第3回 頭に「う」のつく映画といえば?

「う」から始まる映画のタイトルで、パッと閃いたのは……「宇宙戦争」なのですが(トム・クルーズ主演のリメイク版ではなく、オリジナルの昔のやつ)、あえて有名タイトルは外すことにして。


 他に思いつくのは「宇宙大怪獣ギララ」「宇宙刑事ギャバン THE MOVIE」「宇宙空母ギャラクティカ」の劇場用編集版とか……えーと、「宇宙」がつくタイトルばっかりだな、と考えたところで閃きました。


 今回紹介するのは「宇宙人ポール」。原題は「Paul」。


 2011年のアメリカ・イギリス合作映画。監督はグレッグ・モットーラ、出演はサイモン・ペッグ、ニック・フロスト、クリステン・ウィグほか。


 あらすじはこちら。


 アメリカのコミック業界最大のイベント「コミコン・インターナショナル」(知らない人は、オタクが集まるイベントだと思って下さい)に参加するため、イギリスからやって来たコミックオタクの若者、グレアムとクライヴの2人。


 そんな彼らのもう一つの目的は、アメリカ西部に点在する有名なUFO関連の名所を巡ること。彼らは、SFオタクだったのです。


 さっそくレンタカーでドライブに出ますが、ネバダ州のエリア51(UFOが墜落したという都市伝説がある区域)を通過した辺りで、いきなり車の事故現場に遭遇。

 様子を見に近づいた二人の前には、子供のような身長で銀色の肌、巨大な目、大きな頭、細い手足の、いわゆる典型的な宇宙人「リトルグレイ」が姿を現わしたのです。


 “ポール”と名乗った宇宙人は、数十年前にUFOで地球に不時着して以来、政府機関に囚われの身となっていて、なんとか逃げてきた、と語ります。仲間の宇宙人との合流場所を目指していたのでした。


 グレアムとクライヴは、アメリカ文化に染まりきったポールの言動(英語はペラペラだし大麻だって吸う)に戸惑いつつも、彼を故郷の星に帰してあげようと一肌脱ぐことにしました。


 宇宙人ポールと、それを助けて「目的地」を目指すSFオタクふたり(+途中で拾った女性ひとり)、宇宙人を追跡する謎の捜査官、娘を誘拐されたと勘違いしてショットガンを手に追いかけてくる頑固オヤジたちが織りなすSFコメディです。


 ポールを初めて見た時、クライヴは驚いて気絶してしまうのですが、ポールも「俺だって初めて人間見た時は気絶したよ」とジョークを飛ばしたり。


 このポールのキャラクターが立っていて、実に愉快なヤツでして。


 ポール曰く、「E.T.」製作中のスピルバーグにアイデアを出してあげたり(回想シーンで、電話で会話している場面の声は、なんとスピルバーグ本人の出演!)、「X-ファイル」のモルダー捜査官などのアイデアも自分がアドバイスしたんだと自慢したり。


 フィクションだと思っていた「宇宙人ネタ」に、裏で「本物の宇宙人」が関わっていた、と次々明かされるユーモア。

 宇宙人を扱ったSF作品を中心とした、映画に対してのパロディやリスペクトが、この作品全体にはたっぷりと詰まっています。


 主人公の二人も、ずーっと「スターウォーズ」のTシャツを着ていたり、「スタートレック」のクリンゴン語で会話したり。

 そしてポールに「これだからオタクって奴は」とツッコまれたりしています。

 宇宙人に呆れられる地球人のSFオタク。オタクの鑑ですな。


 冒頭で張っていた伏線が、意外な形で終盤に登場し、感動するシーンもあったりして。


 宇宙人を軸とした友情・成長・ラブロマンス、そして多分なSFパロディ要素とコメディ要素。

 トラブルを乗り越えながらの追跡劇の珍道中。

 王道の展開ですが、ワクワクしながらあっという間に最後まで見られる傑作です!


 予備知識ナシでも面白いとは思いますが、映画パロディの元ネタが分かると、もっと楽しいです。

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