彼女の男友達…

絵理とパブロの遠距離恋愛中に、絵理には仲の良い男友達ができていた。

名は小林湊(みなと)。

絵理のもとに帰ってきて、湊の存在を聞きパブロは焦った。

が、パブロは湊と話してみると意外に気が合って、いつの間にか親友と呼べるくらいまで仲良くなっていった。


そんな、3人の話…



※ 『腹黒男子は遠恋中の彼女に片思い』に3人(主に絵理と湊)の話がおさめられてます。





パブロが初めて湊に会った翌日。

「ね、絵理」

「何?」

2人は一緒に洗い物をしていた。

「昨日初めて、湊に会ったけどさ。なんか、口悪いけど人懐っこいやつだな」

「…人懐っこい?」

「…え、うん。あれ?違うの?」

「…猫かぶってなかった?」

「…むしろ逆だったよ」

「逆って?」

「…性格悪い?」

「あははっ」

「…何?」

「いや。湊って器用に人と付き合ってるから。本性出すの早すぎて…」

えりは面白そうに笑った。

「…俺と、友達?になりたそうだったけと…。違うのかな…」

「そうなの?」

「たぶん」

「へぇ…。パブロってすごいね…」

「何が?」

「懐かない猫が一瞬で懐く、みたいな…」「絵理には懐いてるの?」

「あははっ」

(あははっ。じゃなくて。どっち?)

「よし、コレ最後〜」

絵理は洗剤で洗ったフライパンをパブロに渡す。

パブロは水で泡を流す。


「はい」

絵理はパブロにハンドタオルを渡した。

「ありがとう…」

パブロは使ったハンドタオルを絵理の方へポイッと放り投げた。

「ちょっとっ!」

絵理は、ギリギリでキャッチできた。

「やめてよ、もうっ」

絵理は笑いながら言った。

がパブロは笑っていなかった。

「絵理は…」

「何?」

パブロは絵理が湊と仲がいいのを100%受け入れられずにいた。 

「湊といつ仲良くなったの?」

「えー、中3の時かな。孝司と春乃ちゃんがまだ幼稚園の時に、一緒に遊んだり…」

「…孝司までとられんのかよ…」

パブロはボソっと言った。

絵理はそれに気が付かなかった。

「高校も同じだったから、たまに学校で話したり…。っていう感じかな」

「…めっちゃ王道の青春…」

パブロはまたボソっと言った。

「青春?」

(そんな変な所だけ聞こえてんなよ…)

パブロの顔はどんどん固くなる。

「俺が、死にそうなくらい勉強してる時に、ずいぶん楽しそうに過ごしてるんだなって…。ムカつく…」

「あ…。…ごめん…」

パブロは絵理を睨んでその場を離れようとした。

絵理がとっさにパブロの服を掴んだ。

「ごめん…」

「もういい…。はなせよ…」

パブロは服を引っ張った。

「やだ」

「はなせ」

絵理の手から、パブロの服がはなれた。

「待ってよ」

「待たない。寝る」

パブロは歩きだした。

「やだぁ」

絵理は泣き出した。

「行っちゃやだ」

絵理は子供みたいに泣いた。

「ちょっと…、声聞こえるから…」

パブロは他の家族が心配して来るんじゃないかとヒヤヒヤした。

「わかったから」

パブロは絵理の近くに戻った。

それでも絵理は泣き止まなかった。

「もう…」

パブロはため息をついて、絵理の頭を撫でた。

それから徐々に絵理の涙が止まっていった。

「ごめん…」

絵理は改めて謝った。

「いいよ…もう」

「ごめん…」

「…違う」

「え?」

「俺が…、ヤキモチやいてただけ…」

「え…」

「絵理が湊と仲良さそうだったから、やいてただけ!」

パブロは恥ずかしくて顔が赤くなった。

絵理はパブロに抱きついた。

パブロも抱きしめ返した。

「パブロ、好き…」

「…うん。知ってる…」

「知ってるんかい」

「知ってるけど…」

「お願いだから、離れていかないで…。もう、離れたくない…」

「うん…」

(…心配しなくて大丈夫…か…)

パブロはようやく少しホッとした。

「私も…、少しっていうか結構、心配してた」

「何を?」

「浮気…?」

「腹立つな」

パブロは絵理の両頬をつねった。

「…誰のために死ぬほど勉強したと思ってるんだよ」

「私?」

「そうだよ」

「そっか…」

「そうだよ。バカ」

今度は、両頬を手で包みこんだ。

「…もう、お互いヤキモチやくの止めよ?」

「うん…」

「ちゃんと、ずっと一緒にいよ」

「うん」

2人はキスをした。



「湊の事も、俺、嫌いじゃないよ」

「そっか」

2人はパブロの部屋のベットに座って話していた。

その手は、繋がれていた。

「…喋りやすかったし」

「ふふっ」

「何?」

絵理はパブロの肩に寄りかかった。

「パブロと湊が仲良いの想像したら面白くて…」

「何で?」

「何だろ。ずっとじゃれて言い合いしてそう」

「…絵理は湊とじゃれてるの?」

「じゃれてはいないよ。…ただ、頼りにしてる」

「俺の事は?」

「頼りになるし、じゃれてたいし、喧嘩したいし、こういうふうに一緒にいたいし…」

「…全部、したい?」

「うん…」

「絵理…」

「ん…」

「ここで一緒に眠る…?」

「…そういえば眠い…」

絵理はパブロの肩に頭を乗せたまま、瞳を閉じた。

(…そういう直接の意味じゃないんだけどな…)

パブロは絵理の頭を撫でた。

「いつか、ちゃんと手だすからな…」

パブロは絵理の鼻をギュッとつまんだ。

「……」

絵理は無反応だった。

「相変わらず、寝たらなかなか起きないんだ…」

パブロは絵理の耳を触った。

「んー…」

絵理は怒ったようにその手を振り払って、そして寝た。

「アホらし…」

パブロは絵理をそっと寝かせて、自分は勉強を再開した。


(ずっと一緒にいるなら、勉強しなきゃ…)

パブロは大学の卒業試験に受からなければ、この場所から去らなければならない事になっていた。

パブロは眠っている絵理の顔を見た。

(呑気なやつ…。ま、そこもいいのか…)



次の日の朝。

「あれ…」

絵理か起きると、パブロの部屋のベットて寝ていたのに気がついた。

隣にはパブロが寝ていた。

絵理はパブロと背中合わせに寝ていたので、ホッとした。

「パブロ…」

絵理はパブロの肩を揺すった。

「ん…」

パブロが目を覚ました。

「えり…、おはよ…」

パブロは眼をこすった。

そして、絵理の首に手をまわして、自分に引き寄せた。

「眠い…」

「うん…」

絵理もパブロを抱きしめた。

「…パブロ、時間…」

「うん…。もうちょっと…」

パブロは絵理を強く抱きしめた。

「遅れちゃうよ」

絵理も強く抱きしめた。


「んー…、じゃ起きるか」

「うん。急がなきゃ」


2人は一緒に部屋からでた。

丁度、それを兄の博之が見ていた。

「…パブロー!何してんの!」

「え…、何もしてないです…」

パブロは焦って否定した。

「…そんな安易な行動とるな!」

「すいません…。でも、本当に何にも…」

「そうなのか?絵理」

「うん…。ただ私がパブロのベットに寝ちゃっただけで…」

「…一緒に寝たのか!」

「…いや…。…はい。でも、手は出してません」

「絵理そうなのか」

絵理はさっきの事を思い出して顔が赤くなった。

「…パブロー!」

(絵理のバカッ…!)



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