第10話 舞踏旅団ウーダオ・クラン

アストラは広野に大の字になり、気を失った。


あたかし、そこへ馬車が通りかかった。


舞踏旅団のウーダオ・クランである。

彼女たちは9人の踊り子で構成された、世界各地を旅する舞踏集団である。


「なんか男の子くんが倒れてる!!!」

構成員メンバーの一人、チャラガが叫んだ。


「ええ~~~?!」

姉貴分のチョスリがそれに応じる。

「マジかよ~~~!!!どぅ~する?!拾う?!!?」


ちょっと控えめなソフォンが口を開いた。

「このままじゃ野垂れ死にしてしまいますから…」


…ということで、アストラは彼女たちに引き上げられ、馬車の荷台に積まれた。

「ソフォン、毛布でもかけといてやってくれ。」


ややあって、向こうから王国の騎兵たちが二人ばかり馬にまたがってやって来た。



「おおい!止まれ!」


旅団は馬車を止めた。


「なんすか?また点数稼ぎっすか?」

チョスリがふてぶてしい態度で馬車から降りる。


「ゲッ、お前らはウーダオ・クラン…」


「あっ、覚えててくれたんすねぇ。その節はどうも。ウチのメンバーに手ェ出そうとして失敗して挙句、ウチらを城下町出禁にしてくださった大臣様は元気っすかぁ?」


「ぐっ…!」

騎兵はひるんだ。人間性ゴミの伴食ばんしょく大臣の尻拭いばかりさせられてるからである。

現場職はつらいよ。

騎兵は気持ちを切り替えてチョスリに尋ねた。

「今はそれどころではない!年の頃15ほどの少年を見なかったか。」


チョスリは内心ぎょっとした。たった今拾った少年じゃね…?!が、特技はポーカーフェイスなのでシラを切った。

「見てねーっす」


騎兵は食い下がる。

「ほほぅ。城下町の人間がこちらの方角に逃げたと証言していたがな…。ヤツは悪魔召喚魔術を使い王の暗殺と国家転覆を目論んだ極悪人だ。かくまうとロクなことにならんぞ。とりあえず、馬車の荷台を見せてもらおうか!」


チョスリは、まずいと思ったがここは以心伝心の仲間たちに託すことにした。


騎兵が荷台の幕を開けた!


「どうだ!」


その瞬間、乙女たちの裂帛れっぱくの叫び声が響き渡った。


「きゃーーーーーーーーーーーーーーーー!!!変態ぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


なんと、荷台で踊り子たちが着替え中だった!


「ああっ!えっ?!あっ、これはそのっ!違っ…」


慌てる騎兵にチョスリがトドメを刺す。

「っぱ大臣が変態だと部下も変態かぁ!この覗き魔!隣国に言い触らしたろ」


「ちっ、違うじゃ~ん!っていうか言ってよ~!!ひどいじゃんそれは」

もはや騎兵としての矜持きょうじはどこへやらという狼狽うろたえぶりである。


騎兵たちは慌てて逃げていった。


チョスリが仲間たちの方を見ると、したり顔でウインクしてきた。

チョスリはほっとした顔でウインクし返した。


だが、一難去ったはいいが、拾ってしまったこの少年。

さっきの騎兵たちの話は本当だろうか。


さて、どうしたものか…。

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