あれから4年  無理矢理のキス

再会から4年がたった。

絵理は20歳、パブロは22歳になっていた。



ピンポーン

夜9時。谷川家のチャイムが鳴った。

「はーい」

孝司が出た。

ガチャッ

扉を開けると、酔っ払った絵理と肩を貸してくれてる男友達らしき人がいた。

「絵理何してるの?!」

「う…ん、酔っちゃった…」

「ごめん、飲めないの知らなくて、お酒勧めちゃって…」

男はそう言って、絵理を玄関に座らせた。 


「もう!絵理しっかりしなよー。姉がご迷惑をおかけしました。」

孝司は男に頭を下げた。

「いやいやこっちこそごめんね」

「送ってくれてありがと…。有馬君…」

「うん、じゃまた明日」

有馬はそう言うと、家を出た。


「孝司、どうしたー?絵理帰って来たのー?」

有馬が玄関を閉める間際に、孝司とは違う声が聞こえて、振り返ると、男の人がチラついた。

(お兄さんかな…?)



「うん、絵理お酒飲んじゃったみたい…」

「…う~ん…。気持ち悪い」

「おーい、大丈夫か?」

「無理…」

「しょうがねぇな…ヨイショッと」

パブロは絵理を抱えてベットまで連れて行った。


「水いる?」

「うん…」

パブロは水を汲んでくると、絵理に飲ませた。

「もう酒飲むなよ」

「うん、ごめん」

というと絵理は寝てしまった。


パブロは孝司のいるリビングに行った。

「絵理寝たの?」

「うん、寝たわ」

「パブロ兄ちゃんごめんね、勉強忙しいのに…」

「な」


現在、谷川家は絵理と孝司とパブロの3人暮らしだ。姉の和美は結婚して家を出て、兄の博之はなんと転勤でアメリカに行った。


パブロは、人間界に帰ってきてすぐ、1人暮らしをしていたが、博之の海外勤務が決定したとき、絵理と孝司だけでは不安なので、パブロもまた一緒に住むことになった。


「ま、ついでにちょっと休憩するわ」

パブロはリビングでゴロンとした。

「毎日、勉強大変だね」

「うん。死ぬ気でやってるよ」

「成績1位だもんね」

「孝司もじゃん。」

「俺さ、パブロ兄ちゃん見て育ってるからさ、これくらい勉強するのが当たり前って思ってて」

「偉い偉い。俺の影響だ」

「偉そ〜」

2人は笑った。

「卒業試験もうすぐ?」

「うん」

「絵理は何も知らずのんきだね」

「うん。絵理には言わなかったからね」

「10位以内で合格しないと、こっちに残れないって?」

「うん」



次の日、絵理の大学にて。

「おはよー。有馬君、昨日はごめんね〜」

絵理は有馬を見つけたので、声をかけた。「おはよ。全然大丈夫だよ。絵理ちゃん、二日酔いじゃない?」

「うん、ちょっと…」

「絵理!おはよー。昨日は大丈夫だった?」

梨花がやってきた。

「うん、有馬君に送ってもらってなんとか…」

「へー、有馬に!」

「絵理ちゃんの弟がさ、めっちゃ大人なの。小学生?ご迷惑おかけしましたって言われた」

有馬は笑った。

「弟は、私よりしっかりしてるから」



「ゼミ終わるの遅くなったから、送るよ。」

今日も、有馬が絵理に声をかけた。

時刻は、夜の8時だった。

「全然気にしないで。一人で帰れるから」

「うん、じゃ途中まで…、方向同じだし」


断りきれずに、絵理は有馬と帰る事になった。

(2人はちょっと嫌だな…。)

「梨花がさ、彼氏と別れたけど、もらった指輪とかどうしようって言ってて」

有馬が話し始めた。

「あー、困るよねー。梨花なら売りそう〜」

「あー売りそう売りそう。…絵理ちゃんならどうする?」

「うーん、私なら普通に捨てるかなぁ」

「元彼の捨てたりしたの?」

「あー、元彼っていうのがいないからなぁ…」

「…へー…」


その頃、谷川家では。

「なぁ、孝司ー」

「何?」

「絵理、帰り、遅くない?」

「そう?こんくらいの時もあるよ」

「ふ~ん」

孝司は、ふと、昨日絵理を送ってくれた男の人が頭をよぎった。

絵理が男の人に送られて来たことは、パブロには話してない。

(俺、偉すぎない?)


パブロは気づいてた。

(孝司、絵理の事で、何か隠してるっぽい)


「ちょっと見てくるわ。」

「え…、うん」

(絵理、頼むよ…)

孝司は祈った。



黙る有馬を見て、絵理は不思議に思った。

「ん?元カノにあげたもの捨てられるの嫌なの?」

「嫌、えっと。好きです!!」

(声大き…)

「え?」

「付き合って下さい!!」

(声のボリューム…)


「あ、無理だわ」

絵理と有馬は声のする方を見た。


パブロが立っていた。

「パブロ!どうしたの?」

「遅いから、ちょっと様子見に」

「ごめん」

「うん」


「あ、ごめんね。」

パブロは有馬に言った。

「絵理は俺の彼女…なので」

「え、あ、そうだったんですね!梨花に聞いたら、絵理ちゃん彼氏いないんじゃないかって言ってたから…。うわっ、すいません!」

「ごめんね。あんまり、人に話してなかったから」

「いや、ごめん!すいませんでした!じゃ、また」

「うん、ごめん…。バイバイ」


絵理とパブロはなんとなく黙ってしまった。

「俺の事、友達に、話してなかったの?」

(ギクッ)

「うん…、一緒に暮らしてるとか、出会いとか特殊で話すの面倒くさくて…」

「…」

「ごめん…」


気まずいまま、家に着いた。

「ただいまー」

「おかえりー。無事に会えた?」

奥のリビングから孝司の声が聞こえてきた。

「無事じゃなかったー!絵理告白されてたー。道のど真ん中で、めっちゃ大きい声でー!」

(うわっ!!めっちゃ怒ってる!!)

「あぁー…。ばか…」

孝司は呟いた。

「じゃ、勉強あるんで」

パブロは足早に部屋に入ってしまった。


絵理はとぼとぼリビングに行った。

「おかえり」

「ただいまー…」

「ちゃんとして下さい」

(丁寧に怒られた…)

「いや、だって向こうが、急に告白するから…。どうしようも…」

「…時期の問題だよ…!今、パブロ兄ちゃん大変なのわかってる?!」

「はい…。もうすぐ試験だもんね…」

「ちゃんとして下さい」




夜11時。

絵理はお風呂から上がってキッチンで洗いものをしてた。

その音に気づいたパブロがキッチンにやってきた。

「おい…」

「…はい…」

絵理は気まずそうに、パブロの方を向いた。

パブロは、いきなり、絵理の両方のほっぺを引っ張った。

「…なんか俺に言う事ある?」

「…今日はごめんなしゃい…。」

「うん…。他には…?」

ほっぺはつねったまま。

「ほか?!…。もうこんなことないように、気をつけまふ」

「後は無いの?」

「へ?…」

言葉が詰まると、パブロはほっぺを離した。

「…わかった。じゃ、おやすみ」


(え?!なんて言えば良かったんだろ…)

部屋にもどるパブロの背中を見ながら考えてたら、急に振り返って絵理の方に来た。

腕を掴まれて、怖い顔で睨まれたと思ったら、無理やりキスをされた。

「バーカ」

そう言って、パブロは部屋に入っていった。

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