僕の言葉に値札をください

夏野けい

僕の言葉に値札をください

習慣がいちばん強いらしいから電源だけは入れるパソコン


いちにちの疲れに封をするようにWordのまえのながいまばたき


一文字も生まない指でエンターキーそそと撫でつつ雨音をきく


ツイッターひらけば今日もあのひとは書いて調べて読んで まぶしい


罪悪感ばかり増しますタイムライン上で溶けゆく時間数えて


断片のままで散らかる物語もっと器用になりたかったな


スキップのリズムで進む奇跡の日なのに明日は早起きですか


ひとふりのつるぎと思いながら研ぐこの小説の切先はどこ


送ったら勝ちと念じてもう五分睨んだままの投稿フォーム


感想は栄養 僕もいただいたレビューで生きてますんでどうか


スクロールするたび目減りする希望一次通過は一割未満


拙作を愛してくれてありがとう また落ちちゃった ごめん ごめんね


I wanna be 願いつづけることさえも時に苦しくなるね おやすみ


やめないよだってこれしかないんだよ書いてるうちは生きていられる


次もまたあなたは褒めてくれるかな小さな星を掬うみたいに


一文字を打つたび爪をたてている、世界、あるいは僕のうちがわ


あふれくるものを言葉に押し込める誰も値段をつけぬ言葉に


フォロワーの受賞を知った嬉しくて悔しくてでもすごくうれしい


憧れてました あなたはきっとすぐ作家になると思ってました


おめでとう光のなかでいつまでも書いてください(いつかは、僕も)

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