第12話. 愛と性と、愛

部屋に帰って来て、私は例の離島で撮られたヒキマユ黄色ビキニ画像を見ながら、二度自慰をした。


「もうユキナに罪悪感を持たずに生きよう」


 そういう離脱感がこういう行為に至るところが自分らしくて自己嫌悪になる。


一度めが余りに気持ちよくて、ついつい二度めも震える快感を味わった。二回めの盛り上がって来たとこで、コータからラインが入って来たが、勿論無視して股間をシゴキ続けた。


 ヒキマユのブラ外し俯きポーズ画像で頂点に達し、発射した後、すぐにコータのメッセージを見た。


「よかったな、これでマユリンはシンちゃんのカノジョってことで、いいよな。」

「うん、もうそうするさ、彼女がいう通り、ユキナはカレシができたってことだからオレのことは逆に心配してるかもしれないって思ったんだ。お盆に実家帰るからいろいろ探り入れるわ。」


「そうしなよ、てかさ、シンちゃん、さっきシコってただろ 笑。」

「え、なんだよ、それ。」

「だって、すぐ返してくれなかったじゃん。あれだろ、マユリンのビキニでさ。笑。」


 どうしてあいつにはこういうことがすぐ見透せるのだろう、少し不気味なものを感じながらも、特に親しい仲ではこういうのってありなのかも、と思った。ユングのいう「集団的無意識」ってヤツだ。シンクロしてるということはコータもやってたのかも、と思って笑いが込み上げた。


「で、LINEも交換して、呼び名も変えたってメッセージ来たよ、シンちゃんって呼ぶことOKになって、とっても喜んでたぜ。マユりんはオレからの引き継ぎでいいよな。さっきシコってた時、それ叫んで発射したろ、オマエ。」


 それは図星だった。


「うん、まあそんなトコだよ。オマエ、ホンット、やなヤツだよな。」

「LINEする前に手は洗えよ、スマホがベトベトになるだろ。笑」

「やめてよ、ホンット。ちゃんと洗ってますよ。」


「てかさ、コータはマユリンと別れていいの?遊びとはいえあんなカワイイ子を。」

「あ、オレ、オレはさあ、西都大のチアリーダー、ゲットしたんでそっちにいくわ。」

「え、西都大のチアって、あのハルカって子?」

「お、シンちゃん、よく分かるじゃん。」

「ホンッと、オマエってやつはどーなってんの。」


 それは今年の春、恒例の西都大が主催する新入生歓迎祭に、チア目当てで行った際のことだった。西都大のチアは露出度が高いセパレートユニフォームで、しかもカワイイ子が断然多いというコータの情報で訪問したのだ。


「オマエ、知ってるか西都大のチア、ミニスカが短すぎる上に真っ赤なアンスコがサイズ小さめでクイコミがスゲエことになっててよ。」

「オマエ、盗撮とかやったら犯罪だしな。」

「このコータ様に限ってそんな卑怯で汚ねえマネはしねえぜ、グッと来たコはすぐにゲット、最後はオレの部屋ってな。」

「そっちの方が最近は怖えよ、不同意性交なのにって刑務所行きになるかもよ。」

「まあ、見てろよ、オレは違うぜ。」


 私たちはステージのかぶりつき正面でチアの演技を見ていると、前で踊っていたコに声をかけられたのだ。


「はーい、どこの新入生かなあ。」

「オレ、オレは尚英大の国際関係学部の一年生でえす。」

コータがまず答えた。

「あなたとそっちの人もですかあ?」

「オレも、そおっーーす。」

私も悪ノリした。


「これからふたりを励ますためにダンスしまーーす。」

前の子は元気よくハイキックなど入れながら、後ろのチームを先導して踊り続けた。


「どう、元気になった?」彼女は笑顔でポンポンを膝に、腰を曲げ、顔を近づけた。


「もう、元気になりすぎちゃって、ヤバくって立てません。」

 コータが答えた。


「オレもーーっす。」


皆んなが笑いこけた。チアの子たちはポンポンを両手で叩き合わせて爆笑していた。コータの人徳だ。


美人系でショートカットのその子がハルカだった。すぐにLINEの交換が始まったのはいうまでもない。ああ、これで犠牲者がもうひとり、と思っていたのが図星となったのだ。


 私はコータのように次々と恋のゲームはできなかった。コータは最初カラダ目当てとはいえ、精神的な繋がりを重視するタイプなのだ。だから付き合いだしたらプレゼントをするし、こまめに連絡を入れて相談にも乗ってやる。私はカラダの関係から精神的な繋がりに移行することは不可能だと感じるタイプだ。


 恋愛をすると乙女のように純真一途に突き進むのだ、それは精神的な意味で。自分は大分、性格に女の子が入っている、最近はジェンダーっていうのがハッキリ男女に二分されるのではなくて、幾層にもグラデーションが存在するというが、その通りだと思う。しかし、女性的な部分があるとはいえ、私は自分の性欲が只者ではないことも感じる。


 一年生だった時、欲求不満の人妻とヤリまくったのも、お互い性欲解消のためのみだった。最初出会ったのはスポーツジムだった。


人妻は濃紺で短いトップスを着て、ボーダー柄のホットパンツを履いてウオーキングマシンに乗っていた。私は隣で同じ様にウオーキングマシンで前の動画を見ていたのだが、次第に人妻の豊満な胸と尻をチラ見し出した。尻が動くたびに模様がくねるのが堪らなくエロかったのだ。


「学生さん?」


声をかけてかけて来たのは彼女の方だった。そしてあろうことか、私は彼女の家が自分のアパートの斜め筋向かいであることを発見したのだ。次第に私たちは一緒にジムから帰るようになり、ある日、とうとう彼女の家に招待されてしまった。


 彼女の夫は商社勤務で福岡に単身赴任していた。大学の時フットボール選手でガタイのいい旦那は毎晩彼女をマンゾクさせたという。子供を作れば状況も変わるのだろうが、夫の勤務形態から言って子供は当分ムリということでずっと避妊しているのだった。


 でも夫と離れて以来、湧き上がってくる欲望を抑えられず、自慰だけでは飽き足らずに私を相手にしたのだ。


 私は、肉体だけの関係と精神的な愛の入る関係のひとつの分岐点はキスの仕方と頻度だと思った。ユキナとキスする時は、性的な感情より精神的な一体感の方が強かったからだ。だから高校の時、部屋でキスして抱きしめても、彼女の状況や将来を思ってセックスには至らなかった。一方人妻ークミーの場合はキスもひとつの性技としてしか意味がなかった。


 例えば本番中お互い口中のチュウイングガムを舌を使ってやりとりする時に極上の性的な興奮を覚えたものだ。もうひとつは射精の後、直ぐにクミのカラダから離れたいと思ったことだ。もしもセックスが愛情表現なら、もう一度相手を抱きしめてゆっくりキスしてあげるだろう。


 性交渉は恋愛の必要条件なのだろうか、私は性行為なしでも異性間の愛情は成立するものだと思う、もちろん、今の自分には無理だけど、性交渉は恋愛にとっては十分条件でしかない。精神と肉体、この二つを巡る関係の複雑さに私は戸惑っていた。


 しかし、確かに言えることはマユリンは単にムラムラする存在ではなくて、カワユクて大事にしたい、まるで花道における花との一期一会のような、いやそれ以上の運命的な存在感を感じるのだ。


 それが本物で運命的なものかどうか確定するにはまず、夏休みに郷里へ帰りユキナについてのその後を探るしかない、私はそう思い始めていた。そして高校の時、親しくしていた友人にメッセージを送ったのだった。


つづく
















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