天国での暮らし

ぴろわんこ

第1話

私は八十歳で亡くなった。主人は七十五歳で二年前に亡くなっている。主人は天国で私を待ってくれていることだろう。


子どもを二人育て上げて孫の顔も見れた。ケンカも何度かしたけれど、まあまあ理想的な夫婦だったという自負はある。

しかしどこにも天国に主人の姿は無かった。おかしいと思い天使に尋ねた。


「あなたのご主人からはあなたへの絶縁状が出てますよ。これを出されると家族だろうと、恋人だろうと再会はできません」

「え、そうなんですか。しかし妻の方が夫に会いたくないという話は、よく聞きますが逆はあまり無いような気が…」

「いや、最近は珍しくはないですよ。男性の方が能力を身につけろ、優しくあれ、上手に立ち回れ、男の方が全部悪いんだ黙って耐えろとか、いろいろ要求されますからね。生きているうちは仕方がないけれど、あの世では安らぎをくれ、あいつの顔は見たくないという男性も多いです」

「はあ、そうなんですか。では私は一人で過ごして行けばいいのですか?」

「ええ、それでいいと思いますよ。無理にパートナーを決める必要はありません。運命の人というのは単に人間の錯覚、思い込みですから」

ああ、そうなのか。若い頃は主人を運命の人と思っていたけれど、単なる錯覚だったのね。そういえば主人から絶縁状を出されたみたいだけど、特に喪失感や悔恨も無い。これからは私も、一人で楽しく過ごしていこう。

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天国での暮らし ぴろわんこ @pirobigdog

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