番外編 実らなかった初恋 ~返事の無い手紙~
大好きだったカナちゃんが、アメリカへ行ってしまってもうすぐ1年が経つ。
相変わらず、事ある事にカナちゃんを思い出しては寂しくなって、私は便箋に向かった。
話したい事があり過ぎて、月に2回程書く手紙は毎回便箋を5~10枚も黒い文字で塗りつぶしてしまう。カナちゃんは私の心の拠り所なのだ。
――― ところで今日、友達から、最近ハマっているという漫画を借りました。恋愛漫画は初めて読んだけど、凄くドキドキたよ! カナちゃんは恋愛したことがありますか? 私は ―――
「カナちゃんが好き。なんて、書いたらやっぱ嫌かな?」
鉛筆を持つ手を止めて考える。
漫画の主人公が、幼馴染の同級生に告白するシーン。
同級生の返事は「お前の事はただの友達にしか見れない。」だった。
小さい頃から一緒の人間は恋愛対象にはならないらしい。
だとしたら、私を赤ちゃんの時から知っているカナちゃんの中では、私は恋愛対象外?
そう思うと、たちまち悲しくなって胸がギューッと締め付けられる。
「で、でも、好きには色んな意味があるって真美ちゃん言ってたし、好きな人に好きって言うのは悪い事じゃないよね!?」
それに私とカナちゃんはこんなに仲良しなんだもん。
「俺は嫌いだよ」とは言って来ないはず!!
鉛筆を握り直して、変に力が入った指を滑らせ、私は便箋の最後にいつもより丁寧に文字を置いた。
――― カナちゃんの事が大好きです ―――
今回も8枚という長さになってしまった手紙。
それを半分に折って、祈る思いで封筒に押し入れ、ポストへ投函した。
いつもなら10日前後で手紙が届くのに、今回は20日たっても返事が来ない。
「きっと忙しいのよ」お母さんに言われ、そうかと頷いて、再び待つ。
1か月、2か月、3か月…。もしかしたら手紙が届いていないのかもと、絵はがきに『お元気ですか?』と書き送ってみたがやはり返答はなく。
半年が過ぎた頃には、あんな事を書かなければよかったと後悔に苛まれて高熱で寝込んだ。
そして、手紙の返事は来ないまま2年。
カナちゃんが通っていた中学校の制服を着て、新一年生としてその門をくぐりながら、精神面が少しだけ成熟した私はようやく、自分がカナちゃんに恋をしていた事を理解し、そしてその恋が惨敗に終わったのだと受け入れる事が出来た。
「もうカナちゃんの事は忘れて、新しい恋をしよう。」
あの漫画の主人公だって、次の恋で幸せになって、先週壮大なフィナーレを迎えたのだ。初恋は実らないって言うらしいし、涙の分だけ女の子は強くなるらしい。
だからもう、カナちゃんが居なくたって、私は大丈夫…
そう自分に言い聞かせ、私は新しい学校生活に挑んだのだった。
初恋の続き 細蟹姫 @sasaganihime
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