百円ライター

 路上の喫煙スペースで彼はポケットからタバコと百円ライターを取り出した。タバコをくわえて火をつけようとした。つかなかった。液体燃料が空になっていた。フリントホイールを繰り返し親指ではじいた。かろうじて弱々しい火がついた。彼はタバコに火をつけることに成功した。

「すみません、火を貸してもらえませんか?」

 彼は見知らぬ若者に声をかけられた。ライターを貸した。若者はタバコに火をつけようとした。フリントホイールを繰り返し親指ではじいた。結局火はつかなかった。若者は舌打ちをした。彼へライターを突き返した。忌々しそうにいった。

「あんた、ライター買った方がいいんじゃないの?」

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