第11話 ストーカーの正体見たり 3

「私は……」


 どう答えるのが正解?


 返事を間違えたら殺されちゃうんじゃないか。


 ストーカーに対してどう対処すればいいのか。


 なんて、そんなことどうでもいい。


 梨奈ちゃんがやってきたことは許されることじゃない。


 犯罪だし。


 通報すれば捕まるし。


 でも、私はまだまだステージに立つ梨奈ちゃんが観たい。


 アイドルとして頑張る彼女を応援したい。


「嫌いになんてなれないよ」


 正直、ストーカーの正体が梨奈ちゃんだとわかって、ほっとした部分はある。


 いや怖かったけど。


 恐怖しかなかったけど。


 冷静に考えれば、推しからこんなにも愛してもらえるなんて幸運、あり得ないこと。


「良かったあ。奈々子ちゃんならそう言ってくれるって信じてた」


 表情を一変させ、嬉しそうな梨奈ちゃん。


 ストーカーを許すなんてどうかしてる。


 他の人はそう言うんだろう。


 残念ながら私は、そういう真っ当な人間じゃない。


 心のどこかがぶっ壊れている人間もどき。


 そんな私に惚れてしまった梨奈ちゃんも、きっとどこか壊れている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る