第4話 不気味

 握手会での幸せを胸いっぱいに抱えて帰宅。


「はぁ……今日も梨奈りなちゃん可愛かったなあ」


 ステージではいつも通り最後列の一番端でしたけど。


 私は梨奈ちゃんしか観えてないので関係ないです。


「てか、あんなに可愛い梨奈ちゃんをフロントにしないなんて、運営どうかしてるよ」


 Push☆Pushプッシュ・スター・プッシュは4期生が入って29人になってから、選抜制になった。


 梨奈ちゃんは毎回選ばれるわけじゃない。


 選ばれたり選ばれなかったり……どちらの割合が多いかと言えば、ギリ選抜される割合が上回る。


「グループの中で一番ツインテールが似合ってるし、THE アイドルなのになあ。もどかしい」


 ここで漸く靴を脱ぎ終わり、荷物を引きずりながらリビングに入る。


 ライブと握手会、楽しいんだけどね。


 疲れるんですよ。


 こればっかりは仕方ない。


「……って、え?」


 待った待った待った待った。


「なんで……あるの」


 今日はポストに封筒がなかったから完全に油断してた。


 まさか、リビングのテーブルの上にピンク色の封筒があるなんて。


「嘘でしょ」


 侵入されてるじゃん。


 なんで、どうして。


 どうやって。


「……あっ」


 封筒を手に取った瞬間、気がついた。


 合鍵、ポストに入れてんじゃん。


「私の馬鹿っ」


 ストーカーされてるっていう自覚もたなきゃ。


 誰も助けてくれるんだから。


 兎に角、すぐに合鍵を回収しに行こう。


「その前に」


 気になる。


 封筒の中身が。


 いつもと同じだろうけど。


 こんな私に執着してくれる誰かの存在が、不気味であると同時に、どんな写真を撮っているのか気になって。


 毎回封を開けてしまう。


「あぁ……やっぱり一緒だ」


 うん、確認するまでもなかった。


 けれど、絶妙に毎回角度が違うんですよね。


 同じ横顔でも。


 同じ後姿でも。


「はぁ」


 ため息しかでない。


 はい、さっさと合鍵を回収しに行こう。

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