第41話 呼び出し(続)
俺はいったいどうしたら…。
いや、どうしたらじゃない、どうしたいだ。
俺は隣りにいてほしいと言った光君にどうしたいんだ?
…。
今の時点で俺は光君のことをどう思っているのかハッキリとはわからない。
でも大切にしたい。
俺は寄り添いたい。
この気持ちが何なのかわからなくても安心させたい。
できるだけ深刻な雰囲気にならないように
安心できるトーンで話したい。
「勝手に隣りに座って手なんて握ってビックリだよな(笑)ごめん急に。俺さ、正直に言うと自分がどういう感情で今そうしたかハッキリわかんない。
でも光君のことすごく大切に想ってんだ。これだけは言っておきたくて。
仕事とか家のことですぐに返事ができないこともあるけど、必ず返信するから。
それだけは約束。」
「…。ありがとうございます。なんだかすみません。
僕がしてることって子どもみたいですよね(苦笑)勝手にネガティブになって待ち伏せなんてして。
僕も自分のことなのに自分の感情についていけないっていうか、冷静でいられなくて。僕の行動に僕が困惑しちゃって…。」
「ハハッ(笑)なんか、俺たち似た者同士かもな。色んな経験値が少ないから、自分のことなのに自分でわからないっていう(苦笑)」
「プッ…。フフッ。」
「何だよ急に、そんなにおかしいこと言ったか?」
「いいえ、言ってません。むしろ似た者同士って言われて嬉しいです。
前に大輝さんが直樹さんのことをこじらせオヤジって言ってたの思い出しちゃって(笑)。こういうことかって。」
「悪かったなこじらせてて。」
「なんかすみません…。
あの日直樹さんのことハチワレさんと勘違いしてよかったです。
こんなに心が素直で綺麗な大人に出会えてホントによかった。」
「やめろよ、褒めすぎ。俺、そんなに善人じゃないよ。」
「本当の善人は、私は善人ですってドヤ顔で言いませんから(笑)
あの…、今日は本当にすみませんでした。
僕、直樹さんに直接言葉で大切だって言ってもらえてすごく安心しました。これからは返信遅くても安心して待てます。
ありがとうございます。」
いつもの光君だ。
そうそう、コレコレ。俺はこの笑顔を見ていたい。
「直樹さん?」
うっかり光君の顔を無言で眺めてしまった。
「次の店楽しみにしてるな。」
「はい。あとでお店のURL送りますね。」
二人で店を出ると、光君が片手の小指を差し出してきた。
「ん?」
「ん?じゃなくて、直樹さんも小指だしてくれないと。指切りげんまん知ってますか?」
「あぁ。あれね!冷静に聞くと結構パンチのある歌ね。嘘ついたら針千本飲ますっていう。」
「確かに。冷静に言われると怖いですね(笑)なんか怖くなっちゃったんで、やっぱりいいです。」
「なに?光君怖い話苦手なタイプ?俺もだよ。
ここはシンプルに歌なしで小指だけ握っとく?ほら。」
俺は光君の前に小指を差し出した。
「え?あ、それいいですね!では失礼して…。」
俺の小指に光君の小指が触れる。
「約束な。」
「はい。」
俺たちは年齢差も忘れて、まるで小学生みたいに笑いあった。
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