18.感想、そして提案


〜クロウside〜

 

 骸骨面に喜色を浮かべながらスキップして戻ってくる危険物。その後ろではワーカー達が頑張って羽ばたいて毒を散らしている。


「いぇ〜い、ピスピース!勝ちました!勝っちゃいました!実は私、強かったとかなんとか?レベルも上がっちゃいましたー!」


「ピースなんて毒物振りまいといてよく言うな!?お前あれアンデット以外の呼吸してるような奴ら全員に効くだろ。後始末までさせて俺はエイティア女王に申し訳ねえよ!」


「全力でいいって言ったのは向こうさんですし……。折角なら作ったものや新しい魔法、使いたいじゃないですか!それにあのポーションは毒無効じゃないと毒になるだけの副作用があるだけです!ちゃんと回復するんですから、嫌ならクロウさんも毒が効かない体になってくださいよ。そしたら遠慮なく使えるんです!」


「まぁまぁクロウさん。とりあえず勝ったんですし良かったじゃないですか。相手を殺しても大丈夫なルールな以上、殺す気でやらないとやられるのはこっちです。」


「とは言え限度があるだろ。閉所で使っちゃダメな類のポーションだってあれ。敵に強制デバフしてこっちはバフだぜ?」


「ふふん、有利な状況を作り上げるのが大事なんですよ!勝てばいいのです、勝てば正義!」


「あながち間違っちゃいないのが腹立つな?まぁ、もう終わった事だし休んでろよ。あの人形で骨そこそこ無くなったろ?」


「呪うとそれなりにリスクありますからねぇ。錬金も対価必要ですし。呪法と錬金魔法の相性はいいんですけど如何せん尖りすぎちゃいますね!」


「はぁ……とりあえずリオは休みながらポーションの検品な。トーリ、次大丈夫か?いけるか?」


「はい、大丈夫です。作戦は考えてます。僕もいいとこ見せないとですしね!」


「いや、あそこまでしなくていい。あくまで善戦、善戦だからな?」


「あーー、その事なのだが、少しいいか?」


 毒を散らすようワーカー達に指示していた女王がこちらにやってきた。


「いや、その、エイティア女王。うちの骨がすまない……。こちらもまさか毒を撒くとは思わず。」


「なに、問題ない。元より手合わせを申し込んだのはこちらから。他の骸骨錬金術師スケルトンアルケミストと同じと甘く見ていたな。正直言うと、初手でタンカーを倒したあのポーションの時点で後方支援職の実力として十分ではあった。全力を見せるとああなるとはな。良い予想外だ。」


「いやー、褒められちゃいましたねクロウさん!実力は十分ですって!」


「ただ、思ってはいたがやはり異常だ。」


「異常?何がですか?」


「リオ殿が強すぎるのだ。他の骸骨錬金術師スケルトンアルケミストならば、タンカーとキャスターだけでも捻り潰せる。なんならタンカーだけでいいくらいでもある。それがこうも手玉に取られるとは元人間、転生者ということを差し引いても強すぎる。」


「過剰戦力送り付けてきてたんですか!?でもそれはまぁ、邪神ちゃんのお陰って事ですかね?今回灼熱の魔眼を使っちゃうと全力も何もそれだけで終わっちゃいそうだし周りも巻き込んじゃうから使わないようにしてたんです。蔦人形ウィッカーマンの時は強制的に使わされちゃいましたけども。」


「本来、ランク差はそう簡単に覆せない。進化したなら分かると思うが、実力が1段も2段も変わってくる。直接神からの支援を受けるとこうも変わるものなのだな。」


「何言ってるんですか、エイティアさんも二グラさんから力貰ってるじゃないですか!」


「言っただろう、私は種族も頂いた力も戦闘向きじゃない。我が自ら戦ったのは最初期のみ。後は全て我が子らに任せていたし蜜が主食故にここで花さえ育ててしまえば争うことも殆ど無い。」


「うーん、でもまぁ強いに越した事は無いですね、私達はどんどん上を目指さなきゃなので!」


「それでだ。リオ殿を基準に考えるとこの先の我が子らも一方的に蹂躙される可能性がある。なのでもう少し上のランクを出すが構わないな?」


「いや待て構う構う!俺とトーリの相手がさらに強くなるって!?リオみたいな非人道的な技なんて無いから俺らキツイって!」


「私自傷でしかHP減ってないですし良いのでは?クロウさん、何事も経験ですよ、経験!」


「てめぇどっちの味方だコラあぁん?命賭かってんだぞ命!やり直し出来ねえの!!賛同すんな馬鹿!」


「降参できるんだから殺される前にすればいいじゃないですか!私の武器使えるんだから大丈夫ですってば!トラストミー!」


「信じられねえよ!?……なぁエイティア女王、俺の時は強くしていいからせめてトーリは予定通りで頼むよ。あんたら、植物モンスターの相手は腐るほどしてきただろ?栽培までしてるしな。対処法も分かってるんじゃ相手が強くなったらこっちは余計不利になる。だからせめてトーリは……。」


「いえ、望む通りに強くして頂いてどうぞ、女王。全力が見たいんですよね?」


「なっ、トーリ!」


「いいんです。僕は、示さなきゃいけないんですから。」


「本人がこう言っている。女が度胸見せているんだ、野暮な事を言うなクロウ殿。では選定して来る。毒を散らすのにもう少し時間がかかる。それが終われば2戦目だ。」


 そう言い残して女王はどこかへ飛んでいく。


「なぁ、トーリいいのか?」


「いいんです。今はこんなんですけど僕だって元は男です!さっき言ったようにいつまでも守られる側で居られないんです!僕だって強い所はあるんですよ。最悪殺されないだけならなんとでもなります。それに僕が負けてもクロウさんが勝ってくれれば2勝1敗で勝ち越しですし!」


「私が作った呪い付きの武器もありますしね!あと私みたいに魔眼で燃やしちゃう心配無いから凍らせて動き封じちゃえばいいんですよ!地面に落とせばほぼ勝ちだよトーリちゃん!」


「では準備してきますね。皆を驚かせるように頑張ってみます。」


「無理するなよ。負けても大丈夫だからな?俺頑張るからな?」


「はいはーい!トーリちゃん頑張ってね!全部凍らせちゃえ〜!」


「なぁ、リオ。どう思う?俺物凄く心配なんだが。」


「えぇ?大丈夫ですよ。私全然心配してません。トーリちゃんはやる時はやる子ですから!私人間だった頃は何度も助けられてますし、それに……」


「それに?」


「あの子、私の友達ですよ?」


 2回戦が始まる。

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