破壊神にして勇者王なシスターさん

八木崎

夢にまで見た異世界転移に巻き込まれた件

 初めに言っておこう。僕は選ばれた勇者である。


 ……いや、嘘じゃないよ。本当だよ。止めてね、虚言癖とか馬鹿にするのは。そういうの、もう小学生の時に経験済みだから。


 で、話を戻すんだけど……僕はどうも、勇者とやらに選ばれたらしい。そして普通の高校生男子だった僕はいつの間にか、どことも知らない異世界へ飛ばされたのだった。


 その世界ではどうも、魔王とやらが悪事を働いていて、それを倒すために召喚されたんだってさ。まあそんな感じでいきなり王様っぽい人に呼び出されて「世界を救ってくれ」なんて言われた訳。


 もうね、テンション上がりまくりだよね。だって、こんな一度は夢見た展開が訪れるだなんて思ってもみなかったんだもの。しかも、勇者ってことは、僕が主人公なんだぜ? そりゃ、嬉しくないはずがないじゃんか。


 それに何より、こういった展開の場合、可愛い女の子とイチャイチャできる確率が高いのだ! これを逃す手はない!!


 ということで、僕は王様っぽい人に鼻息荒く「任せてください!!」と鼻息荒く答えた。


 すると王様っぽい人は少しだけホッとしたような顔をして、「頼んだぞ」と言った後、僕に一通りの装備とアイテムを渡してくれた。それは剣と盾、鎧とマントといういかにもRPGに出てきそうな装備品一式であった。僕はそれらをいそいそと身に付ける。


 ……うむ。やはり王道な格好というのは素晴らしいものだ。僕の心は早くも踊り出しそうになっていた。一刻も早くこの剣を振るって、出てくるモンスターをバッタバッタとなぎ倒したい気分だ。


「それで……まずはどこに向かえば良いんですかね?」


 僕がワクワクしながら尋ねると、王様っぽい人が言った。


「まずはこの城を出てすぐの所にある街に向かって欲しい。そこに仲間となる者がいるはずだ」


「分かりました!」


 僕は元気よく返事をして部屋を出た。廊下に出ると、そこには何人かの兵士らしき人達がいた。皆一様に僕を見ると驚いた表情を浮かべる。けど、直ぐに尊敬するような眼差しを向けてきた。


 どうやら彼らにとって、僕は本当に特別な存在のようだ。なんだか照れ臭くなって頭をポリポリ掻く。そんな僕を兵士達は尊敬のまなざしで見つめ続ける。


 そんな視線に晒されながら廊下を歩いていき、城から出て行った。そして眼前に広がるファンタジー風な街並みに僕は心を躍らせた。まるでゲームの世界に飛び込んだような気分になる。


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