短編小説集

新しい公約

　「とにかく痴女が一丸となっていやらしい行為をして来るようなそんな国にしたいね」

　政治家が壇上で言った。

　報道陣は静観した。政治家が突如、狂ったようなことを口走るのに慣れているのだ。

　鼻息荒く自説を述べる政治家の元へ虚弱そうなスーツの男が近付いた。おそらく秘書とかそんなのだろう。その男は政治家の耳元でこにょこにょと何かを囁いていた。

　「なに？　そういうことを言っては問題になる？」

　政治家はびっくりしたよう言った。

　「つまりこの国の成人男子たちは突如として痴女が自らの陰茎、目掛けて突入して来るような未来を望んではいないということか………」

　ふんふんと一人、頷いた。ちゃんと教えればわかってくれるのだ。だがものの数分も経たないうちにもう反省した内容などどこ吹く風だ。

　「ぱいおつ村ってはどうかな？」

　それが新しく開発する湾岸エリアの総称らしい。

　記者の一人が手を挙げた。それを指す前にまた秘書らしき男が慌てて近寄って行った。

　こにょこにょこにょ。

　「え？　ぱいおつ村ってやばいの？　そもそも村じゃない？　じゃあなんなの？　埋め立て地？　ふーん、すごいね」

　政治家は半勃起しながら言った。自らの言葉のインスピレーションに劣情を催したのだった。言葉は湾岸エリアを駆け抜ける風と共に舞った………それから先に起こるストーリーをまだ誰も占うことは出来ない。