第5話 観察記録 Ⅲ *〇〇*

*〇〇*


 ☆月□日


 今日も奈々子ちゃんがSNSに私のことを呟いてくれてる!


 ちゃんと写真を見てくれて嬉しい。


 無視だって、見ずに捨てることだってできるのにねえ。


 変に律儀なんだよね。


 そういうところが好きなんだけど。


 可愛いね。


 あと、今日も握手会に来てくれた!


 無職だからあんまり無理してほしくないんだけど、何回も列に並んでくれて嬉しかったなあ。


 褒めちぎってくれたし。


 最高。


 幸せすぎて心がとろけそうだった。


 センターどころかフロントになれなくても、奈々子ちゃんが観てくれている。


 最後列の端にいたって、奈々子ちゃんが見つめていてくれる。


 握手会だって何回も並んでくれる。


 ホント、私って愛されてるよね!


 だけど……アイドルとファンの関係、それだけじゃ満足できない。


 ストーカーとストーカーされる側。


 盗聴器と監視カメラで見ているだけじゃ、物足りない。


 貴女が私だけを見つめてくれるように、私も貴女だけを見てる、愛してるんだよ。


 早く伝えたい。


 直接言いたい。


 わがままかな?


 わがままじゃないよね。


 当然の願望だよね。


 欲望って言った方が正しいのかな。


 どうしようかなあ。


 多分奈々子ちゃんならストーカーの正体が私だって知っても受け入れてくれる、はず。


 もし拒否されたらどうする?


 うーん。


 そんなマイナスなことを考えるのはやめよう。


 絶対、奈々子ちゃんは受け入れてくれる。


 私だけのものになってくれる。


 私だけのものにしてみせる。


 私だけの世界に閉じ込めてみせる。


 さてさて、新しい目標ができたことだし。


 どうやって正体を明かすか考えますか。


**

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