第8話 好かれてるなら別だよね


さて授業も終わった訳だが、絶賛今は愛華に逃げようとした手を掴まれてる途中だったりする。


「恭弥くん、さっきの発言について改めて聞かせて貰ってもいいかしら?」


 振り解くのは簡単だが、流石にこんな人前で振り解く訳にもいかない。


「別に深い意味はないよ… ただ美少女って言っただけで何でそんなに反応するんだよ」


「また言ったわね/// 恭弥くん、まさかそんな言葉を他の子にも言ってるんじゃないんでしょうね…」

 

 てかこれ多分俺、愛華に好意持たれてないか?美少女って言っただけで顔赤らめてここまで反応するとか、流石に察せないという方が無理な話だろう。

 にしても、ナンパから助けただけで惚れられるか… 嫌、女にとっては惚れる理由としては十分なのか?少しだけ実験してみるか。


「なぁ愛華、お前ひょっとして俺の事気になってる?」


 敢えて好きという言葉は使わない、後発言する時に愛華の顔に自分の顔をキス出来るか出来ないから辺の所まで近づける。これで愛華が俺の事を突き飛ばしたりするなら拒絶という事なので、俺の予想は外れだろう。


「ふぇ、な、何で///」


 今までない程に顔を真っ赤に染めながらこちらをトロンとした目で見つめてくる。そして何を勘違いしたのか目を閉じて唇をこちらに向けてくる。

 周りの生徒達の視線が痛いが、無視しながら俺は考える。俺が恭弥だと自覚した当初は、特段女を寝取る趣味も無いのでヒロインを遠目で眺めるぐらいで良いかなと考えたが、今目の前にいる愛華はどうだろうか?

 彼女は顔を真っ赤に染めながらも、嫌がる素振りは一切見せていない、俺に対しての嫌悪感などが何も感じられない。

 


 別に俺に対して何も思ってないヒロインは別だが、愛華はこうして俺を意識してくれている。



─────────────よし、やるか。



 寝取る趣味はないが、こうして俺に好意を抱いてくれる女を無下にする気はない。ていうか、そんな事をしたら相手を傷付けるだけだ。

 よって、俺は愛華を寝取る事にした。ん?この表現は適切じゃないか、別に愛華と修平は付き合っている訳ではない。

 先程よりもさらに、まるで親の仇のごどく俺を睨み付けてくる修平。マジで視線だけで胴体に風穴開けられそうとか馬鹿な事を考えるが、修平が俺に対して何かをしてくる事はないと確信している。



 それは何故か?単純に怒るが無いからだ。

 幼馴染だから?幼馴染だから人の恋路を邪魔する、そんなものは論外だ。話にすらならない。


 付き合っているから?生憎、修平と愛華の間にそういう関係性はない。ただのキモい陰キャの妄想という事で片付けられるだろう。


 好きだから?両思いなら話は別だが、今の修平のその思いは完全な片思い。一方通行の愛など怒る理由にはなりえない。


 まぁ、好きだという思いを拗らせて嫉妬や憎悪の色々な感情に突き動かされて論理などを全て無視した状態で来るなら話は別だが……


「はは、一体愛華は何を期待してんのかな?」


 そう笑いながら言うと、愛華はもうこれ以上ない程に顔を真っ赤に染めながら目を見開いて固まる。


「な、何でもない!恭弥なんて知らない!///」


そう言ってそっぽを向いてしまう愛華、まぁ今のところはこれで良い。だが別にゆったりじれじれな恋愛をする訳でもない、愛華が俺に惚れていると分かった以上遠慮はしないつもりだ。

 正直、本来は手に入る筈のアイドル級のヒロイン達が主人公とイチャイチャするのを眺めながら、別の可愛いは可愛いがヒロイン達と比べると見劣りするモブ女に手を出すってのはどうなんだってのは自分でも思ってたからなぁ。

 はぁ、まぁ結局俺も欲望には忠実なただの男って事か、まぁこういう周りとは違うぜとかいうオーラを出して本来の欲望を押し殺して女に無頓着な振りをする様な奴が女を寝取られて後々絶望するんだよな笑 

 前世は本当にただの陰キャだった俺だし、女なんかそれこそ日直とかそういうのじゃないと話せない様な存在だった。ただ今はまるで正反対の容姿にも何もかもに恵まれている俺。



 別に主人公から女を寝取るつもりは今でもない、ただ愛華は偶然とはいえナンパから助けた俺に対して好意を向けている。なら、それに応えない道理はない。


「まぁ機嫌直して「先輩!」」


 ん?教室に甘ったるい声が響き渡り、周りの子達がその声がした方へ視線を向ける。俺も釣られた様にそちらに視線を向けると、そこには9人中のヒロインの内の1人である天音輝夜あまねかぐやがいた。



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