シータ=スコール

 5人、生きていた奴らの人数だ。

そして今名前が分からないと不便なので一人一人名前を聞くことにした。


「私はエヴェリーナ」

 最初に答えたのはこの中で最年長に見える女。

そして人間に復讐を誓っていた女だ。

年齢は20歳前半くらいだろうか。髪は金で瞳の色は青。

顔立ちは整っておりスタイルも良い美人と言える。


「わ、私はミーニャ」

 次に答えたのは10代後半の女。

白髪で少しおどおどしている。

身長はやや低く胸が大きい。


「あたしはルウ、なのよ」

 赤紙の髪をポニーテールで結んでいる。

明るそうな声ではあるが、怯えているようだ。


「……サーシャ」

 最後に小さい声で答える女。

青髪で髪は短く切りそろえられている。

目は眠たげでどこかやる気を感じさせない。


「さっき呼ばれた通りノアよ」


 これで全員の名前を聞いたことになる。

後はこれからの事を話すか。

「さて、私の目標とそれに至るまでの道のりを示しておく、でもその前に」

私の体内時計はもうすぐ朝を示している。

きっと『アリュー』が私の不在に気づいているはずだ。

そして予感は当たる。


「な、なんですか、これ?」

ミーニャが怯えたようにこちらを見る。

「私じゃない。でも敵でもない」


 それは何の音も無くどこからともなく現れた。

見た目は光の玉ようである。

「アリュー」

「……どこ行ってるの?」

「色々あったの」

「……ん、後ろの子達は?」

「目的の仲間たち」

「……君がそうゆうなら僕は気にしない」

 落ち着いた声でそう私に許しをくれる。


「それで、その子たちが仲間?」

「うん、後で詳しく話す」

「分かった」



「あの?ちょっと良い?」

「?何だ。エヴェリーナ」

「それは、もしかして精霊?話してるの、いやでも何で話せているの」


 ?


「アリュー、どうゆう事?」

「あのね、前に話したでしょ、僕みたいな精霊は人間には見えない、人族でもエルフくらいしか姿を見ることができないって」

「そうだっけ、ああエルフでも話すことは出来ないんでしょ。思い出した」

 ん?という事は。


「……エルフなの?」

「気づいていなかったのね」

 エヴェリーナは呆れたような声を出す。

 エルフなんて見たこと無かったから分からなかった。

 まあ人間では無い、その意味が分かった。


「もうそれはいいわ、こっちの質問に答えて」

「……私は獣人じゃない。そう答えれば良いか」

「じゃあ、貴方は一体」


 そうエヴィリーナが私に聞くと答えたのはノアだった。

「彼女はフェンリル。それが彼女の正体」


「フェ、フェンリル…魔獣?」

 一同驚きを隠せない様子だ。

「……そういう事だ」

「まあもう何でもいいわ、それより」

目的を知りたい、まあ答えるつもりだ。


「私の目的はさっき言った通りだがすぐには実行に移せない。まずその国は、…その国は…何だっけアリュー」「全く、ちゃんと覚えていてよ『原勇の国ノアール』だよ」

「その国は『原勇の国ノアール』」

 その国の名前を聞いた途端皆の顔が険しくなる。

「原勇の国ノアール、本気で言っているの?」

「本気だ、嘘を言う意味が無い」

「勇者を相手にしても勝つつもりでいるの」


 勇者、恐らく私が先ほど戦った男だろう。

勝つつもりでいる、とは言い切れない。あれは規格外だ、勝てる気がしない。

「今は無理だ」

「それじゃあ、どうするって言うの」

「分からない分からないが。今一つ思い浮かんでいる案がある」


「それは、共食い」

「フェンリルの雌は同じフェンリルを食らうと栄養とさらなる力を得る」

「本来ならそれは自身の出産の為に使われ、力は失われる」

「だが子供を授かっていないなら話は別だ、力は失われず継続する」

これは憶測じゃない、実体験だ。5年前の冬備蓄も無い私は母親の肉を食らいその冬を生き延びた。その時、力は与えられた。それは今も失っていない。


 言葉を聞きエヴィリーナ達は少しの沈黙の時間を私に与えた。

その沈黙を破ったのはノアだった。


「それで、私たちは貴方為に何をすれば?」

 案には問題点が思いつく限り一つある、それはフェンリルは希少であり目撃も少ないだろう。

だからこそのエヴィリーナ達だ。


「情報収集をして欲しい、これからすぐは戦力の強化」

「具体的には?」

「各国々でのフェンリルの目撃情報、劣等レッサーでもツヴァイでもいい」

 劣等レッサーフェンリル、ツヴァイフェンリルはフェンリル種の別種族である。

 劣等レッサーはそのままフェンリルの劣等種だツヴァイは生涯のパートナーを決め二体で行動する。

 恐らく劣等レッサーでもツヴァイでも問題は無いはず。


「それから情報取集を行う上でのお前達の自身の強化だ」

「分かったわ、それともう一つ」

「何だ」

「名前を教えてくれないかしら」


「私はシータ=スコール」

「好きに呼ぶと良いさ」

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