第29話 お祭り⑤


「マリア、僕は君に助けられた。僕の本当の名前は、サイラス・レオール・ノーフォーク、この国の王太子なんだ。」



「えっと……。王太子?」



私は動揺を隠せずに聞いてしまった。



「そうだよ。」



周りにいた妖精たちがきゃっきゃきゃっきゃと笑ている。



「言っちゃたね。」

「言っちゃたよ。」

「驚いてる。」



そう口々に言いながら笑っている。私はいまだに状況を理解できないまま。



「すみませんでした。無礼を働いていた気がします。」



サイラス様は驚いた顔をして私に



「そんなことないよ。君との時間はとても楽しい。」



サイラス様は私が謝ると思っていなかったらしく頭をさげる私に驚いてトマどきを隠せないでいた。



この国の王太子は一人精霊王の生まれ変わりと貴族の間で呼ばれている、とお祖父様に聞いていた。もしかするとサイラスは精霊王の生まれ変わり?



私の頭の中で色々会議が行われている。



「君は知ってるかもしれないんだけど、僕精霊王の生まれ変わりって言われてるんだ。」



私は驚きを隠せずに目を見開いた。




「えっと、この国には200年に一度精霊王の生まれ変わりが王子として生まれ変わるって言われてるんだけど、王子のなかで僕だけが妖精たちと話せるんだ。だから、そう言われているだけで使えると言われている魔法も使えないんだけどね。」




そう照れ笑いしながら教えてくれた。




「そうなんですね。私に立場をお教えしてよろしかったのですか。」



「いいんだ。マリアは私のことを知ることになるだろうし、自分の口から伝えておきたかったから。」



優しいブルーの瞳が私を見ている。


私は少し恥ずかしくなって目を逸らした。



「さて、精霊に挨拶してから帰ろうか。もうすでに横で騒いでるんだけどね。」


そう言って歯に噛むように笑う王子を見てまた目を逸らした。


最近感じるこの胸のときめきはなんだろう。サイラス様だけ私をざわつかせる。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る