第9話 食後のデザート

大輝は嬉しそうにデザートメニューを眺めている。


俺はといえば脳内混乱中だ。


食事を食べ終え外を眺めながら言われたことを噛みくだく。



「俺パフェ食ってもいいか?」


大輝が嬉しそうに聞いてくる。


「俺に許可取らなくても食べていいよ(笑)」


あ…

追加注文するってことは、ハチワレ男がオーダー取りに来たら気まずい。

さっきも気づかれなかったし大丈夫か?


そう考えながら店内を見回すと女性店員と目があった。

あっ、良かった。

なぜかホッとする。


「すみません」

と軽く手を上げ店員を呼んだ。


「追加のご注文ですね?」


「はい。チョコレートパフェひとつ、コーヒーを2つお願いします。」


「かしこまりました。お済みのものはおさげしますね。」


すると大輝がニコニコしながら言った。


パフェなんて久しぶりに食うから楽しみだ!

会社の連中とか、嫁の前じゃカッコつけたくて食べたくても頼めない。

俺って小せえだろ(笑)


直樹の前なら安心して食える♪


大輝にそう言われて、何故かわからないが嬉しい気持ちがした。

誘って良かったと思った。

なんだか楽しい。


ん?

なんかモヤモヤする…

なんか。なんだ?


嫁とこの店で何度か食事したことあるけど、

"嬉しい”って感じたことあったか?


自分で自分の感情を探ってみる。


俺は自分の気持ちに引いた…


過去の彼女とも、嫁とも、食事しながらこんな感情なかった気がする。


いつもただ目の前の食事がうまいかどうか、

それだけっていうか。

興味は料理というか。


俺はなんだか怖くなって思考を止めた。


今まで自分の感情に対して、いちいち深掘りなんてしたことない。

今は食後のコーヒーに集中したい。


「お待たせいたしました」


女性の店員がサッとテーブルにデザートとコーヒーを置いた。


「ごゆっくりどうぞ」


そう言い終わると同時に大輝はパフェに手を伸ばす。


「うわぁー、超楽しみ。食べる前からすでにうまい!」


大輝がこんなにテンションあげてはしゃぐ姿、久しぶりに見たなぁ。

こいつ、おっさんだけど可愛らしい。


え?

俺今なんて思った?

違う違う。

大輝に好きってなんなのか、そんな話題した後だから、知識蓄えたから、過剰に自分の感情に過敏になってるだけだ。

そうだ!そうだよ俺。

何考えてんだ。

落ち着け俺。


脳内の独り言をかき消すようにコーヒーを飲んだ。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る