第16話 最強の殺し屋クロは、特訓をする

 「やっとだねレイ」


 エリスは自室のソファーに座っているレイにそういう。エリスは緊張をしていた。初めての学園島の公式戦そしてその公式戦は最悪の場合死ぬこともある。そんな試合に初見で出場して緊張しないはずが無い。


 「まさか私のパートナーがスミさんだなんて。びっくりしました」

 「よ。よろしくお願いします……」


 驚いた少女はおなじみのミシェラ=グルードだ。そしてそのパートナーはアルスアカデミア学園序列一位のスミ=アルバードだこの二人は最近仲良くなったらしくて試しにミシェラがスミに聞いたところ、すんなりと了承を得たらしい。


 「で、新入生限定のドミニオンの出場者は私たちとミシェラ達だけだね」

 「あ。あの……私レイさんたちの特訓付き合いたいのですけど……」

 「俺たちの特訓? そんなの対面で特訓しているからそれでいいなら」

 「はい!」


 スミは小柄ながらその身に宿る豊満な胸がジャンプで揺れながらうれしがっていた。


 「で、では最初にエリスさん対ミシェラさん。スタート!」


 開始のゴングがスタジアムに広がる。ミシェラは自身の身体能力を向上させてエリスの元へダッシュした。それに対応するようにエリスがカウンターを仕掛ける。


 「光は消える!《ライトシャフト》」


 ミシェラの足元から複数の魔法陣が出てきて強烈な光が放たれる。ミシェラの視界はふさがれた。そのすきに横にスライドしたエリスは攻撃魔術をつかう。


 「光の刃よ……的を射ぬけ《ホーリーランス》」

 「うわぁ!!」


 遠くに吹き飛ばされるミシェラに追い打ちをかける。


 「聖なる光を――なに!」


 吹き飛ばされたミシェラはいちかばちかで、カウンターを使った。


 「アップドラフト!」


 ここでレイとスミはミシェラの行動に大きくうなずき感心した。


 「レイさん分かりましたか?」

 「ばっちりだ」

 「ミシェラさんは魔術ではなく武術の特性を生かしたカウンターを取りました。基本魔術は詠唱をしないとロクに魔術を撃てません。例外はあるけど……」

 「例外とは?」

 「それは詠唱なしで撃つことができる技術で無詠唱魔術と言います。まぁそれはおとぎ話の世界ですけど」


 レイには心当たりがある。その無詠唱を得意とするものを、まあ世間には広まっていたいのだが六色光の青ミルが得意な技だ。そしてレイ自身も使える。


 「そして武術は魔術と違い体で覚えるため、詠唱を必要としません」

 「え、あぁ」


 レイは色々考えており、全く話を聞いていなかった。そうしていると勝負は決まった。勝者はミシェラらしい。おそらくだがカウンターがもろに食らったのだろう。


 「では次の試合はスミ・アルバート対レイ!!」


 ゴォーンと言う音がスタジアムに響きわたる。そしてミシェラやエリスには見えなかった。その斬撃は……ただレイにはもう見切られていた。そしてレイはその斬撃を軽く避けるがふと思い当たる。


 (俺は正体を隠さないといけない……ここで勝てば、ばれる)

 「行きますよレイさん!」

 「おう」

 「つるまい!」


 四方八方から降り注ぐ斬撃の雨は通常の者ならとっくに斬られてもおかしくないそんな速さの斬撃がレイを襲うが。レイには遅く見えたそして見切っていた。では避けるだけだが。レイはそれを避けない。


 「う、うわぁ!!」


 レイは胸元の紋章を斬られて後方に倒れた。そして決着がつく勝者はもちろんスミだ。


 「二人とも凄いよ」

 「本当に凄い!」


 二人は褒めてくれた。だがスミは何か不服そうだ。とりあえずレイは男子更衣室にもどって着替えを済ませたあと、ロッカーにしまっていた自分の連絡端末に一件通知が来ていることに気が付いた。俺は更衣室をすぐ出た先の階段裏で通話を始める。


 「はい、こちらナンバークロ、レイです」

 「あらレイちゃんでてくれたんだね!!」

 「おいそれはどういうことだ? なんでお前の声がミレイユの電話から出てくるんだよ」

 「だってだってレイちゃん私の端末からは出てくれないじゃん?」


 俺はぐうの音も出なかった。


 「でなんだリリーお前が俺に端末で連絡するとは?」

 「レイちゃん気になった子でもいるの?」


 はいあきれた、もういいです。こいつはだめだ。けどなんでそんな急に気になる子でもいるのか聞いてきた。でもどうせあいつの事だから友達できた?とか恋人できた?とかそこらへんだな。そう思ったが予想は外れた。


 「違うよ! それも今度聞きたいと思っていたけどあの事だよ!」

 「あぁ、そうかあの事か……。それならあいつらは見てみる価値があるな――」

 「――レイさん何してるんですかこんなところで?」


 端末機器で通話していたレイの背後から聞き覚えのある声が一つした。レイは急いで通話を切って言い訳を考える。


 「少し旧友とね? 俺は地元の友達を置いてここに来たから」

 「あ~そうなんですね。それは失礼しました。あぁそれとさっきなんでわざと胸の紋章を斬られたんですか? 私はそれが不服です」


 レイはやっぱりそうかと考えた。あの子はとても強いはっきり言って六色光の傘下に入れる腕は確かにある。でもやはり何かが足りない。それといまこの子に正体がばれたらまずい……。そうレイは考えたのであった。


 

 


 

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