第48話 文化祭④

「おかえり2人とも、今から義姉さんのところに行こうとしてるんだけど一緒に来る?」


「白神ってお姉さんいたんだ……ってもしかして朝に手伝いに来てたあの人が白神のお姉さん?」


「まぁ正確に言えば義理のだけどね。あ、このことは信用してる奴にしか話してないから緋月も友達に話さないでくれる?」


そもそも僕にはこのことを話す相手がいないんだけどね。友達が入れば蒼井さんと誰がご飯を食べるかっていう時に静かに本を読んだりしてない、まぁそのおかげでこんなにも友達ができたんだから結果的には良かった。


白神と僕はまだ友達になってそこまで日が経ってないのに信用するのはちょっと甘すぎるんじゃないのかな? まぁだからといって言いふらすつもりなんて無いんだけどね。


「なぁ緋月、結局どうだったんだ?」


「僕は情けないことに、告白まではできなかったよ。まぁ少しでも2人でいられただけでも満足だよ」


もちろん嘘である、ここで僕か告白したと言ったら、この後に白神に告白しようとしている奏音の印象が悪くなってしまう。人の告白を断ってすぐ他の誰かに告白するなんて聞いた人によっては引かれるだろう。


それに僕の告白を断ったと相手から告白される白神も心境が複雑になるだろう。なので僕は奏音の告白が終わるまでは今まで通りに過ごして、文化祭が終わってもしばらくの間は今まで通りに過ごしていた方がいいのかもしれない。


「また頑張れよ、まだ振られたわけじゃないんだからさ」


「吹雪くん、もしかして恋バナしてるのー? 混ぜてー!」


「ごめん蒼井、恋バナならもう終わった」


「そんなー!」という蒼井さんの声が響いたところでその白神のお姉さんがいるところに着いたらしい。


「あれ、義姉さんが受付してるんだね……ってあ、そりゃあ受付になるか」


「馬鹿にしてませんか? 怖いものが嫌いでわがまま言って受付にしてもらったわけじゃないですよ?」


白神のお姉さんは怖いものが苦手でお化け屋敷の中にいるのが嫌で受付をしてるらしい。僕でもそれは理解出来たが文化祭の出し物のお化け屋敷でも怖がるってホラー映画とかを見せたらどうなるんだろう。


白神のお姉さんが怖がりすぎるのかこのクラスのお化け屋敷がそれほどガチで怖いやつなのかどっちなのだろう。


「別に私は怖がりじゃないですよ? 受付にいるのはそっちの方が人が集まるからと言われただけです」


「いやいや、まぁ言われたのは本当だろうけどさ。雷が鳴ってた時に何回俺の部屋に来たと思ってるの?」


「そ、それは言わなくていいでしょう! 早く中に入ってください!」


白神は本当にお姉さんと仲がいいんだなと思いながら僕たちは3人と2人で別れて中に入った。


僕と奏音がペアでその他3人がペアで先に入ったのは僕たちのペアだ。


「奏音さんは怖いのは大丈夫なタイプなの?」


「僕はねぇ、心霊スポットとかだったらダメだけど。ホラー映画だったり今回のお化け屋敷みたいに本物じゃないやつだったらどうもないかなぁ。緋月くんは?」


「僕は正直無理なタイプなんだよね。今回もかっこ悪いとこ見せちゃうかも」


そんな雑談を交わしながら進んでいくと曲がり角でいきなり飛び出てきたり足を掴まれたりしたが僕だけが驚いてばかりだった。


「あはは、緋月くんの驚いてる姿可愛いねぇ。普通抱後ろに隠れるのは僕だと思うけど可愛いからそれでいいやぁ」


「僕は恥ずかしいから良くないかなぁ……?」


ようやく出口だと思ったらお決まりの噴射する空気でやられてしまった。



※※※



「なんか緋月くんの叫び声凄かったね。怖いの苦手なら言ってくれればここには来なかったよ?」


「大丈夫だよ、確かに怖かったけど色々楽しめたからさ」


そのまま5人で出し物を回っていたらいつの間にか一日目の文化祭が終わる時間になっていた。


本当に充実した一日だったと思う。奏音さんと付き合えるかもしれない約束をして、かっこ悪いところは見せてしまったけどそれすらも面白かった。


「そういえば緋月くんと連絡先交換してなかったねぇ。それとせっかくだしこの5人でグループでも作ろうかぁ」


それにみんな賛成して、その5人に加えてあとから話しているところに来た白神のお姉さんを含めた6人のグループができた。


そこから追加していない人の連絡先を追加したところで今日はお開きとなった。


「緋月の家ってこっちの方向だったんだな。俺の家は自由に遊びに来ていいよ、というか暇だから来て欲しい」


「なんでも出来る白神でも暇なのはどうにもできなかったか。逆にみんな勉強しに集まる時は白神の家が選ばれるんじゃないの?」


「夏休みは紅葉しか友達いなかったしなぁ。まぁ今は増えたし勉強しに来るなら掃除しとかないとなぁ……」


せっかくグループができたんだしこのことは後で聞いてみるとしよう。白神も来る分には別いいらしいけど掃除が終わりまでは無理らしい。


「別に緋月が掃除を手伝ってくれてもいいんだぞ?」


「それは遠慮しておくよ。じゃ僕の家はここだから、また明日も頑張ろうね」


「おう」


そして吹雪は家に帰って直ぐに掃除を始めるのであった。

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