第15話 天音輝夜視点(2)


「レイプ未遂、これって立派な犯罪だよな。しっかりブツまでズボン脱いで出しちゃってる奴もいるしさぁ、まぁこっちとしては相手が根っからのゴミクズの方がやりやすいし良いんだけどね」


 その男の人の言葉で、やっとこの人は私の事を助けに来てくれたんだと理解し少しだけ安堵すると共に、やっぱりさっきの出来事が頭にチラついて、完全に信じ切る事は出来なかった。

 我ながら勇気を出して、こんな場に助けに来てくれた人に対して信じ切れないのは酷いと思う。

 

「ギャハハwww なるほどなぁ、てめぇ喧嘩強いんだなぁ?だけどよぉ、喧嘩ってのは何も拳だけで決まるもんじゃないんだぜぇ!」


 男の1人がテーブルに置いてあったデンモクを手に取り、助けに来た男の人に振り下ろそうとしている。

 咄嗟に「危ない!」と声に出そうとしたが、さっきまでの恐怖で上手く言葉が出ない、もうすぐで男の人の頭に当たるというタイミングで思わず目を瞑ってしまう。


「良く、そんなもの躊躇無く人に振り下ろせるよね。一回病院で頭診て貰った方が良いよ」


「ギャァァァァァァァァァ!?!?」


 デンモクを振り下ろした男の悲鳴が聞こえたので、恐る恐る目を開けてみると、そこには倒れ込んで悶絶している男がいた。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「お、おい!」


 私を取り囲んでいた2人の男達がその光景を見て驚いたのか、走ってこの部屋を出ていく。

 残っているのは金髪の男の人だけになった、正直今起きた光景が私の頭が都合の良いように生み出した幻覚なんじゃないかと疑った。本当はもう既にあの男達に犯されてるんじゃないかと…… 頬を少しだけつねってみるが、しっかりと痛みを感じる。

 

 現実なんだ……溢れていた涙がもっと止まらなくなる。絶対に来ないと思ってた。助けに来てと心の中で願ってはいたが、心の片隅では助けに来る訳がないと諦めていた。


「さて、お前はどうすんだ?さっきの2人みたいに逃げるか?今なら見逃してやってもいいが……」


 銀髪の男の人の声を聞くと、何故か、どうしてだろうか。

 何だか前にもこんな事があったような…… けれどどれだけ記憶を遡ってみてもそんな出来事はない。


「馬鹿にすんなよ!!テメェみたいなカスに俺が負ける訳ねぇだろ!!」


 突然の大きな声にビクッとなってしまう、その次の瞬間金髪の男が取り出したものに目を見開いてしまう。

 ポケットナイフ……その矛先が私の方へ向かう。


「きゃあああ!!!」


 目を瞑って、これから来るであろう痛みに耐える。恐怖で身体が震えるが、いつまで経っても痛みどころか、衝撃すら何もない為、目を開けてみると私の視界には銀髪の男の人の背中が入ってきた。

 

「っっ!?……女に向けてナイフを使うんじゃねぇ!」


「ぐあっっ」


 あまりの展開の早さに、私は放心状態になってしまった。


「え……あの」


 そんな情けない言葉しか出ない自分自身に怒りを感じる、せっかく助けてくれた人に私は感謝の一つも言えないのかと、けれどいくら言葉を捻り出そうとしても身体の震えと共に奥に引っ込んでいく。

 そんな私に向けて、この人は優しそうな笑顔を顔に浮かべて口を開いた。


「助けられて良かったよ」


 何だろう、この胸の奥が凄く熱くなる様な感覚。涙が止まらず、きっと私は今酷い顔になってるんだろうなと思いながらも、この溢れ出る思いが止まらない。

 今なら言える気がする……「ありがとう」そう言葉にしようとした瞬間、男の人が倒れる。


 え……?


「恭弥くん!?一体何が……」


 ドアが開き、知らない女の人が入ってくるが、今はそんなの気にしてる暇ではなかった。

 倒れた男の人の背中を見てみると、ポケットナイフが刺さっており、血で服が赤く滲んでいる。

 あの時刺されていた……私を庇って?その事を理解した瞬間、私を命を賭けてまで庇ってくれたという事への嬉しさと、私なんかをという罪悪感で頭がグチャグチャになり、吐きそうになってしまう。

 気づいたら、さっき入ってきた女の人がこの男の人を必死に揺すりながらスマホで電話を掛けている。

 恐らく病院だろう…… 私はこの女の人が必死に対処している中、何をしている?ただ固まったまま、呆然としている。

 ありえないだろう、せっかく身体を張って助けてくれた恩人を見殺しにしようとしてるの?私は…… 自分自身に今まで感じた事がない程とてつもない怒りを感じると共に、動かなかった身体を無理やり動かして、ポケットに入っていたハンカチを取り出し、刺された箇所付近を必死に抑える。

 

「っっ!?貴方は?」


 女の人に睨まれるが、今は怯んでる場合じゃない。


「この人に助けられた人です…!!恩人を見殺しになんて絶対に出来ません」


「……そう、恭弥くん。戻ってくるのが遅いと思ったら、命を張ってまで人助けをしてたのね、全くこの人は一体どこまで……!!」


 そうだ、絶対に死なせる事なんて出来ない。絶対に助けてお礼を言って……それで!!

 今まで男なんて信用出来ないと思ってた、中学の時出会った先輩……嫌、あの人が現れるまでは。

 けれど、あの人も結局は私の事なんか見捨てて逃げていった、別にそれが悪い事とは言わない、だって私も恐怖で震えてたんだから、男の人というだけで無条件に助けてなんてのは都合の良い事だってのは分かってる。

 だけど、仮にも1年も関わりがあった後輩ではないか、それを一瞬で切り捨てて見捨てる。

 嫌、もう過ぎてしまった事なのだから良い。今大事なのは目の前の男の人…… 女の人は恭弥くんと呼んでいた、恭弥先輩……!!私を命を賭けてまで助けてくれた優しい先輩、どうしてこんなに胸の奥が熱いのだろう?

 あの人の時はこんな事にはならなかった、やっぱり恋なんだろうか……嫌、私の今の溢れ出るこの気持ちは恋なんてそんな生優しいものなんかじゃない、愛。

 今どうしようもなく私は恭弥先輩に惚れてしまっている。単純?そんな訳ない、命を張ってまで私を助けてくれたのだ、惚れる理由としては十分だろう。

 

 自身が恭弥先輩に惚れていると理解した瞬間、何だかスポッとあるべき場所に収まった様な感覚がした。


「恭弥先輩……絶対に先輩を助けて、このどうしようもない程溢れ出る気持ちを貴方に打ち明けてみせますからね」


 この言葉が目の前の女性に聞こえていたのか、どうなのかは分からない。だけど、チラッと視界の隅で目の前の女性がギュッと恭弥先輩の手を握り直したのが見えた。

 外から救急車のサイレンの音が聞こえてくるが、今の私には恭弥先輩の顔以外見えてなかった。



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もういっその事ヒロイン全員病ませようかな(早まるな)

それよりも、皆さんってどんなタイプのヒロインが好きなんですかね?良ければコメントで教えて欲しいです。参考にしたい!(切実)

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