面接と試験に挑んだ二週間

 そして就労移行支援事業所に通い始めてから、半年が経ったある日のことである。

 ある企業の求人票を見つけた私は、この会社を受けてみたいと、そう強く思った。

 面接と筆記試験まで二週間程度しか時間はなかったが、私はこの会社で働いてみたいと思った。

 そう思ったら、私の勢いはもう止まらなかった。

 就労移行支援事業所のスタッフさんに「この会社の面接と試験を受けてみたいのです」と素直に相談した。

 するとスタッフさんたちは嫌な顔一つせずに、私の就職活動を支援してくれた。

 こうして、私の就職に向けた取り組みが始まった。

 時間は二週間しかなかったが、やることはいっぱいあった。履歴書を書く、面接の練習をする、筆記試験の勉強をする、スーツや鞄や靴を新調する……。

 そしてあっという間に時間は流れ、私は面接と筆記試験の当日の朝を迎えた。

 会場には支援者さんも同行しても良いという許可が下りたので、私は就労移行支援事業所のスタッフさんに同行をお願いした。

 この日の私の緊張はピークに達していた。顔が真っ赤で汗が止まらず、手がフルフルと小刻みに震える。だがスタッフさんの後押しもあり、私は面接と試験の会場で出来る限りの力を使って、面接と筆記試験に挑んだ。

 正直落選だろうと私は思っていた。初めての面接、試験で受かるだなんて、私には到底思えなかったのである。

 だが数日後、私が会社から連絡を頂いた際の採用者様のお返事は「採用です」だった。

 この瞬間私はとてもハイになった。そしてポロポロと嬉しさの余りに涙を流した。

 これが私にとって初めての就職だった。

 そしてこの会社に私は障害者として入社し、今現在、二年働いている。精神障害者の採用は初めてだったらしく、最初、会社の方々もかなり戸惑っている様子だった。 

 だが次第に人間関係を構築していくと、コミュニケーションが段々と取れるようになっていった。

 会社の人々は、今では私のことを特別扱いせずに、普通に扱ってくれる。今では皆が私に少しずつ簡単な仕事を一人で任せてくれたり、休憩時間にお菓子を分けてくれたりする。

 そして時に仕事上で私が皆のサポートを必要としている際に、相談すると、どうすればこの仕事が出来るようになるのか。会社の人々は意見を出し合って、私のことについて、真剣に一緒に考えてくださる。

 そして時には支援者さん達も知恵を出し合って、「どうすればもっとよりよく私が働き続けられるのか」を、一生懸命一緒に考えてくださる。

 家族、友人、仲間、病院の院長先生達も、まだまだ半人前で未熟な私に協力してくださる。

 その瞬間、私は本当に幸せ者だと、そう強く強く思うのだ。

「独りではない」と、思える心強さは、生活や仕事をしていく上での私の大きな糧となった。

 そして最近になって、ようやく私もやっと社会人の入り口に立てたような気がして、とても嬉しくなるのだった。

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