孝司の彼女?

「ただいまー」

パブロが仕事を終えて家に帰ってきた。

「おかえりー」

絵理がキッチンから大きな声で応えた。


パブロは、今、魔法界が運営する、人間界の病院で医師として働いている。

このような病院は、世界各地にあり、災害時に、その国の魔法界の医師達は、現場に行き人命救助をする。

それ以外の日は、魔法は使わず普通の医師として働いている。

パブロは外科医だ。


「絵理ー、疲れた」

洗い物をしている絵理を後ろから、抱きしめ、体重をかける。

「重い!」

もっと体重をかけた。

「危ないから!」

「今日のご飯、何?」

「唐揚げ」

「谷川家、唐揚げ多いな…」

「そう?」

「初めて会った時も、唐揚げ食べさせてくれたし」

「そうだっけ?」

パブロは絵理から離れた。

「じゃ、食べよ。パブロ、お味噌汁運ぶのお願いしていい?」

「ほい」


「孝司ー、ご飯」

パブロが大声で呼ぶと、孝司は部屋から出てきた。

「げ、ワカメの味噌汁じゃん」

「何?ゲッて。せっかく作ったのに」

「俺、ワカメ少ないやつがいい」

「子供だなぁ」

「子供です。あ、これがいい」

孝司は、自分の前に置かれたお椀と絵理のお椀を取り替える。

「ちゃんと食べて、体強くしなきゃ…」

絵理が言うと

「最近、絵理、母ちゃんみたいでやだ」

「うわっ。ショック…」

「アハハッ。まぁ、いいじゃん。好きなの食べれば」

絵理がジロリとパブロを睨む。

「俺は孝司が美味しそうに食べてる顔、見るの好きだよ」

「父ちゃんかよ…。知らんけど…」

「ショック…」

「ウザ」

(これが反抗期…?)


孝司は、絵理を冷めた目で見た。

「別に反抗期じゃないから」

「そうなの…?」

「こんな頼りない父も母もいりません」

「うっ…」

「俺には、親いないのが普通なんだから」

「そっか」

「普通にしてよ」

「うん。ん?…。普通って何…?」

「知らねーよ」

「私の事、突き放すよねー…」

「俺は?」

「兄ちゃんとは、友達みたいな感じでいたい」

パブロは絵理を見て、ドヤ顔をした。

「親友だ」

「…そこまでじゃない」

今度は絵理がパブロの顔を見て、ニヤッとした。

「…なんか…、ウザ。食べよ」

パブロも絵理もシュンとなった。

孝司はそれを見て失笑した。


「ねぇ、医者って大変?」

孝司がパブロに聞いた。

「ま、そうだね」

「何で、医者になることにしたの?」

「人間界での仕事って、医療関係多いから。それきっかけなんだけど…」

「へぇ。意外とクールだね」

「そう。でも、人を助けたくて。絶望が希望に変わるって、すごいじゃん?」

「…言ってて、恥ずかしくないの?」

「…言った後で、恥ずかしくなった」



「孝司は本気で、医者になるの?」

唐揚げを食べながら言う。

「まだ、わかんない」

「孝司の人生なんだから、あんまり周りに影響されすぎんなよ?」

「医者はやめてってこと?」

「違う。明確な目的とか、覚悟とか、意志とか、自分の中で、確立できたなら、それでいい」

「うーん…」

「ゆっくり考えたら?」

「俺、来年中学だよ?悠長なこと言ってられないよ」

「わお…。大人…」

冷やかされて、孝司はギロリと睨む。




「話変わるけど、春乃ちゃん、元気?」

絵理が言った。

「普通に元気だよ?どうかした?」

「いや、なかなか会わないから」

絵理は、春乃が孝司を好きなのを知っている。

(2人の関係は、今、どうなってるんだろ…)

「この前、湊君、彼女連れてきててさ。春乃、機嫌悪かった」

孝司は笑った。

「ブラコンぽいもんね」

「ぽいじゃなくて、しっかりブラコンだよ」

「あはは。春乃ちゃん好きな人とかいないの?」

「ん?いないと思うけど。年上がいいんだって。しかもイケメン」

「…そなの?」

「うん、なーんか違和感あるんだけど…。ま、そうなんだって」

「ふーん」

「孝司は、春乃ちゃんの彼氏、どんな人がいいと思う?」

「誰でもいいけど?」

「誰でも?変な人だったら?」

「変てなんだよ…。ま、しいていうなら…。年上、イケメン、優しい、頭いい、運動神経いい、背高い、面白いみたいな人が、いいんじゃない?」

「ハードル高すぎない?」

「春乃ならそれくらいの、捕まえられるでしょ」

「優しい、背高い、頭良い、話が合うなら?」

これは孝司のことだ。

「ん?まぁ、いいんじゃない?」

「孝司には、美人、頭が良い、明るい、しっかり者、話が合う人、がいいな」

これは春乃のことだ。

「条件多すぎでしょ」

「いや、この条件がいい」

「無理だと思うよ」

「いや、いける」

「…」


「パブロ兄ちゃんは、絵理のどんなとこがいい?」

「え…。呑気?まぁまぁかわいい。まあ、優しい…」

「だから、俺もそんな程度の人と付き合うんだって」

「おいっ!」

「美人とか、しっかり者とか、高望みしてたら、彼女なんてできないでしょ」

「彼女が、できればいいってもんじゃないでしょ」

「…。そう?」

「そうだよ」


「でも、俺、意外とモテるんだよ」

孝司は味噌汁を飲む。

「え?そうなの?」

「うん。噂程度だけどね。あー、ワカメ。多すぎ…」

(こんなんが…?)









※スピンオフあり

・幼馴染の恋15歳 (孝司&春乃)

・幼馴染の恋16歳(孝司&春乃)

・ずっと好きって言いたかった(パラレルワールド。湊&えり)

・腹黒男子は遠恋中の彼女に片思い(湊&えり。少しパブロ)




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