開門6

 校舎の前、ニジ先生は地面に大きな丸を書き、その中に雲の漢字を書き始めた。

 すると、空には雲が出始めた。



「これが天空魔法、雲です。魔法陣を理解すれば、天をも操れます」



 先生は、そのまま続けて次の漢字を書き進めていった。

「続いて、雫です。シズクさんのお名前と同じですね」


 そういうと、空から小雨が降ってきた。

 まさに雫のようだ。



「そして、雷」


 雷の漢字を書くと、雷がゴロゴロとなり、校舎の避雷針に落雷が落ちた。


「更に書き足すと、靁です」


 さらに雨雲が集まったかと思うと、先ほどよりも大きな雷が降ってきた。


 シズクちゃんは、すごく怖がってニジ先生を止めに入っている。

「先生もういいよ。わかったよ……」



「魔法陣を知るからには、危なさも知ってもらわなければなりません。次は霹」


 大きさこそ劣るが、音が激しい雷が降ってきた。

 シズクちゃんは、もうダメだといった感じで小さく丸くうずくまってしまった。


「これが、龗です。」


 龍の如く、空が光って縦横無尽に雷が降ってきた。

 そんな様子に、私も止めに入ってしまった。


「先生! そろそろやめてください!」


 ニジ先生は、優しく微笑んでくれた。


「そうですね。ここまでにしましょう。これは、正しく書いているから成功します。形や書き順が違かったら、こうはならないのです。強い魔法陣を書く時は特に気をつけてください」


 そう言うと、ニジ先生は晴の字を書いた。

 青い空が広がった。



「アザナさん。魔法陣を書く専用の杖があります。これが無いと魔法陣を書いても魔法は出ません。特殊な魔法だったりすると、それにあった杖が必要です。多分、異世界とを繋ぐ扉などであれば相当特殊な杖だと思います」


 そこで私は気が付いた。こちらの世界に来た時に使ったチョークの存在に。

 あのチョークで書いたから、こちらの世界に来てしまったのだ。

 そして、そのチョークを置いてきてしまった……。


「ニジ先生、元の世界に置いてきてしまいました……」


 ニジ先生は分かっていたようで、相変わらず優しい笑顔で答えてくれた。


「しょうがないです。異世界へと帰れる杖を探しましょう」

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異世界の扉、開門! 米太郎 @tahoshi

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