第7話 初陣

 「なんだお前ら、体術はできるじゃねえか。カロンのやつから教わったのか。」


 ある程度機獣の出力などの訓練を終えて、カイたちは実戦訓練をしていた。


 「いえ、カロンさんに拾われる前から戦闘訓練はしていたので。」


 「なぁるほど。」


 「というか、暁さん強すぎませんか。カロンさんと比べても大分力の差がある気がしますけど、」


 と汗だくになりながらカイが言う。


 「そりゃそうだよ。」


 東の後ろからカロンが歩いてくる。


 「ソラたちはどうしたんだ?」


 「もう休憩ですよ。」


 「やっぱ暁さんってめちゃくちゃ強い人なんですか?」


 「そりゃあもう、千夜でも最強戦力と言われてるような人だぜ。」


 「……。最強ねぇ。お前らは知らねえだろうが世の中には俺ですら手の届かねえ程強いやつだっているんだぜ……。」


 暁は訓練場の窓から空を見上げながら言った。訓練場のある建物は30階ほどあり、薄汚れた鉄のビル街がよく見える。


 「カイ~、東~、訓練お疲れ~。」


 ヴィオラとソラが2人の前に現れる。


 「東君。はい、お水。」


 ソラが東に水を渡す。


 「ぁ、あ、ありがとう。」


 「はい。カイも。」


 「ありがとう。」


 カイに水を渡すヴィオラを東はチラリと見る。それに気づいたカイは東の方に近寄る。


 「東。とりあえず乾杯だ。」


 「な、なんの?」


 「なーんでも。」


 「ミャー」


 クロが東の膝の上に乗る。


 そんな感じで1ヶ月がたった。


 カイたちは発注された千夜の軍服を着た。訓練場のある建物を出て、港まで進んだ。港の広場には多くの人が集まっていた。


 「すっげえ人混みだな。」


 「はぐれるなよ。」


 カロンが注意する。


 「暁さんとソラは?」


 「暁さんは戦力的にもな、違う戦場への配置になってるんだよ。ソラは暁さんの正式な弟子だから向こういってるんだよ。」


 「なるほどです。」


 「まあ東のこともあるしそんなに離れた場所にはいないさ。」


 「さて、いよいよだ。お前らにとっては最初の戦争だ。そして戦場は、」


 「……。俺たちの故郷。」


 東は沈黙しつつ深く息を飲んだ。


 「大丈夫、落ち着いて。」


 ヴィオラは東の背中をさする。今まで頑なに固い顔をしてた東の表情が少し和らぐ。


 「ありがとう。ヴィオラ。」


 「総司令からの連絡が来た。行くぞ。」


 「はい!!」


 カイたちはカロンに続いて巨大な船に乗り込んだ。目的地はもちろんカイたちの故郷であった機獣島だ。


 船に乗ったあと、それぞれの班ごとに部屋が与えられた。カイたちはカロンの班として行動することになっていた。


 「そうだ。実戦前にお前らに教えておくことがある。」


 「なんですか?」


 「機獣は戦力や危険度によって階級みたいなもんでわけられている。」


 「無防備な人間相手なら一方的に打ち勝つことができるクラスD。クラスDなら基本難なく倒せるだろう。」


 「そして通常兵器でトントンくらいのクラスC。一般的な兵士では少ししんどいだろうな。今のお前らは多く見積もってもクラスCだろうな。」


 「通常兵器ではまず倒せないクラスB、討伐の際は他の班との連携が要となってくるだろう。」


 「単体で1つの軍隊と張り合えるクラスA、出会ったらとにかく逃げろ。戦おうなんて絶対に考えるな。」


 「軍隊と……。」


 「最後はクラスS、単体で世界を滅ぼすことができると言われている。まあそんな神みたいなやつまず遭遇することはないだろう。」


 「せ、世界を!?」


 「ああ。だがまあクラスSに関しては噂みたいなもんだ。忘れていい。お前らはとにかくクラスAのことを警戒しておけ。」


 「わ、わかりました。」


 その後、長い航海を終えてカイたちはかつての故郷であった機獣島に着いた。


 「1月ぶりだな。」


 「ああ。」


 カサカサとどこか懐かしい音が聞こえてきた。


 「お出ましのようだな。」 


 「各班船から降り次第、順次突撃せよ!! 繰り返す、各班船から降り次第、順次突撃せよ!!」


 「そんな無茶苦茶な戦法でいいのか、」


 「そのための班分けだ。行くぞ。」


 「おっす。」


 カロンに続いてカイたちは島の中心に向かって突撃した。ついにカイたちの初陣であり仇でもある戦いがはじまったのだ。



 


 

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