13.vsアイロンゴーレム
翌朝――
「精霊達によると魔泉の近くにアイロンゴーレムが現れて困っているそうで、討伐して欲しいということです」
七山が視聴者にそんな風に説明している。
魔泉とは精霊達が魔力を補給するために必要となる泉であった。
「それじゃあ、まぁ、ここから15分くらいの場所にありますので、さくっと向かっていこうと思います」
『名無し:がんばれー』
『名無し:気を付けてー』
そうして五人は精霊の森を発つ。
◇
「いました……アイロンゴーレムです」
七山が小声で、そのように言う。
視線の先には、森の中の直径30メートル程のひらけた場所、その中央付近に体長3メートルほどの鉄の塊のようなゴーレムが佇んでいる。
【モンスター アイロンゴーレム 危険度79】
==========
【危険度:推奨等級】
70~: D級以上
80~: C級以上
90~: B級以上
Ⅰ~: A級以上
==========
「よし、相手は危険度79の強敵。舐めプはなしだ。アース・ドラゴンの二人も打ち合わせ通りに」
「了解です」
ミカゲと束砂はアンダーで無謀にも危険度75の相手に挑んでしまったが、本来、推奨等級とは"ギリギリ戦って良いライン"を示している。
例えば、B級の攻略者が90オーバーの危険度に挑むのであれば、それは死を覚悟した上での挑戦となる。
B級の攻略者であれば
80~が挑戦に適当なライン
70~が比較的安定して戦えるライン
といった具合だ。
討伐成功率でいうならば、
==========
【B級攻略者3名のパーティによる計画的討伐作戦における成功率】
90~:42%
80~:73%
70~:95%
==========
という統計が出ている。
そんなわけで、B級攻略者で構成されたSMOWにとって、危険度79は70~の中で最高危険度ということで油断ならない相手である。
ちなみにミカゲと束砂の陽炎蜥蜴との戦いは陽炎蜥蜴に逃走されているので、討伐失敗の方にカウントされるのだが、計画的遭遇でないものは統計的にはノーカウントとなる。
◇
「土の精霊よ……」
柳が囁くように言う。
技や魔法名は省略することが可能であるが、宝物の使用には雰囲気、信仰心、ルーティンといったものが与える影響が少なからずあると言われている。
技名を宣言すると、出力が1%上昇するというやや胡散臭い研究データも存在するわけだが、配信的にも映えるので、技名を言う人は結構いる。
「害なす者の侵攻を阻め……"融ける土"!」
『名無し:きたきたー、りゅーさんのノーム!』
アイロンゴーレムの足元の地面がぬかるみ、アイロンゴーレムが身体のバランスを崩す。
「いくぞ!」
そのタイミングで七山が叫び、身をひそめていた木の背後から柳以外の四人が一斉に飛び出す。
(……効いてくれよ)
一番先にアイロンゴーレムに辿り着いたミカゲは勢いそのままに重熾で一閃する。
アイロンゴーレムの体表に傷が付く。
(……よし)
流石に一刀両断とはいかないが、しっかりとダメージを与えられている様子だ。
『名無し:B級より速い特性レベル3(E級)笑』
「速いねー、ミカゲー」
そんなことを言いながら、リリィが続き、さらにおにぎり、七山と続く。
佐正は中距離タイプなので、一定の位置まで進んだところで足を止めている。
「悪いけど、手加減はなしだよ」
リリィはそう言いながら、アイロンゴーレムをボコ……ボコ……とリズミカルに連打する。
『名無し:ASMRきたー!』
『名無し:気持ちいいぃー』
このままいけるか、視聴者含め、皆がそう思った時であった。
(……なんだ?)
地面が微振動していることに気が付く。
次の瞬間には辺り一帯の地面からぼこぼこと何かが生えてくる。
「おいおいおい……精霊からはゴーレムが八体いるなんて聞いてねえぞ」
七山が嘆くように呟く。
一体目のアイロンゴーレムは広場の中央付近にいた。
そのため、五人は必然的にその近辺にいた。
つまり、五人は広場外周の地面から現れた七体のアイロンゴーレムに取り囲まれていた。
ゴ……
「「「「っっ!」」」」
広場外周の七体のゴーレムに目線を奪われていた四人は背後からゴーレムの鳴き声らしきものが聞こえ、思わずびくりと肩を揺らし驚く。
しかし四人が振り返ると、ミカゲが中央のゴーレムの首を落としていた。
中央のゴーレムはエフェクトと共に消滅する。
(やはり柔いのは首か……)
「ミカゲさん、ありがとうございます、油断しかけてました」
ミカゲは佐正の称賛に答える。
「いえいえ……でも、ちょっとまずい状況だね……」
ゴーレムは残り七体だ。
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