第35話 通話
「言っちゃ悪いかもしれないけどさ義姉さんの友達ってどっちなの?」
俺は義姉さんのスマホでビデオ通話をしているのだがその通話している義姉さんの友達の性別がどっちか分からないのだ。
「ウチはちゃんと女の子だよ? まぁ確かに背は高いしまな板……もうヤダ泣きそう……」
「す、すいません。そんなつもりはなかったんですけど……」
「謝らなくていいですよ、いつも男性に間違われてこんな感じに自虐して落ち込んでますから。正直反応に困ってきたくらいです」
確かに男性には大きい方が好かれるかも知らないが正直俺は大きさなんてどうでもいい。
結局大きさなんてものは外見で小さくても中身が良ければそれでいいと俺はそう思う。
「綾乃んはいいよね、それなりに大きいんだから……。義弟クンは近くにでかい人がいるからウチを見た時に小さいと思ったでしょ?」
「大きさなんてどうでもいいですよ、俺は。外見より中身の方が重要じゃないですか? 別に好みを否定するわけじゃないですけど大きくて性格が悪い人と小さくて性格がいい人なら俺は後者を選びますよ」
ただ大きくて性格がいい人と小さくて性格がいい人のどっちかを選べと言われたら俺は選べないだろう。選ぶとしても仲がいい方、まぁそもそも俺としてはどちらかを選ぶようなことはしたくない。
「義弟クンはいいこと言うね、お姉さんと付き合っちゃう?」
「あ、申し訳ないですがそれは無理です」
「綾乃ん、振られちゃった」
「私にはどうすることできませんよ……? それに吹雪は結構な激戦区ですよ。私の知る限り吹雪のことが好きに女性は二人います」
ん? 蒼井は俺と義姉さんの前ので実質な告白をしてきたからわかるけどもう1人が誰かわからない。まぁ誰だとても程のことがない限りは俺は付き合う気は無いので気にする必要は無いだろう。
「すっごいモテてるねぇ、羨ましいくらいだ。ウチは男子より女子の方から人気だから付き合えることは当分ないかなー」
「まぁ高校だけが出会いの全てじゃないですし。大学とか会社とかでいい人と出会えますよ、きっと」
高校で付き合った人とそのままずっと上手くいくかと言えば確実じゃない。別れる可能性なら社会人のカップルと高校生のカップルなら後者の方が確率は高いだろう。
「本当に付き合いたいんだけど。綾乃ん、許可くれない?」
「明日一緒に遊ぶのですからそれで我慢してください」
そういえばどこで遊ぶかも聞いてないしこの人の他に誰が来るのかも聞いていない。学校のやつと出会わなければどこでもいいのだが、まぁ普通に女子高生だし人気なところに行くのだろう。
「義姉さん、そういえば高校生になってから遊んだことがないからまともな服ないんだよね。これから遊びに行くことが増えるかもしれないし買った方がいいのかなぁ……」
「せっかくですし通話が終わった後に買いに行きましょう。私が吹雪に似合う服を選んであげます、もちろんお金は私が払いますよ?」
なんでだよ、そこは普通俺が払うところだろう。義姉さんから貰ってるお金は全て生活費に当ててるし、俺が遊びに使えるお金は子どもの頃から貯金してるお年玉ぐらいなので正直買ってくれるのは助かる。
「義姉さんのことだから俺が払わなくていいって言っても払うつもりだったでしょ?」
「えぇ、たった1人の可愛い義弟ですから。お母様も吹雪ようにお金を渡してくれたんですよ? 使わないとお母様に失礼です」
会ったことは無いが義姉さんから時々話は聞いている。当主さんとは年の差があったらしくまだまだ若いらしい。
なんで当主にならなかったのか分からないが、時雨家の会社で社長をしていると義姉さんから聞いた。義姉さんはその補佐的な感じだろう。
「会ったことないんだけどなんで当主を義姉さんに譲ったの?」
「お母様は部屋に籠って仕事をしてるより部下を持って指導するのが好きなお方ですから。会社のトップにふさわしい人だと思いますよ、いずれ吹雪にはそこで働いてもらいますからね」
「え? まだまだ先の話じゃん。コネ入社で他の社員さんは歓迎してくれるの?」
「ウチのこと忘れてない?」
「あ」 「あ」
しばらく雑談をした後、俺は義姉さんと服を買い来ていた。
「菊池さんが一緒に来ていると私たちが菊池さんの子どものように見えてきますね」
「いやぁ義姉さんと菊池さんなら親子に見えるかも知らないけど、俺は髪色の問題があるし疑われるでしょ」
「義弟様も家族ですから。バカにするものが居るのでしたらお申し下されば私が……」
時雨家の人間なので本当にやってしまいそうで怖いので念入りに止めて置いた。
「着きましたね、2人のお時間を邪魔するのもあれなので私をこれで。緊急時の時は駆けつけますのでご安心ください」
おそらく菊池さんは俺たちの見えないところから見守っている。まぁお嬢様の付人を任されてるのだからそれくらいは容易にできるのだろう。
「俺にファッションセンスなんてないから服を選ぶのは全て義姉さんに任せるよ」
今まで外に出かけることはほとんどなかったし全てお母さんに買ってきてもらっていたので俺は服を選ばない方がいい。
「わかりました、それと服を買ったあとは髪を切りに行きましょうか。ヘアピンもいいですけどやはり髪を切った方が……」
「いやぁ、このヘアピン蒼井から貰ったやつだから使っておきたいんだよね。もう少し伸びたら切りに行くけどもう暫くはこれがいい」
せっかく貰ったのにすぐに使わなくなるのは蒼井が可哀想だし何より勿体ない。せっかく貰ったんだから限界までこのヘアピンは使い続けるつもりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます