第11話 ストーカーの正体見たり 2/3
「そんな……どうして私なんか」
「もうっ、相変わらず自己肯定感が低いんだから」
これまでいろんな表情の梨奈ちゃんを見てきた。
いろんな会話を交わしてきた。
だけど、目の前にいる梨奈ちゃんのことが一ミリも理解できない。
「それはねえ、奈々子ちゃんのことが好きだから!」
「は?」
私のことが好き?
「そう。好きなの」
いつの間にか両手をとられ、そっと握られていた。
「初めて握手会に来てくれたあの日、恋に落ちたの。奈々子ちゃんの順番が終わってもずーっと胸が高鳴ってね、終わって家に帰ってからも頭の中は奈々子ちゃんのことでいっぱいだったんだよ」
手を引きたい。
彼女と距離をとりたい。
なのに、カラダが動かないのはどうして。
怖いから?
恐怖を覚えているから?
「一目惚れ……ってやつなの」
「そうそう。あっ、恋に落ちた理由なんて聞かないでよね。直感だったんだから」
楽しそうに語る梨奈ちゃんの表情は、恋する乙女そのもの。
そんな顔されたら、拒否なんてできない。
拒絶することもできない。
私だって、梨奈ちゃんのことが誰よりも好きだから。
世界で一番愛しているから。
きっと私たちの『好き』のベクトルは違う。
想いの強さは違う。
けれど、考えたことがある。
梨奈ちゃんが私だけのものになってくれたらって。
握手会だけじゃなくて、もっと頻繁に会える間柄になれたらって。
「ねぇ奈々子ちゃん、私のこと……嫌い?」
私の手を握るその両手に力を込め、大切な推しは不安そうに言った。
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