第12話 カラオケ(2)


「あ、あの!!」


 指定されたカラオケボックスの前まで来た時、黙ってた愛華が突然声を上げる。


「ん?どした?」


「て、手を離して貰っても良いかしら///」


顔を真っ赤に染めながら恥ずかし気に言う彼女を横目で見ながら、視線を下げ自分の手を見てみると、俺の手はしっかりと愛華の手を握り締めていた。


「……何、愛華は俺と手を繋ぐの嫌なの?」


 何だか無性に愛華を揶揄いたくなってしまった為、試しに少し悲しそうな声を出しながら俯いて、悲しんでる風にしてみる。


「あ、そ、それは違くて!あ、はうう……恭弥くんと手を繋ぐのは大好きだわ…ずっと繋いでたいぐらい。け、けど!ここじゃ人目につくかもしれないし、それはまだ恥ずかしいっていうか///」


うーん、これは目の保養になる。というか、本当に可愛すぎてヤバいかも。この愛華の可愛さを全世界の人々に伝えてあげたい(切実)


「ププッ!!ははっ!冗談だよ愛華……ちょっと揶揄ってみただけだから、そんな慌てないでよ」


 俺が少し笑いながら顔を上げ言うと、愛華はちょっとだけ放心状態になるが、すぐに理解したのか、顔をさっきよりも、さらに顔を真っ赤にし身体をプルプルと震わせながら口を開く。


「なっ!?きょ、恭弥くんのバカァーー!!」


 ちょちょちょ!?ここまだ廊下なんですけど!?慌てて、俺は周りに人がいないか確認して、愛華の手を引っ張りカラオケボックスの中へ入っていく。





「あれ?先輩、急に出てっちゃいましたけど、どうしたんですか?」


「嫌、今ちょっと幼馴染の声がした気がしたんだけど、気のせいだったみたい」


「変なこともあるもんですね〜」


 今現在、僕は後輩である輝夜ちゃんに誘われてカラオケに来ていた。

 にしても、何で僕輝夜ちゃんと関わり持つ様になったんだけ?確か…… 僕が中学2年の時にたまたま廊下で、誰かとぶつかって輝夜ちゃんが落としたプリントを拾ってあげた辺りからだったかな。

 何故か、あの辺から懐かれる様になったんだよなぁ。まぁ輝夜ちゃんは凄く可愛いし懐かれて悪い気はしないし、それに胸もデカいから、これからもとりあえず適度な関係を持つ事にしよう。

 それよりも大事なのは愛華の方だ。昨日愛華が不自然に絡んでたあの男……確か恭弥とか言ったか?愛華と僕は幼馴染なのに、それに割り込んでくるあの男。あの男のせいで昨日は上手く愛華と話せなかった。

 あの恭弥とかいう男は間違いなく僕と愛華との関係に入り込んだ不純物だ。不純物は取り除く必要がある……ま、まぁ!とりあえず今は様子見の段階だな。うん、そうだ。


「先輩?」


 おっと、考え事に夢中になっていた様だ。輝夜が心配そうな表情を浮かべながら僕の事を見ている。


「あ、あぁ、ちょっと飲み物取ってくるよ。何か飲みたいものある?」


「あ、じゃあメロンソーダをお願いします!」


 そう言って笑みを浮かべる輝夜ちゃんに、少し見惚れながらも席を立ちカラオケボックスから出て廊下に出る。


「ギャハハハハハwwww おい!お前が堕とした後輩全然使えねぇぞ!!」


「嫌、ごめんなマジで!あの子、意外と可愛かったし、処女だったから、適当に口説き落としたんだが、あそこまで壊れるとは思わんかったわwww」


「ちょっと、俺らで回しただけで、泣く事すらもしなくなったわ!今はもう学校来てないんだっけか?」


「でも、そんなに壊しちまって大丈夫なのかぁ?もし警察とかに出られたらどうすんだ?」


「あぁ、安心しろよ!こいつのお父さん、この市のお偉いさんだからよぉ、簡単にもみ消してくれんだわ!w」


ジュースを取りに行く最中で柄の悪そうな集団とすれ違う。恐らく他校の連中だろう、嫌だな…ああいうの、絶対に関わりたくない連中だ。

 後ろから何か声が聞こえてくるが、関わりたくないので、無視してドリンクバーに辿り着き、メロンソーダと烏龍茶をコップに入れて、輝夜ちゃんが待つ個室へ戻る。

 ん……?何か声が聞こえるな。輝夜ちゃんが歌ってるのかな?


「ごめーん、輝夜ちゃ……え?」


 扉の先にはさっき廊下ですれ違った男達と、涙目になり、服が少し乱れてる輝夜ちゃんがいた。


「せ、先輩!!」


 輝夜ちゃんがこちらを見た瞬間安心した様な顔になるが、僕は暫く状況が理解出来ずに固まってしまった。


「あぁ?テメェ誰だよ?」


「もしかして、この子の彼氏か?ギャハハww」


男達が僕の方に近づいてくる。僕は恐怖で身動きが取れずにいた、男達の後ろには輝夜がいる。今もし僕がこの男達に殴り掛かって気を引いたりすれば輝夜を逃す事が出来るかもしれない……だけど、やっぱり怖い。

 いざ同じ状況に実際になってみると、良く見る小説の主人公の様に行動するのはとっても難しいし怖いということを嫌でも理解してしまう、そんな僕が選んだ選択は……「え」後ろから輝夜の声が聞こえる。


「ギャハハハハハwwww マジかよこの彼氏、彼女置いて逃げやがったwww」


「てな訳で、えーと輝夜ちゃん?はこれから俺達と一緒に遊ぼーねー?」


「このレベルの美少女とか久しぶりじゃんww」


後ろから男達の声が聞こえるが、全部聞こえないふりしてカラオケの廊下を走って駆け抜ける。途中で銀髪の男と肩がぶつかるが「って!おい!」気にする事なく走り続け、僕はカラオケの外へ出た。




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修平君さいてー(棒)

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