スタンド・バイ・パンツ 〜80s🍓柄はずかしエピソード集〜

シュレーディンガーの家出娘

　８０年代のお話ではなく、ゴシック＆ロリータファッションが出て来た頃のことです。

　今回ネタにする女の子が若い子ということで、ひとつお許し願いたく。

　＊

　ある日、ケータイに知らん番号からかかってきて、出てみたら、あやこちゃんというハタチの子だった。

　――あれ？　あやこちゃんに番号教えてなかったんだけどな？

　あやこちゃんとは、一度しか会った事がなくて、ヒデキくんという知り合いのイケメンの子の彼女って事で紹介された。

　その時はあと、若い女の子２名と若い男の子１名が居て、みんなでファミレスで結構長い時間一緒に過ごしただけなんだけど。

　まぁ、ゴスロリファッション愛好家同士の集まりだった。

　あやこちゃんはケータイで、私に言った。

「あの、あたし、彼氏と同棲してたんだけど、彼氏に追い出されたんですぅ。家にも帰れなくて……お金もなくて……」

「なんで帰れんの？」と聞く。

「あたしのお父さん、ヤクザなんですぅ。彼氏と勝手に同棲始めたから、勘当されてて、帰ったら絶対殺されます！」

　それから、まぁ、あやこちゃん、どうにかならんもんかとは相談には乗ったりしたが、どうにも解決手段が思いつかず……。

「あ、ごめんね、今キャッチ入っちゃったから」

　と言って、その後、あやこちゃんの番号を着信拒否した。

　あやこちゃん？

　うん、結構美人だったよ。

　要するに、行くところないから私の家に置いて欲しいってことなんけど……。

　何でもするとも言ってたし、お金無いってことは、身体で払うってことだと思う。

　う～ん、微妙かなぁ。

　顔見知りのヒデキくんと兄弟になるのイヤだもん。

　いや、私の性格的になんもしないと思うけど。そんな弱みに付け込むような。

　何より、あやこちゃんのお父さん恐いもん。

私まで殺されかねないやん？

　ていうか、なんで、ヒデキくんに追い出されたんじゃろ？

　それは不覚にも聴きそびれてしまったな。

　その点にも何やら、得体の知れない妖気を感じるよね。

　多分、地雷娘だったんじゃないかと。

　たまに、その事思い出して、やっぱし、暫く置いてやっても良かったかな？　って思うこともあったりはするかな。

　なりよりネタになりそうだし（そんなに地雷娘じゃなければ）

　私にとっては──あやこちゃんは、実はさほど地雷娘でもなかったあやこちゃんと、ゴリゴリ地雷娘のあやこちゃんの２人が重なり合っていて、蓋を開けてみなければわからないシュレーディンガーのあやこちゃん状態なのだった。

　相手にしなくて正解だったのか、暫く家に置いてやれば良かったのか……。