昔を思い出してたら、懐かしいな。

「久しぶり。元気にしてた?高校もどこ行ってるのかわからないし」


「そうだね。。。中学のときあんま話せなかったしな」


過去に話せなかったことが頭に思いめぐるからか、今を逃したらいけないと思ってしまう自分がいる。それになんか、もはや緊張なんかなくなった。


「春奈ー中の方手伝ってー!」


「あ、はい!今行きます。それじゃ、また」


「まって!」


俺は今逃したら今度こそ二度と会えないんじゃないかと思った。もう後悔はしたくない。そのために高校でも頑張ってるんだ。


「バイト終わるとき、また会えないかな。。。」


我ながら気持ち悪いか。。。たまたま会った知り合いにいきなりまた会いたいなんて言われたら、ちょっと恐怖かな。


「いいよ。じゃあ17:30分に終わるから、その時に」


「!!。。。じゃあ、また!」


「うん。じゃあまた」



俺はコーヒーとクッキーを受け取って一人用の席に座る。たまたま、二席しかないソファー席が空いていたため、そこに座る。そこだけ椅子の向きがガラス窓の方に向けられているので、外の風景が眺められる。かといって駅の改札口の真横だし、一階だから外に見えるのは一部分だけ連なる建物や、目の前を通行する人くらいだが。

 俺はその中でも遠くの空や山は見えるので、山も減ってるなぁと思いながら、先ほどのことを思い出して思わずコーヒーを多めに一口頬張る。


「んにゃ。やっぱりちびちび飲まないとまだ苦手だな」


 俺はケーキのような、とても甘いものは苦手だ。なにより、いろんなものを混ぜ混ぜしてるパフェみたいな食べ物は考えられないという思考の持ち主だ。よってコーヒーに牛乳や佐藤を入れるのはもってのほかなのだが、かといってストレートはまだ俺の口には早すぎたのかもしれない。まあクッキーを頼んでおいて正解だ。


「てかやばいよ。。。心臓バクバクだよなんで運命とはこんなにも奇妙なんだ。んんんん心頭滅却!は、そうだ。こういう時こそ遺言書のことでも考えよう!。あー、、、確か公正証書遺言と自筆証書遺言があって、公文書扱いされるのが前者で――――ってなんかこんな場所で言うことじゃないよな。いやでもやっぱりサスペンスみたいに隠されない遺言にするには前者だよな。いや、後者で法務局にあずかってもらうのも手か。。。。。。だめだ片隅で緊張がはびこってる」


 春奈とは中学一年までずっと同じクラスだったが、中学校に進学したことでコミュ障発症したために、あまり三年間話さないまま卒業まで迎えたのだ。それでも覚えててくれるとか、神やん。





 時刻が午後5時を迎えた。俺は乱闘の星というゲームのショップの無料報酬を受け取ってまたスマホをテーブルの上に置く。高校に入ってバタバタしてたからこうやってゆっくり過ごすのは久しぶりだなと、優雅な気持ちに浸ってすごしていると、約束の5分前になった。


「おまたせ、由良」


そうやってはにかみながらやってきた彼女は、先ほどのショップの服から私服に着替えていた。春奈の私服は、小学生ぶりか。。。可愛いにプラスで綺麗があるのが昔との違いだろうか。


「こっちも、コーヒーとクッキー美味しかったよ」


「それはお店が作ってるやつだから私は関係ないよ?」


「春奈が渡してくれたから余計美味しくなったかもね」


「あはは、それならなによりです。ところでさ、ちょっと寄りたいところあるんだけど一緒についてきてくれるよね?」


「もちろん。久しぶりだしね。近況報告でもしながらいこうか」


「そうしよ」


こうして俺たちで、春奈の行きたいところに行くことになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

清水由良は一歩踏み出せない 遊英 @ANOTHERstory

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ